湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2008年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第31節(2008年11月8日、土曜日)
- 今日は、テレビ観戦した二試合について簡単にコメントします・・(COvsR, JUvsSP)
- レビュー
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- 今日も所用が重なったことで、二試合をテレビ観戦することにしました。ということで、コメントも、ポイントを絞って簡単に・・。
まずコンサドーレ対レッズから。申し訳ありませんが、ここでは、レッズを中心にコメントすることにします。
久しぶりのフォーバックで試合に臨んだレッズは、トゥーリオを守備的はハーフのポジションに上げ、前戦にセルヒオ・エスクデロを入れることで「擬似スリートップ」というイメージでスタートした。
そのゲーム戦術は、もちろん中盤での「守備意識」が、一人「分」足りなくなることを意味します。実際、この試合でも、セルヒオ・エスクデロの守備参加は、まさに「ぬるま湯」だったからね。ポンテにしてもエジミウソンにしても「やるとき」は、強烈な意志をぶつけるように全力を傾注するのに、若手のセルヒオ・エスクデロのディフェンス姿勢は、まさに「おざなり」そのものだった。よくあれで、ポンテやエジミウソンから罵倒されないモノだ・・。
セルヒオ・エスクデロは、田中達也の爪の垢でも煎じて飲むべきだね、ホントに。そうそう、セルヒオについて、ある関係者がこんなことを言ったことがある。「セルヒオは、そういうタイプの選手じゃないんですよ・・」
そうか、それだったら(アンタも含めて!)プロなんかに関わらないで、アマチュアで「楽しんで」サッカーをやってくださいネ。とにかく、そんな「取り巻き」が、セルヒオ・エスクデロを甘やかしている・・っちゅうこんなんだろうね。そんなところでも、レッズのマネージメント能力が問われているのですよ。フ〜〜
セルヒオだけれど、たしかに前半は、2-3度、素晴らしいトラップからの夢のような突破ドリブルを魅せた。そこには長く忘れていた新鮮な感動があった。わたしも感嘆の声を挙げた。でも次の瞬間には、こんなことを思っていた。「そうだよ!・・だからこそオマエは、攻守にわたる汗かきプレーにも全力で取り組まなければならないんだよ!」
いつも書いているように、攻守にわたるボールがないところでのプレーの量と質が上がれば、彼の「本来の才能」が、何倍もの実効レベルで発揮されること請け合いなのです。だからこそ、前半のスーパープレー以外では、まさに「消えて」しまった感のあるセルヒオ・エスクデロに対して猛省を促したい筆者なのでした。そう、彼自身のためにも・・
あっと・・中盤での「守備意識の減退」というテーマ。それについてはセルヒオ・エスクデロが主なターゲットだったけれど、チェイス&チェックという「守備の起点プレーの効果レベルの減退」という意味では、やはりトゥーリオの運動量もディスカッションの対象になってくるよね。
とはいっても、この試合での彼は、(局面での素晴らしいボール奪取勝負パワーという意味での)守備でも、また攻撃でも、本当に鬼神の存在感を発揮していたから、ゲルト・エンゲルス監督としては、「トゥーリオのチカラをいかに上手く活用していくのかというテーマについては、この試合に限ってだけれど、攻撃へのウェイトをより前面に押し出したゲーム戦術を選択した・・」というニュアンスだったんだろうね。
それでもサ、何度も、コンサドーレのカウンター攻撃で、五人しか揃っていない(要は最終ラインの四人と鈴木啓太!)レッズ守備ブロックに対して、5-6人のコンサドーレ選手が最終勝負シーンに絡んでいくなんていう危ないシーンを見せつけられちゃ、どうも不安の方が先に立つよね。
繰り返すけれど、中盤での「守備意識」が如実に現れてくるグラウンド上の現象は、もちろんチェイス&チェックという「守備の起点プレー」の量と質なのです。この試合では、そのポイントで大きな不安を抱えていたレッズだったというわけです。
要は「前後のバランス」が不安定だったということですかね。とはいっても攻撃では、常に人数が足りているし、前述したセルヒオ・エスクデロのドリブル突破という「変化」が加わったことで、レッズが展開した仕掛けは、とても魅力的で、迫力あるものになった。そこでは、これまでにない「危険な雰囲気」があふれ出していたのですよ。
そんな魅力的な攻撃を展開しながら、「これまでのような」安定した守備を維持できるような、ダイナミックな攻守のバランス感覚のレベルアップ。それが、今のレッズのメインテーマということ。要は、全体的な走りの(考えることの=意志をもつことの)量と質を高揚させるというテーマに集約されるわけだけれどね。
「ダイナミックな攻守のバランス感覚」につていは、細貝が戻ってくれば、中盤での守備意識のバランスが好転することで高みで安定するだろうし、そうなったら、トゥーリオも、スリーバックの中央で「完璧なリベロ」として(美しく魅力的なサッカーで勝つというチームの目的を達成するために!)攻守にわたって、自分自身「も」満足できるようなアグレッシブなプレー(意志の爆発!)を魅せられるだろうしね。
