湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2008年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第17節(2008年7月17日、木曜日)
- そろそろ最終ラインに戻ろうぜ、トゥーリオ!・・(レッズ対ヴェルディ、3-2)
- レビュー
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- そうネ〜・・、たしかにレッズは、ダイナミックに(積極的に前からプレスを掛けるような積極サッカーで!)立ち上がったよね。それだけは認めるけれど、前半も15分を過ぎたあたりからは、例によって、動きが止まった「足許パス・サッカー」に落ち込んでしまったことも確かな事実でした。とはいっても、この暑さじゃネ〜。
要は、この試合を分析するにあたっては、まず、大変な暑さとの闘いという環境条件にスポットを当てなければならないことは誰もが認めるところだということです。そりゃ「あの猛暑」でもっともっと動け・・っていう評価はフェアじゃないだろうね。
ということで、こちらは、選手の「意志のコンテンツ」をまず理解し、その結果としての「行動コンテンツ」を観察しようとするわけです。要は、攻守にわたる「仕掛け」のイメージを、どのくらいグラウンド上に投影できているのか(実際のアクションに反映できているのか)というポイント。
そう考えながら選手のプレーを観れば、たしかに意志(イメージ)を行動に現そうとするプレー姿勢は継続的に持ちつづけていたと感じられてはいました。前後分断の低級サッカーに落ち込むのではなく、仕掛けプロセスがスタートしたら、両サイド(相馬崇人と平川忠亮)にしても守備的ハーフコンビ(鈴木啓太と細貝萌)にしても、しっかりとその流れに絡めていたからね。
まあ、セットプレーでの得点「だけ」だったけれど、ゲーム立ち上がりには、何本か「流れのなか」からチャンスを作り出していたし、動きが止まった後半にしても「チャンスの芽」を組織的に作り出すシーンもあったからネ。その意味では(総体的には)次につながる「ゲーム内容」だったという評価に落ち着くということだね。
ということで、このコラムのテーマに入ることにします。まず最初は、何といっても啓太と萌の守備的ハーフコンビ。
良かったネ〜〜。まあ、次の試合では細貝と鈴木の二人とも出場停止になるらしいから、「せっかく・・だったのに」という残念な思いはあるけれど、とにかく待ち望んだコンビが、ポジティブなカタチで日の目を見たことは喜ばしい限りじゃありませんか。細貝萌には、北京で、本当の意味でのブレイクスルーを果たして欲しいと心から祈念する筆者です。
そして次のテーマが、言わずと知れた「トゥーリオ」っちゅうことになります。「ハットトリック」が話題の中心じゃないよ。あくまでも、攻守にわたる組織プレーの内容に、彼がどのくらい貢献できていたのかという視点がコアになります。
啓太&萌のコンビが日の目を見たことで(またポンテが不在ということで!?)この試合でのトゥーリオは、二列目チャンスメイカーという「無限の自由を謳歌できる」ポジションを与えられました。
あっと・・まず全体的な評価の「まとめ」から入りましょうかネ。それは「ネガティブな評価要素の方が先行する」ということになります。
とにかく走れないからね。エンゲルス監督は「疲労がたまっていた・・」と言っていたけれど、前でも後ろでも、トゥーリオが中盤に入った場合、彼を中心に、人とボールの動き(組織プレーの流れ)が加速するわけじゃないからね。逆に、どちらかといったら「ブレーキ」になってしまうようなシーンの方が多かった。
この試合でも、ゲーム立ち上がりの時間帯は、攻守にわたって効果的なプレーも魅せていたけれど、15分も経ったら足が止まり気味になり、最後は完璧な「二列目のフタ」に成り下がってしまった。要は、まったく動かずに、足許パスを「待つだけ」という受け身プレーに終始するようになってしまったということです。
守備に積極的に参加するわけでもないし(二列目からだから、全力でのチェイス&チェックで味方にボールを奪わせる・・という発想が基本!)、攻撃でも、相手守備のスペースを突いていくようなコンビネーションをリードするわけでもない。単に、止まって足許パスを待つばかりなのですよ。
とはいっても、ココゾ!というときに、ゴール前スポットに「飛び込んでいく」感覚とパワー、そしてセンスは抜群だけれどネ(柱谷監督に言わせれば、ゴール前でのトゥーリオの危険度は世界レベル!?)。フムフム・・。ただし「それ」は、最終勝負シーンに限られるわけです。
