湯浅健二の「J」ワンポイント


2007年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第23節(2007年8月29日、水曜日)

 

「個と組織」がハイレベルにバランスしたレッズ・・(ヴィッセル対レッズ、1-2)

 

レビュー
 
 今日は所用が重なったことで、スタジアム観戦ではなく、テレビ観戦にせざるを得なくなりました。ということで、ヴィッセル対レッズ戦についてショートコメント。

 レッズとの対戦になると、とにかく相手のモティベーションはグンとアップするよね。そのアップした分は、もちろん守備でのプレーコンテンツに如実に現れてくる。この試合でも、ヴィッセルのディフェンスは素晴らしかった。前からの積極的なチェイス&チェックをイメージ起点として、周りの協力プレスやマーキング、インターセプト狙いなどが有機的に連鎖しつづける・・。

 とはいっても、ここぞ!のチャンスメイクでは、やはりレッズは素晴らしい「瞬発力」を備えている。そのバックボーンは、もちろん優れた個のチカラ。ポンテ、田中達也、永井雄一郎、長谷部誠、阿部勇樹、平川忠亮、山田暢久、トゥーリオ、坪井慶介、堀之内聖・・。

 要は、局面の勝負に競り勝つ頻度が、レッズの方が高いということです。だから、人とボールを動かす組織プレーの実効レベルを高めることができる。個人のチカラを、総合的なチーム力へと効果的に転化できているレッズ・・!?

 全体的に押され気味だった前半にしても、スペースの効果的な活用という視点では、完全にレッズが凌駕していました。一つの効果的な仕掛けの流れが出てきたら、後方から、スムーズに味方が押し上げてくるのです。そこには、ボールの動きに対する確固たる信頼関係があると感じました(だから人も動く!)。スペースへ動いたら、確実にパスをもらえるという確信。それこそが、いまのレッズの勝負強さを支えているというわけです。

 もちろん、守備力も素晴らしい。高い守備意識に支えられたダイナミック・クインテット。そしてトゥーリオ、坪井、堀之内という強力なスリーバック。強いはずだ。

 とはいっても、この試合でのヴィッセルも、何度も吹っ切れた攻撃を仕掛けていました。左サイドバックにコンバートされた茂木の勇気あるドリブルシュート。パクやレアンドロ、そして近藤や大久保が絡むコンビネーション(組織プレーと個人プレーが高みでバランスする!)。なかなか危険な勝負を挑んでいたと思います。部分的には、強力なレッズ守備ブロックもタジタジになるシーンもありましたよね。

 でも結局は、レッズの勝負強さが優った。いまのレッズは「組織と個」が本当にうまくバランスしているからね。特に個人勝負プレー。それが素晴らしい実効を発揮するのは、誰かが個人勝負に入っても、周りの味方のボールがないところでの動きが止まらないからこそです。それによって、ドリブラーのオプションが格段に広がる・・だからこそ相手守備ブロックも対応に苦労する・・というわけです。ボール奪取のターゲットイメージ絞り込めないからね。

 例えば前半にこんなプレーがあった。右サイドでボールを持った田中達也が超速ドリブルで相手ペナルティーエリアへ突進していく・・相手守備は、二人、三人と、カバーリングの網を作る・・でも最後の瞬間に、突破する(シュートまで行く)と見せ掛けて、後方からダッシュして中央スペースへ入り込んできたポンテへ「スッと置くような」ラストパスを送る・・なんていうプレー。

 ちょっとタイミングが合わずにミスシュートになってしまったけれど、そのシーンでは、ヴィッセル守備ブロックが完全に翻弄されていた。また、ドリブルするポンテを、平川が追い越して行ったり(最後には、決定的スペースへ飛び出していく平川へ、彼とは別なところでのワンツーを介してスルーパスが通された!)、タメを作るポンテの周りを、田中達也と長谷部誠が、クロスして決定的スペースへ走り抜けていったり・・。

 とにかく今のレッズは、観ていて楽しい限りです。ちょっと表面的だけれど、今日はそんなところです。

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 しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。本当に久しぶりの(ビジネスマンの方をターゲットにした、ちょっと自信の)書き下ろし。それについては「こちら」を参照してください。

 



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