湯浅健二の「J」ワンポイント


2008年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第22節(2008年8月23日、土曜日)

 

素晴らしいサッカーを展開したジュビロ・・勝負強いレッズ・・(レッズvsジュビロ、3-1)

 

レビュー
 
 フムフム・・。でも「3-1」という最終スコアが、ゲーム内容をフェアに反映していたとは「まったく」言えない。そのことは、観ていた皆さんが一番よく分かっていることだと思います。

 ジュビロは、前節のフロンターレ戦からの「勢い」を、そのままレッズ戦にぶつけてきたという印象だね。

 とにかくジュビロは、守備での実効レベルが素晴らしかった。忠実なチェイス&チェックと、次のパスレシーバーへの厳しいマーキングと「寄せ」、鋭いインターセプト狙い・・などなど。そんな忠実&ダイナミックなディフェンスに、外国人のロドリゴやジウシーニョも全身全霊で参加してくるのだから、これはもう内山篤監督のウデ(優れた心理マネージメント)としか言いようがない。

 そんなダイナミックな守備を基盤に、前節のフロンターレ戦のように、サイドを基盤に仕掛けてくるジュビロ。その仕掛けプロセスについては(前節レポートでも書いたように)チーム全体が統一されたイメージを共有していると感じます。

 この試合では、ジュビロ右サイドの駒野友一が、これぞ日本代表という抜群の存在感を発揮していたのが特筆。レッズの左サイド相馬崇人を振り切って送り込むクロスも良し、中央ゾーンへ切れ込んでブチかますキャノンシュートも良し。

 それだけじゃなく、カレン・ロバートと前田遼一のツートップにしても、確実な展開パスだけではなく、タテパスを受けてからの粘りのキープ(確実なポストプレー)や自ら切れ込んでいく危険なドリブルシュートなどの効果的プレーで存在感を誇示していた。特に前田遼一は、勝負のヘディングでレッズ守備を震え上がらせていたのが印象的だった。

 もちろん、そんなジュビロの危険な仕掛けを演出していたのが、ロドリゴとジウシーニョという「タテのブラジルコンビ」なんだけれど、どうもジュビロの場合、ツキに見放された感が強い。実質的な決定機の「量と質」では、レッズに勝るとも劣らないジュビロだったのにネ・・。

 レッズでは、トゥーリオの不在、細貝萌とポンテの本格復帰、そしてエジミウソンというテーマがありますかネ。

 ポンテは、もちろんベストフォームとはほど遠い。走れない(走らない)し、守備での効果レベルも昨シーズンとは比べようもない。それでも、決定的なシーンでは、誰にも真似できない決定的な仕事をしてしまう。この試合でも、同点ゴールに、勝ち越しゴールのお膳立てという素晴らしいパフォーマンスを魅せてくれた。

 それ以外でも、チームメイトの「希望&期待エネルギー」を高揚させるという貢献度は重要な意味をもっていた。例えば、前半15分の、タテへ抜け出した鈴木啓太への「ノールック・スルーパス」と、その直後の前半18分の、これまたタテへ抜け出ていた坪井慶介への「ノールック・ダイレクト・ヒールスルーパス」。

 最初の鈴木啓太へのパスは、啓太が、走る勢いを落として「観て」しまったことで、ポンテからのタテパスが通らなかった。また坪井へのヒールパスは見事に通ったけれど、(あまりのベストチャンスに慌てた!?)坪井から高原へのラスト横バスは、見事にズレてしまった。この決定的シーンでの高原は、ジュビロゴール前でまったくフリーで待ち構えていたわけで、まさに絶対的な先制ゴールチャンスではあったわけですよ。

 とにかく、そんなポンテの「チャンスメイクの才能」を再び体感したレッズ選手たちが、以前の「ポンテをコアにしたチャンスメイク」のイメージを甦(よみがえ)らせはじめた(彼がボールを持ったときの味方の動き出しが良くなりはじめた!)ことは大きな収穫だったに違いありません。

 これからポンテは、急速にコンディションを上げていくだろうし、攻守にわたる「抜群のダイナモ(発電器)」とも呼べる細貝萌の復帰も含め、ACLへ向けて、やっとチーム状態がポジティブに回りはじめたということだね。

 その細貝萌だけれど、鈴木啓太との攻守のコンビネーションには、まだちょっと「ぎごち」ないところもあったけれど、それが解消するのは時間の問題だからね。この試合でも、時間を追うごとに、この二人による「攻守のダイナミズム」がアップしていったと感じました。

 トゥーリオだけれど、レッズ守備ブロックが、ジュビロ仕掛けの「勝負所」をしっかりと抑え切れなかった(ジュビロの仕掛けの勢いを、タイミングよく抑制し、その流れを潰す!)という点で、やはり彼の不在が目立っていました。トゥーリオがいれば、ジウシーニョや前田遼一、カレン・ロバートや駒野友一が「局面で」展開した効果的な勝負プレーの多くを「潰して」いたに違いないと思っていたわけです。

 また攻撃でも、前述したように、細貝萌と鈴木啓太による攻守のコンビネーション(要は攻撃サポートと次の守備への備えという仕事の分担)が『臨機応変に』上手く機能するまでに時間が掛かったことで、攻撃サポートという点でもトゥーリオの不在を強く感じてしまった。

 そして最後がエジミウソン。後半37分に、ポンテに代わって登場しました。わたしは、彼の一挙手一投足に目を凝らしていましたよ。彼の「プレー姿勢」を正確に測る(計る)ためにもね。そして、こんなことを思っていた。

 ・・やはりエジミウソンは優れた才能を有している・・一生懸命やれば、チームにとって本当に大きな戦力になる・・ポンテと交替してからの彼のプレー姿勢は、明らかに危機感にあふれていた・・一生懸命に守備でボールを追い掛けた(チェイス&チェック)・・攻撃でも、パスレシーブのために一生懸命に動いた・・またボールを持ったら、ビビらずに勝負プレーを仕掛けていった(まあ、それがなければ外国人選手としての価値はゼロっちゅうことになっちゃうわけだけれどネ)・・

 ・・要は、エジミウソンが、これまで「やらなかったプレー」を意識しはじめているということ・・それが大事なポイント・・前回のコラムでも書いたけれど、監督は、常に、出来るプレー内容と「やらないプレー内容」を天秤にかけているわけだからね・・そのことをエジミウソンが理解しはじめたということでしょうね・・彼の周りの関係者も「そのこと」をしつこく彼に対して言いつづけなければいけません・・歌を忘れたカナリヤほど残念な存在はないわけだからネ・・

 そう、彼が「心を入れ替え」さえすれば、(周りの才能ある仲間たちへの刺激という意味も含めて!!)ACLへ向けて、チームが盤石の状態へと回帰していくこと請け合いなのですよ。なんてったって、JリーグとACLと日本代表を掛け持ちする選手が多いレッズだからネ(昨年の轍を踏まないためにも!!)。

 とにかく、ゲルト・エンゲルス監督の「心理マネージメントのウデ」に期待しましょう。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 



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