湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2008年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第33節(2008年11月30日、日曜日)
- 内容と結果が必ずしも一致していたわけではないという評価が妥当かな!?・・(FC東京vsアルビレックス, 1-0)
- レビュー
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- アルビレックスの鈴木淳監督。
「速さについていけなかった部分もあって、FC東京にボールは支配された・・ただ我々も、フリーキックやクロスからしっかりとチャンスは作り出したと思う」
FC東京の城福浩監督。
ひとしきりゲームを振り返ったあと、こんな表現が口をついた。「後半になって、羽生を中心に展開がよくなったことで、ある程度はゲームを支配できたと思う・・とはいっても、アタッキングサードまではいくけれど、そこからの最終的な崩しが思うようにいかなかった・・最後の仕掛けプロセスでは、後方からのオーバーラップとか爆発的なワンツーとか、そんなメリハリある(変化を演出するような!?)チャレンジが出てこなければウラの決定的スペースを突いていくことは難しい・・」
その発言を聞いて、これは質問せざるを得ないよな・・と、手を挙げた。そこで質問した内容は、この試合で私がピックアップしたポイントということになります。
「アルビレックスの鈴木監督が、ボールは支配されたけれど、しっかりとチャンスも作り出した、と言っていた・・まさにその通りで、私は、たしかに東京がゲームの流れは支配していたと思うけれど、決定的チャンスの量と質では、アルビレックスに軍配が上がると思っている・・」
城福監督が、鋭い視線を投げかける。迫力あるよナ〜〜。彼は、プロフェッショナルの雰囲気(意志&姿勢!?)をどんどん深化・発展させていると思うよ。でも、同業のプロコーチとしては、私も負けない。
「ゲームを支配していた東京の、本当の意味でチャンスと呼べるシーンは、後半に入ってからのカボレのシュートが最初だったと思う・・それまでのチャンスでは、アルビレックスが凌駕していた・・二度のフリーキックからの絶対的チャンス、松下年宏からの素早いクロスを、ファーポストスペースに走り込んだ矢野貴章がブチかました絶対的なダイレクトシュートシーン(前半24分)・・また、決定的スペースへ飛び出した田中亜土夢への、ベストタイミングのロングラストパス(またまたバーにはね返されてしまった!)などがあった・・」
「またアルビレックスは、押し込まれる展開がつづいた後半でも、カウンターから何度か決定的シーンを作り出した・・ということで、全体的なボール支配では、たしかにFC東京が上回ったけれど(そしてゲームに勝利したけれど)実質的なチャンスの量と質という視点では、わたしは、アルビレックスに軍配を上げる・・」
「そんなアルビレックスのチャンスを観ながら、どうもFC東京のディフェンスでは、ココゾという大事な瞬間での甘さが目立つように思えてならなかった・・寄せが甘いからフリーでクロスを送り込まれたり、田中亜土夢や矢野貴章に、何度も、ベストタイミングで決定的スペースへ抜け出されたり・・そのポイントについてどう思うか?」
長い質問でした。スミマセンね・・ジャーナリスト仲間の皆さん。とにかく、そんな私の質問に対し、城福監督が、真摯に、次のようなニュアンスのことを述べていた。
「我々は、コンパクトなサッカーを志向しているわけだが、そうすると、どうしてもウラを突かれるリスクが増大してしまう・・もちろん我々も、日々、そのようなシチュエーションをイメージすることでリスク要素を抑制することに精進しているわけだが、おっしゃるように、瞬時の判断の甘さなど、まだまだ足りない部分があると思う・・」
「要は、チームが一つのユニットになって機能しなければならないということだが、そのポイントこそが、これからのテーマということだ・・コンパクトとマーキングとチェックの甘さ・・我々はまだまだ発展途上・・様々な反省ポイントを糧に、これからもサッカーを深化させていく所存だ・・」
いいネ、城福さん。変な日本人的体質を背負っていないからこその本格感が見えてきますよ。でも、この試合での私の評価は(要は、城福監督への質問内容は)正しい見方だと思っていますよ。
FC東京の甘さ・・。逆から言えば、最終勝負プロセスでのアルビレックスには、確固たる「イメージ(タイミング)シンクロ」があったということです。松下年宏のクロスにしても、どのスポットに、どんなタイミングでボールが来るのかというイメージを、チーム全体がシェアしていると感じる。要は、シンプルなタイミングの仕掛けだからこその高効率ということだけれど、それは、鈴木淳監督のウデの一端を明示している。フムフム。
もちろん、今シーズンのFC東京で城福浩監督が為した成果は、素晴らしいの一言でしたよ。それは疑いのない事実だし、だからこそ、来シーズンのFC東京にも大いなる期待が持てる。プロサッカーにとって、ファンの皆さんに「期待エネルギー」を放散できることほど素晴らしい「交換価値」はないからね。今シーズンの城福さんは本当に良い仕事をしていると思いますよ。
ところで、この試合のパンフレットに、城福浩監督からのメッセージとして、こんなことが書かれていた。「われわれは、うまくボールを運ぶことと、泥臭くプレーすることの両方を追求してきた」
まあその言葉には、(サッカーの本質的な楽しさとか魅力という意味も含めた)美しさと、(人間の弱さとの対峙という厳しいテーマも内包する)勝負強さを、出来る限り高い次元でバランスさせるというニュアンスが含まれているんだろうね。
ところで、リスクチャレンジあふれる美しさの演出と、相手を打ち負かす勝負強さという要素は「背反」するのだろうか?? 営業に巧みなプロコーチだったら、「もちろんそれは可能だし、自分はそれを常に体現している・・」なんて大言壮語するんだろうけれど、まあ、本当の意味で実現するのは、どんなコーチにとっても難しい作業だよね。
それこそが、「名将」が高く評価されるバックポーンにあるというわけです。彼らは、才能ある選手だからこそ、攻守にわたる(ボール無しの)全力汗かきプレーを要求しつづけるのですよ。もちろんディエゴ・マラドーナのような世紀の天才は「別」だけれどネ。ホント、サッカーは(ある意味で)理不尽なスポーツだよね。
あっと・・そういえば、その世紀の大天才が、アルゼンチン代表の監督に就任したんだってネ。ホント、アルゼンチンのサッカー仲間は、またまた、これ以上ないほど素晴らしい学習機会を与えてくれるじゃありませんか。あははっ・・
ところで最終節。味スタでの「ヴェルディ対フロンターレ」か、フクアリでの「ジェフ対FC東京」か。迷うね〜〜。さて、どうしようか。
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ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。
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ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。
基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。
いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。
蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。
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