湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2008年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第26節(2008年10月1日、水曜日)
- 質実剛健のサンガ・・疲労を克服できないレッズ・・(レッズvsサンガ、2-2)
- レビュー
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- 所用が重なったことで、記者会見にはアテンドせず、タイムアップのホイッスルを聞いてから間髪いれずに駒場を後にしました。ということで、コラムを書きはじめたのは真夜中に近くなってから。とにかく短く、思うところをまとめます。
このコラムは、まず何といっても、サンガが優れたサッカー(勝負に徹した首尾一貫サッカー)を展開したという事実から入っていかなければいけません。
J1に復帰した今シーズンのサンガは、大幅な補強を実施しました。この試合に出場していた選手のうち、昨シーズンも所属していたのは数えるほどしかいません。もちろんそのことは、チームのコンセプト(チーム戦術)を浸透させ、それを有機的に連鎖させること(要は味方同士のイメージコンビネーションの深化)が簡単ではないということも意味するわけですが、にもかかわらず、最後まで彼らの「ダイナミックな守備」の機能性が減退することはありませんでした。加藤久監督は良い仕事をしている。
彼らが展開した素晴らしいディフェンスの中心的な存在は、何といっても、佐藤勇人とシジクレイ。それに、中谷勇介の攻守にわたる(攻守をリンクする)ダイナミックプレーも効果的に連鎖しつづけます。
そんな中盤の「ディフェンス起点」がうまく機能しているからこそ、最終ラインのボール奪取勝負もうまく機能する。ヘディングでの競り合いにしても、スペースパスへの対応にしても、本当に実効レベルは高かった。
とにかく最後まで、忠実なチェイス&チェックや効果的なマーキング(インターセプト狙い)チャンスを見計らった協力プレス(協力ボール奪取アクション)など、守備での「イメージ連鎖の機能性」が落ちることがなかったのは特筆のパフォーマンスでした。
要は、サンガの守備に対する自信と確信のレベルが確固たるところまで深化しているということだけれど、守備プレーがうまく連動し、ボール奪取がうまく決まったときには、次のカウンター気味の仕掛けの流れに、後ろ髪を引かれることなく何人ものサンガ選手が参加していきましたよ。それが後半早々の同点ゴールのシーンでした。そこでの人とボールの動きは、レッズ守備ブロックを完全に振り回すなど、本当に素晴らしかった。
そんなカウンター気味のチャンスメイクだけではなく、セットプレーや「一発」クロスからも決定機を演出した。田原豊のヘディング。二本あったわけだけれど、両方とも、まさに決定的なカタチだったよね。
とにかく、この試合のサンガは、レッズに勝とも劣らないサッカー内容で存在感を誇示していた。まあ引き分けは(全体的な内容でも!)妥当な結果だったということです。
対するレッズ。たしかに地力ではサンガを上回るでしょう。そのことは、失点の後に魅せたペースアップの内容から明白に認識できた。攻守にわたって人が動きはじめれば(攻撃へのサポートも厚くなれば)サンガとの実力差が明白に見えてくるということです。でも人の動きのダイナミズムが減退したら(高揚しなかったら)ジリ貧。
この試合でのレッズは「疲れて」いたと感じました。とにかく、攻守にわたって、ボールがないところでのアクションの量と質が低すぎた。
意志はあっても身体がついてこなかった・・という感じですかネ。これじゃ、サンガ守備ブロックに「次のパス」を狙われてしまうのも道理。また、前戦もうまくボールをキープできなかったし(それが一因で)後方からのサポートのアクションも活性化していかなかったということもある。
そんなジリ貧のレッズにあって、最後の10分間グラウンドに登場したトゥーリオだけは抜群の存在感を見せつけていた。高原直泰との交替でツートップの位置へ。そして、バー直撃のキャノンシュートや、相手ディフェンダーと競り合いながら右ポストを僅かに逸れるという惜しいグラウンダーシュートを放ってしまうのですよ。
最後の時間帯は、トゥーリオが放散するアグレッシブエネルギーによって、レッズの仕掛けが大幅に高揚した。でも結局は・・
これからも、「J」や「ACL」で、肉を切らせて骨を断つというギリギリの勝負がつづくことでしょう。それは、非日常の際(きわ)の楽しみとも言えますかね。そこでの緊張感を、自身がとことん楽しむための心理エネルギーに変換するというプロセスこそが、サッカー文化を本当の意味で深化させるのです。
サッカー文化は、めくるめく歓喜と奈落の落胆という、非日常「的」なスピリチュアルエネルギーを積み重ねることによって深化していくものだからね。
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ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。
基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。
いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。
蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。
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