それと、攻撃陣の「守備意識」の充実も重要なテーマだよね。言うまでもなく「それ」は、タテ方向の往復アクションの量と質に如実に現れてくる。
そのイメージで先行しているのは、やはり田中達也の、攻守にわたる積極プレーだね。誰もが認識しているとおり、田中達也が仕掛けつづける、強烈な「意志」をぶつけるような最前線からの爆発的チェイス&チェックは、チーム全体に大変な「ポジティブ刺激」を与えている。とにかく、そのプレーには、計り知れない意義があるのです。
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さて、次はジュビロ対エスパルス。ご存じの通り、ジュビロは「降格」という危機と対峙し、エスパルスには、次年度の「ACL枠」というモティベーションがある。その雰囲気は、高い緊張感に包まれている。さて・・
試合は、後半立ち上がり「0分」に、エスパルス守備陣の考えられない「アクシデント」から前田遼一が夢のようなダイレクトシュートを決めて奪った虎の子の一点を、ジュビロが必死に守りきったという顛末になりました。
互いに守り合って、一発カウンターやセットプレーを狙うというゲームの全体的な流れからすれば、引き分けというのがフェアな結果だったとは思うけれど、とにかくここは、前田遼一の「ここぞ決定力」に拍手をおくることにしましょう。
もちろん「守り合い」とはいっても、そのニュアンスはちょっと違う。しっかりと組織的に攻め上がりながら、素早い「攻守の切り替え」をベースに(要は優れた守備意識を基盤に)攻守にわたって積極的で「柔軟な」サッカーを展開しようとするエスパルスに対し、例によってジュビロは、攻撃を仕掛けた後の守備ブロックの組織作りを明確にイメージしながら(後ろ髪を引かれながら!?)攻め上がるのですよ。
要は、常にジュビロは、相手にボールを奪われることを(その後の守備組織の演出を)イメージしながら攻め上がるということ。その「次のディフェンス組織」では、もちろん互いのポジショニングバランスが最も大事なファクターになるわけで、そのポジショニングバランスを意識しながら攻めるのです。
別な表現をすれば、エスパルスが(優れた守備意識をベースにした)素早い攻守に切り替えで柔軟に対処するのに対し、(日本人の能力がそこまで達していないというハンス・オフトの判断によって!?)それはリスキー「過ぎる」ということで、攻めの際にも、極力、互いのポジショニングバランスを崩さずにプレーするというイメージのジュビロ。
もちろん、ある程度までエスパルスの全体組織が「下がった」場合は(要は、最終勝負シーンでは)味方を追い越して決定的スペースへ抜け出してもいいということらしいけれどネ。そんなジュビロのサッカーを観ていて、以前のレッズを思い出していた。フラストレーションが溜まったよネ〜〜。もちろん、そんな「規制サッカー」では、勝てる可能性が「比較的」高まるのは道理なわけだけれど、サッカーの究極の目標テーマは『美しさと勝負強さのバランス』だからネ〜〜
とはいっても、攻撃における、「ここぞっ!」の勝負マインドを爆発させる意志の統一(イメージシンクロ)だけではなく、守備でも、チェイス&チェックによる守備の起点の演出や、その周りでの次のボール奪取勝負への準備プレーに代表される戦術的な徹底度では(そこでの細かなポジショニングやプレッシャーの掛け方、はたまたマークの間合いの取り方などといった『小さな』コトの積み重ね等!)サスガにハンス・オフトは、しっかりとトレーニングしていると思うけれどネ・・。
降格しないために絶対に負けないサッカーを・・。そんな特殊な事情もあるわけだけれど、それでもハンス・オフトは、もっと選手のチカラを信用してあげてもいいんじゃネ〜か!?・・なんてこと「も」思ったりしている筆者なのですよ。
何せ、舞台は『サッカー』だからネ、何が起きるか分かったモノじゃない。この試合では勝ったからよかったものの、もし偶発的に負けでもしたら、これ以上ないほどに落ち込んでしまうかもしれない。それだったら、選手のマインドを「もう少しだけ」解放することで「もうちょっと潔い姿勢の闘い」を展開する方が、精神衛生的にも何倍も健康的だと思うのは私だけでしょうか??
とにかく、これからのジュビロの「結果」にも目が離せなくなったネ。
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ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。
基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。
いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。
蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。
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