湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2008年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第24節(2008年9月14日、日曜日)
- さて、ここからジェフの反攻がはじまる・・(ジェフvsヴェルディ、2-0)
- レビュー
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- いや、面白かった。何がって? それは、前半と後半で、ジェフ千葉が、まったく違ったチームに変身してしまったことですよ。
ハーフタイムで、アレックス・ミラー監督が、「もっともっとミッドフィールドでガツガツ身体をぶつけてチャレンジしろ!」とか、「自分たちが勝ちにいくことだ。相手の問題ではない」とか、「勝ちたいという誇りをみせろ」といった檄(ゲキ)を飛ばしたとか。フムフム・・
たしかに前半のジェフは、ホームゲームであるにもかかわらず、消極的なプレー姿勢が目立つことでヴェルディにイニシアチブを握られていた。ディフェンスの姿勢が、相手からボールを奪い返すために積極的に仕掛けていくというのではなく、相手の攻撃に対して反応するといった体たらくだったのです。
ミラー監督が言うように、前半のジェフは、たしかに中盤が「間延び」していた。だから、ヴェルディの「上手さ」を抑制できずにズルズルと交替してしまうシーンがつづくといった展開だったのです。
とはいっても、ヴェルディにしても、たしかにボールはよく動いていたけれど、それに見合うくらいの頻度でスペースを突けていたかといったら、そうでもなかった。要は、人の動きが足りないから、うまくスペースを突いていけない(ある程度フリーでボールを持つ選手をうまく演出できない)という展開がつづいていたのです。たしかに何度かは、局面でのワンツーを連続させる素早いコンビネーションで、飯尾やレアンドロがフリーで抜け出す(そしてパスを受ける)というチャンスは作り出したけれどネ。
それに対してジェフは、一発ロングパスでの惜しいチャンスは何度かあったけれど、組織的に攻め上がることでスペースを突いていくといったポジティブな攻撃の流れを演出するシーンは皆無に等しかった。
これじゃダメだよな・・やっぱり、新加入のミシェウにボールが収まる(前戦で効果的にタメられるポストプレー)というプロセスがないと攻撃のカタチをうまく作り出せないということか・・もう後がないんだから、どうしてもっと前から勝負する積極的なプレッシングサッカーができないんだ・・これじゃジリ貧じゃないか・・。前半の展開を観ながら、そんなことを思ったものでした。それが・・
だから、後半の彼らの豹変ぶりに、眠気がブッ飛んだというわけです。それまで受け身だった守備が、後半の立ち上がりから、主体的に「ボール奪取勝負を仕掛けていく」という攻撃的なものへと大胆に変身したのですよ。
そのことをミラー監督は、「センターハーフの機能性アップによって中盤でのプレスが掛かるようになった」と表現していた。要は、後半立ち上がりから交代出場した工藤浩平が、攻守にわたって、素晴らしい機能性を発揮した(刺激プレイヤーとして素晴らしく機能した!)ということです。
彼は、先制ゴールシーンでも、前戦のハーフを追い越して右サイドを疾走し、巻へのラストクロスを決めた。それだけではなく、中盤での協力プレスをリードしたり、ゲームメイカーや後方から仕掛けていくコンビネーションのリード役としても機能するなど、この日の勝利に素晴らしく貢献した。
その後は、もちろんヴェルディも持ち直す気配はみせたけれど、それ以上に、ジェフの勢いが高みで安定していたと感じました。期待の谷澤達也も、同じ左サイドの青木良太と協力して、何度も左サイドを引き裂いたし、巻誠一郎も、存分に「最前線の汗かき」ぶりを発揮していた。
あっと・・、その巻誠一郎だけれど、前半の途中に、ベンチに対して両手を広げて「物申して」いた。要は、ミラー監督に対して、何か主張していたということです。その巻の行動について、ミラー監督が、記者会見の席でこんなニュアンスのことを言っていた。フムフム・・
「マキは、後方からの押し上げが足りないから、中盤と前戦から間延びしてしまう・・だから前戦でのチェイスがうまく効かない・・もっと中盤を押し上げさせて欲しい・・そう言っていた・・それに対して、オマエは、自分に与えられた役割をしっかりとつづけなければならない・・これまで通り、前戦からボールを追いつづけなければならないのだ・・それに対して、味方の協力アクションが足りなかったら、それに対する判断はオレがする・・」
要は、こういうことでしょう。巻誠一郎は、忠実に自分の仕事をつづけていればいい・・中盤が間延びしていることで前戦からのチェイス&チェックがうまく次につながらない(効果的なボール奪取勝負につながらない)と文句を言うのは彼の仕事ではない・・ただし、巻誠一郎の汗かきの仕事が、味方のプレーの不具合によって(ボール奪取への)効果を発揮しないのならば、その不具合に対する判断はオレがする・・と。
それが、後半立ち上がりの選手交代につながったんでしょうね。もちろん同時に、前述の「カツ」を入れることも忘れない。チームが「闘う集団」へと覚醒するのも道理といったところです。なかなか効果的な心理マネージメントだったと思いますよ。
ということで、ジェフにとっては久しぶりの快勝ということになった。ミラー監督の(心理)マネージメント能力も存分に発揮されたし、後半のサッカー内容には選手も十分な手応えを感じたことでしょう。さて、ここから、ジェフの本物の反攻がはじまる!? 期待しましょう。
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ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。
基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。
いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。
蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。
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