湯浅健二の「J」ワンポイント


2007年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第32節(2007年11月18日、日曜日)

 

逆境にもめげず、立派な闘いを展開したレッズ・・そしてイビツァ・オシム監督についても少しだけ・・(レッズ対エスパルス、0-0)

 

レビュー
 
 「さすがにアジアチャンピオン・・(守備での)最後のゴール前の勝負強さには素晴らしいものがあった・・本当に厳しいスケジュールのなかでも、こんなタフなゲームが出来る・・そのことに対して敬意を表したい・・」

 エスパルス、長谷川監督です。細かいことは省き、とにかく私もそのコメントに心からアグリーでした。レッズは、本当に最後までよく闘った。

 ワシントンが出場停止。田中達也と堀之内がケガ。出場した選手の多くが何らかの問題を抱えている。そして追い打ちをかけるように、中盤の絶対的なキープレイヤーである鈴木啓太も、ゲーム立ち上がり早々の前半17分にケガでグラウンドから運び出される。まあ、これ以上ないという逆境だよね。

 それに、鈴木啓太に代わって登場した内舘秀樹にしても、最初のころは、オドオドと腰の引けたプレーぶりで危なっかしいことこの上ない。そんなプレーぶりを見ながら、「どうして、相手ボールホルダーとの間合いをもっと詰めないんだ!・・そんなに相手との距離を空けちゃったら、自由にプレーされてしまうじゃないか・・」などなど、心のなかで叫んだものです。これは、たしかに逆境だ・・。

 でも、浦和の強者たちは、そんな逆境を押し返すように、徐々にサッカー内容をソリッドにペースアップさせていくのですよ。「ソリッド」という形容詞のニュアンスは「堅実に」といったものですかね。その絶対的なベースは、もちろん、忠実でクリエイティブ、そしてダイナミックな組織ディフェンスです。

 最初ペースを乱していた内舘秀樹も、守備をベースにしたポジティブな流れに乗って良いプレーを繰り出しはじめる。たぶん彼にしても、チャンピオンズリーグも含む、今シーズンの厳しい闘いを(グラウンドから放散される、チームメイトの闘うスピリチュアルエネルギーを!?)ベンチで体感しつづけることで感覚的に養われてきた「何らかのモノ」が花開きはじめたということなんだろうね。うまく言葉で表現できないけれど、たぶん「それ」が、意志のチカラを大きく増幅させたということかもしれない。

 そしてレッズのサッカーが、「それなり」に高揚していくのです。頼もしい限りでした。ホルガー・オジェック監督も言っていたように、後半のレッズが展開したサッカーは、まさにアジアチャンピオンにふさわしい内容だったと思います。守備にしても、人数をかけた組織プレーと(勇樹と責任感をバックボーンにした)個人プレーがうまくバランスした攻撃にしても。

 立派なサッカーを展開したレッズに対して、心からの賛辞をおくります。

 今節の結果で、二位と三位が入れ替わった。そして次節では、二位にまで上ってきたアントラーズとの勝負マッチが待っている。田中達也や鈴木啓太も復帰してくるだろうし、シーズンを締めくくるにふさわしい盛り上がりじゃありませんか。ちょっと前までは、リーグ展開が、こんなにエキサイティングなものになるとは(正直)思っていなかった。面目ないのですが、とにかくお互い、これからの優勝争いをとことん楽しみましょう。

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 「ところで、最後に一言だけ・・我々にとってかけがえのない友人であり、サッカー仲間でもあるイビツァ(オシム監督)が、いま病床にある・・心から、本当に心から、彼の回復を祈る・・」

 ホルガー・オジェック監督が、その言葉で記者会見を締めた。それに対して、こみ上げてくるものがあった。そしてそのすぐ後に、ある雑誌の編集部から電話が掛かってきた。

 「湯浅さん・・オシム監督についてですが・・いまサッカー協会では、彼の後任について話し合われはじめたと聞くのですが・・」

 その質問に、話しが止まらなくなりました。「イビツァ・オシムが日本サッカーにもたらしたものは、多分みなさんはしっかりと理解していないでしょう・・彼は、考えることと走ることの大事さを、日本全国に、広く、そして深く知らしめたのです・・それこそが、サッカーにとってもっとも大事な根源的コンセプト・・彼のおかげで、日本全国で、目指すべきサッカーの共通イメージが固まり、ユースからプロまで、日本のサッカーが本当の意味で進化しはじめていると言っても過言じゃない・・いま日本サッカーは、彼のおかげで、世界へつながる大きなステップを踏み出している・・日本は、イビツァ・オシムという、かけがえのない贈り物を天から授かったのです・・」

 その後に何を言ったのか、よく覚えていないけれど、とにかく言葉が止まりませんでした。「イビツァ・オシムは、代替が効かないプロコーチです・・彼のインテリジェンスとパーソナリティー・・それは決して代替が効くものじゃない・・とにかくいまは、言葉がしゃべれるまで回復してくれることを心底願っている・・思考と言葉さえあれば、物理的な仕事は誰でも出来る・・彼をサポートする組織的な機能を拡充していけばいい・・彼の後任どうのこうのなんて議論するよりも、彼の回復に対して最高のエネルギーを投入し、同時に、サポート体勢に関するプランを練るべきだ・・」などなど。

 もちろん組織(サッカー協会)としては、すべての可能性を考慮し、それに対する準備を整えておかなければなりません。それはよく分かる。でもいまの私は・・ちょっとエモーショナルに偏った(!?)考えや言葉しか出てこない・・。もちろん私も、心から、本当に心から、イビツァ・オシム監督の回復を願っているのです。でも今は祈るしかないというもどかしさ・・。フ〜〜

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 しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(ウーマン)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま四刷り(2万数千部)ですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞、東京新聞の(また様々な雑誌の)書評で取り上げられました。NHKラジオでも、「著者に聞く」という番組に出演させてもらいました。また、スポナビの宇都宮徹壱さんが、この本についてインタビューしてくれました(その記事は「こちら」)。またサボティスタ情報ですが、最近、「こんな」元気の出る書評がインターネットメディアに載せられました。

 



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