湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2007年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第22節(2007年8月26日、日曜日)
- なかなか見所豊富でエキサイティングな勝負マッチでした・・(マリノス対サンフレッチェ、2-2)
- レビュー
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- 「前半はうまくゲームをコントロールすることが出来た・・後方でのポゼッションをベースに、サイドや最前線への深いパスをうまく駆使できた・・」
試合後の、サンフレッチェ、ペトロヴィッチ監督のコメントです。そうだね・・アグリーです。でも、前半だけじゃなく、サンフレッチェは、試合全体を通じて良いサッカーを展開していたと思うけれどね。そういえば、ハーフタイムの更衣室で、ペトロヴィッチ監督が、良いサッカーが出来ている・・落ち着いて自分たちのサッカーをしよう・・と選手に呼びかけたということだった。
ということで、ペトロヴィッチ監督に聞いてみた。「ペトロヴィッチさんは、良いサッカーという表現を使っていました・・その良いサッカーだけれど、それをキーワードで表現したらどうなるでしょうか・・」
「それは・・危険な走り・・かな。まあ危険なプレーができるということだね。今日の試合では、例えば駒野が素晴らしく危険なチャンスメイクが出来ていた・・」
まあ、ペトロヴィッチ監督の「発想の瞬発力」で出てきたキーワードが「危険性」と「危険な走りが効果的にリンクすること」だったということです。なかなかいいですね。私は、考えて走ること・・とか、トータルフットボールを目指すベクトル上にいること・・なんていうキーワードも期待していたんだけれど、相手にとって危険なサッカーができることか〜、なかなか含蓄がありますよ。さすがにペトロヴィッチ監督でした。
「発想の瞬発力」だけれど、その実効レベルは、常日頃、どのくらい深く、そして広く柔軟に、サッカー(その現象)について考えを巡らせているかに依る(よる)といっても過言じゃない。サッカーのメカニズムは、錯綜を極めるからね。知識だけじゃなく、常に相対的な俯瞰(ふかん)視点も必要になるし、生活文化や心理・精神的なコトに対する広範な理解も重要な発想起点になってきますからね。
ところで駒野がいるサンフレッチェの右サイド。ペトロヴィッチ監督が言うように、たしかにうまく機能していた。逆に言えば、そのサイドでのマリノスの守備がうまく機能していなかったとも言える。そう、山瀬幸宏と小宮山尊信のタテのコンビ。それについて早野監督も、こんなコメントを出していた。「特に左サイドの守備のコンビネーションが良くなかった・・まるで夢遊病者のようなフラついた守備だった・・」
でも、サンフレッチェに先制ゴールを奪われてからの10数分間は、「マリノスのサッカー」がうまく機能しはじめたと感じましたよ。トントント〜ンという軽快なリズムでダイレクトパスがつながり、そのボールの動きに、人の動きが「有機的」にリンクする。要は、三人目の動きをうまく使えているということです。AからBへ、そしてCへとボールが動かされ、最後は、決定的スペースへ抜け出していくDへ、ダイレクトのスルーパスが通される・・ってな具合。まさに、小気味よい、人とボールが軽快に動きつづける仕掛けです。そして、そんな流れのなかから同点ゴールを奪い。その後も、何回か決定的なカタチを作り出した。でも、そこからは、再びサンフレッチェが盛り返してゲームを掌握してしまうのです。なかなかエキサイティングな展開でした。
後半は、しっかりと「発想」を修正したマリノスが、本来の強さを発揮しはじめます。そんなポジティブな流れでは、このところベンチを温めていたマルケスが存在感を発揮していたと感じました(山瀬幸宏との交代)。
マルケスは、守備にも絡んでいたし、ボールがないところでもしっかりと動きつづけていた。ボールをもっても、シンプルにつなぐケースと、勇気をもって仕掛けていくケース(それこそがマルケスの真骨頂!)のメリハリが素晴らしかった。これでマリノスは、早野監督が志向する「ダイナミックなプレッシングサッカーの担い手」が一人増えたと考えていいんだろうか・・。
同点にしてからのマリノスの勢い(チャンスの量と質)からすれば、たしかに惜しい引き分け(勝ち点2を失った)ということになるのかもしれないけれど、ゲーム全体からすれば、わたしはフェアな引き分けだったと思っていますよ。とにかく、エキサイティングな勝負マッチでした。
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しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。本当に久しぶりの(ビジネスマンの方をターゲットにした、ちょっと自信の)書き下ろし。それについては「こちら」を参照してください。
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