二列目の「自由人」は、まず何といっても、動き回ってパスを受けなければならない。そこから、シンプルな展開でボールを動かし(パス&ムーブを繰り返すことで!)次、その次のスペース攻略に効果的に絡みつづけなければならない。
そんな最前線ゾーンの「動きの原動力」としてのタスクをトゥーリオが果たしていた(果たそうとしていた)とは、とても思えないのです。
エッ!? 復帰したポンテだって動きが鈍かったじゃないかって!? 確かにその通り。でもポンテの場合は、苦しい場面で、しっかりと勝負ドリブルを仕掛け(リスクチャレンジ!)自らスペースへ抜け出して「最終勝負の起点」になるような勝負プレーを何度も魅せていたし、自らロングシュートを放ったり、リスキーなタメからのスルーパスにチャレンジしたりと、最終勝負の「流れ」をアップさせるだけではなく、シュートという攻撃の目的を達成するプロセスへの貢献度という視点では、やはりトゥーリオよりも一枚も二枚も上手なのですよ。
それに対してトゥーリオは、ボールを持っても(足許パスだから、もちろん背後から相手のプレスを受けている状況がほとんど!)逃げの横パスばかりが目立っていた。もちろん何度かは、リスキーなボールコントロールから素晴らしいスルーパスを出したシーンも目撃したけれどネ。
とにかく、いまのレッズの中盤に必要なのは、攻守にわたる中盤でのダイナミズムを高揚させられるような「クリエイティブなムダ走り」もいとわない積極マインドを持つ選手なんですよ。そんな「クリエイティブな汗かき」は、トゥーリオじゃない。
とはいっても、(ライバルが多くなったことで!)闘うマインドが高揚しはじめたと誰もが期待していた永井雄一郎や梅崎司にしても、どうもこのところ、肝心の「闘うマインド」が再び減退しはじめたと感じられるようになってしまった。
要は、クリエイティブなムダ走りの「量と質」が減退気味になりはじめたということです。それこそが、サッカーの全体的なクオリティーの源泉であるにもかかわらず・・。
永井にしても梅崎にしても、数週間前までは、自らの危機感を爆発的に放散させるかのように、攻守にわたって「創造的なムダ走り」を繰り返しながら、チームの闘うマインドを牽引していたのですよ。そんな二人に、誰もが大いなる期待を抱いていたわけです。けれど、今では、そんなダイナミックなプレー姿勢が霧散し、(以前のように)最前線のスペースでパスを受けられる状況にしか走らなくなってしまった!? さて・・。
最後は、やっぱりトゥーリオに戻りましょう。何せ「ハットトリック」だからネ。ホントに、彼のゴール前での勝負強さには脱帽です。ホントにスゴイ。私も、柱谷監督の「世界レベル」という意見に(ある程度は)賛同しますよ。
最後の瞬間に、身体「半分」相手よりも先に出る・・質の高い、最後の瞬間に魅せる爆発ダッシュ・・そしてもちろん、ボールを捉える感覚の鋭さ・・等々、どれをとっても超一流です。
でもサ、そのハットトリックにしても、全部セットプレーだったからねネ。最終ラインを基本ポジションにしていたとしても、同じチャンスはめぐってきたわけで、この試合で務めた「二列目」だからこそのハットトリックというわけじゃ、まったくなかった。
これまでのコラムで何度も繰り返したように、攻撃での彼の強みは、相手守備ブロックにとって「見慣れない顔」としてタイミングよく最終勝負スポットに顔を出すような「消えるプレー(消えるオーバーラップ)」なのですよ。だからこそ「前気味のリベロ」が彼にとって最適ポジションだと言いつづけているわけです。
この試合での二失点にしても、彼が最終ラインにいれば、(その一対一の強さによって)少なくとも一つは防げたはずです。
とにかく、持久力を除き、もう十分に能力の高さを(攻守にわたる局面プレーのクオリティーの高さを)周りに証明したわけだから、そろそろ本来のポジション(まあ、前気味のリベロというポジションは新しいけれどネ)に戻った方がいい・・そして「そのポジションのイメージ)」を、自身のプレーによって「拡大」させることにチャレンジした方がいい・・と思っているのは私だけではないに違いありません。
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ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。
基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。
いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。
蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。
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