湯浅健二の「J」ワンポイント


2007年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第6節(2007年4月14日、土曜日)

 

アルディージャは、素晴らしい「オーガナイズド・サッカー」を魅せてくれた・・(アルディージャ対グランパス、1-0)

 

レビュー
 
 さて、この試合のポイントをどのように形容したモノか。まあ、シーズンの初勝利を「順当」に勝ち取ったアルディージャの、徹底した「オーガナイズド・サッカー」ってなところですかね。

 アルディージャは、本当に素晴らしい「徹底サッカー」を披露してくれました。ロバート監督も、「我々にとって大事な勝利・・ストライカーが得点して勝ったこと、それも一点差で勝ち切ったこと(最小ゴール差を最後までキープできたこと)が良かった・・とにかく守備が良かった・・」と、喜びを表現していました。

 この両チームの監督さんは、オランダ人。そのこともあるんだろうね、彼らは「オーガナイズ」というキーワードを用いることが多いと感じます。もちろんケースバイケースで意味は異なってくるけれど、まあ、攻守にわたる全体的なポジショニングバランス(攻守の人数バランスなども含む)がうまく整備されていたとか、スペースマネージメントがうまくいったから組織的なパスプレーがうまく機能した(人とボールがよく動いた)等といったニュアンスがメインでしょう。

 そこでのコノテーション(言外に含蓄される意味)は、言わずと知れた「バランス」。

 たしかに、両チームともに、人数的にもポジショニング的にも、ほとんどの場面でうまくバランスが取れていた。でもね、サッカーには、バランスを取るボールゲームという側面と、自らバランスを崩してリスクへもチャレンジしていかなければならないという側面があるのですよ。二律背反・・!? いやいや、だからこそ、優れた「バランス感覚」が成功への絶対的な資質になってくるというわけです。

 リスクチャレンジのないところに発展もない・・。それは、サッカーの歴史が証明している厳然たる事実。だからこそ、バランスを崩してでも、(攻守にわたる)リスキーなプレーにチャレンジしていかなければならないということです。優れたサッカー(美しさと勝負強さがハイレベルにバランスした魅力あるサッカー)では、「バランスした状態」が崩れることの方が多い・・だからこそ、素早くバランスの取れた状態を再構築するための「バランス感覚」が求められる・・というわけです。

 とはいっても、そこでは、選手の能力(チーム総合力)や相手の実力、チームの(当面の)目標などといったファクター(要素)も大いに考慮しなければならないことは言うまでもありません。ということで、それらの要素によっても、「バランス感覚」の意味合いは微妙に(場合によっては大幅に!?)変容していくのです。規律(チーム戦術)と、自由な創造性&想像性の相克!? まあ・・ネ・・。

 ということで、この日のアルディージャは、チェイス&チェック、インターセプト狙い、カバーリング、マーキングなどが「有機的に連鎖」しつづける素晴らしく忠実なコンパクトディフェンスを機能させるなど、様々なファクターの総体としての「オーガナイズド・サッカー」を最後まで徹底して機能させつづけたということです。

 対するグランパスだけれど、私は、このゲームには様々な視点の「期待感」を持ち込んでいました。だから、彼らが展開したサッカーの内容にはちょっとガッカリさせられた。とはいっても、立ち上がりの10-15分間は、ナルホド、中盤の藤田俊哉を中心に良いサッカーをしている・・彼らが首位争いをしているのも当然の成り行きだな・・などと感じたモノです。

 その立ち上がりの時間帯にグランパスが魅せたサッカーのイメージはこんな感じ・・。

 最前線のヨンセンを「灯台」に、その周りを動きつづける杉本・・その杉本を「オトリ」に、後方から、攻撃的ハーフの金正友や山口慶が、ズバッと(グランパス守備陣のウラに広がる)決定的スペースへ飛び出し、その動きを明確にイメージできている味方が、正確なタイミングでタテパスを供給する・・また、その攻撃的ハーフと両サイドが、頻繁にタテにポジションをチェンジすることで、組織プレーや勝負ドリブルをうまく使い分けながらサイドのスペースを攻略していく・・そして最後は、ヨンセンのアタマを(直接的・間接的に)活用しながら最終勝負を仕掛けていく・・。

 守備に入れば、藤田俊哉を中心に、山口、金、両サイドが、中盤から、素晴らしく「オーガナイズ」された守備を展開する・・まさしく、有機的に連鎖しつづける守備プレー(ボール奪取イメージ)といったところ・・。なかなか良く(イメージ)トレーニングされていると感じます。そんな、優れた守備意識こそが、いまのグランパスを支えていると感じていた湯浅でした。

 最後に、藤田俊哉。ボール絡みでも、ボールがないところでも、また守備でも、本当に素晴らしいパフォーマンスを魅せてくれました。ジュビロの全盛期を支えた、レベルを超えた「守備意識」と、攻撃でのボールがないところでのプレー(スペース感覚)が光り輝いていた。

 とにかく彼の場合は、実効ある守備意識がすべてのベースだよね。それがあるからこそ(彼の実効ある守備プレーがチームメイトに尊敬され信頼されているからこそボールが集まる・・だからこそ)彼のゲームメイクセンスも特筆の機能性を魅せつづけるのですよ。

 



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