湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2009年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第13節(2009年5月23日、土曜日)
- やっぱり「ゴールという刺激」は何よりも重い・・(ジェフvsマリノス, 1-1)
- レビュー
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- どうも皆さん、最近、ビジネスと私事が多層的に重なりあっていることで、ちょっとご無沙汰してしまいました。「ドイツにでも行ってたんですか・・近ごろ見掛けなかったから・・」なんて、フリーランスライターの六川享さんに声を掛けられちゃったりして。
そんなこた〜ネ〜だろ・・一週間前のレッズ対ガンバ戦だってレポートしたじゃネ〜か・・でもまあ(今週では)たしかにACL最終節やナビスコカップの試合ははまったく観られなかったよな。まあ、仕方ない。さて、ジェフ対マリノス。
面白かったネ〜〜。この試合は、ジェフが、まさにワンチャンスという唐突な先制ゴールを決めてから大きく動きはじめ、エキサイティングな勝負マッチへと「成長」していきました。もちろん、追いかけるマリノスがリスク承知で攻め上がり、対するジェフが、カウンターで突き放そうとするといった緊迫したゲーム展開のことです。
ここで言うリスクチャレンジとは、もちろん、前からの積極的なボール奪取勝負と、人数を掛けた攻撃での仕掛けプロセスのことです。
いつも書いているように、最終的には自由にプレーせざるを得ない(精神的&物理的ミスの多層的な集合体である!)サッカーでは、攻守にわたってリスクにチャレンジしなければ何も生み出すことはできません。そして、そこでは、常に「様々なバランス」が崩れる。だからこそ、瞬間的に、バランスが崩れていることを「感じ」、それを素早く整えられるような「本物のバランス感覚」が問われるというわけです。
要は、日本人が嫌う「リスク要素」は、サッカーでは、発展のために欠かせない最重要ファクターだということです。だから、日常生活で使われるリスクマネージメントという表現は、サッカーの場合、まさに「本物のバランス感覚」と同義だということになるわけです。
どうしてこの話題になったんだっけ?? あっ、そうそう・・マリノスが、ゴールを入れられ、失うモノがなくなったことで『はじめて』吹っ切れた仕掛けサッカーを展開しはじめたからだったっけ。要は、素晴らしい攻撃サッカーを展開できるのに、どうして最初から「もっと行かなかった」んだよっ!・・ってな文句が口をついたということでした。
しっかりと動きつづけながら自らリスクにチャレンジするような、主体的に仕掛けていくサッカー・・。イビツァ・オシムさんは、いまでも、様々な雑誌で、こんな(下記のような)ニュアンスのことを言いつづけている。
日本人は、もっともっと走りなさい(考えつづけ、そこで描写されたイメージを、強烈な意志をもって実行していきなさい)!!・・UEFAチャンピオンズリーグで活躍する世界トップの選手たちは、アナタ方よりも、もっともっと走っていますよ・・彼らは、あなた方よりも、攻守にわたる『全力スプリントの量と質』で優っている・・どう考えたって、そりゃないでしょ!?・・少なくとも、走る「量」で彼らに負けていたらハナシにならんよナ、ホントに・・それじゃ、世界にアピールできるサッカーなんて出来るはずがない(この表現は筆者の脚色!)・・などなど・・
いいね〜、イビツァ・オシムさん。彼は本当に日本が(その謙虚で誠実な文化が!?)好きなんだよ・・だからこそ、今でも我々にアドバイスを送信しつづけてくれる(強烈な文句のブチかまし!?)・・だからこそ、サッカーでは、日本人特有の謙虚さと誠実さをバックボーンにした『組織マインドベースの傲慢さ』が必要なんだと説きつづけてくれるイビツァ・オシムさん・・心から感謝しますよ、ホントに・・
ありゃりゃ・・またまたハナシが大きく逸れた。ということで、マリノス。
膠着していた前半でも、スペースを使うという感覚的なイメージシンクロプレー内容では、マリノスに一日の長があると感じていました。自信あふれるボールキープ(効果的なタメ)と、人とボールが動きつづける(要は人数を掛けた)コンビネーション、はたまた、山瀬功治に代表される鋭い勝負ドリブル・・等々。
たしかに、チームプレーに徹するジェフの強烈なディフェンス(ハードワーク)に、全体的には押し込まれているように「見えた」マリノスだけれど、一度(ひとたび)押し返して仕掛けに入ったら、決定的スペースの攻略という視点も含め、明らかに「その危険度」はジェフを上回っていた。だからこそ「何で初めからもっと行かないんだヨ!!」なんていう文句も自然と口をついていた・・というわけです。
もちろんジェフも、徹底的なハードワークを基盤に、アレックス・ミラー監督によるクレバーな(堅実な!?)ゲーム戦術を徹底するなど、良いサッカーを展開していた。
この試合では、マリノスの木村浩吉監督も言っていたように、マリノスのサイドバックが、センターゾーンへ「切れ込んでいく」シーンが多すぎたわけだけれど、それは、マリノスのサイド攻撃を抑制しようというアレックス・ミラー監督の意図するところだったということらしい。
たしかに左右サイドバックの田中祐介と小宮山尊信が、タテのスペース(コーナーフラッグ付近ゾーン)へ抜け出してクロスを送り込むようなシーンでは、彼らがセンターゾーンへ切れ込んでいくようなシーンと比べてチャンスの可能性はより高いモノになっていたよね。だからこそジェフは、そんなタテスペースの攻略を、出来るだけ抑制したということです。たしかに、その意味では、ジェフのゲーム戦術がうまく機能していたとも言えそうだね。
サイド攻撃については、ジェフも明確な意図をもってゲームに臨んでいた。
先制ゴールは、左サイドでボールを持った谷沢達也の「タメキープ」からのベストタイミングクロスが、(一旦マリノス守備の視野から消え!?)急にファーサイドスペースへ出現した巻誠一郎にピタリと合ったことで「ヘディング一閃!」ってな決定的シュートになったモノでした。
アレックス・ミラー監督も自画自賛のスーパーゴールだったけれど、それでも、決定的クロスやパスが「レシーバー」にピタリと合ったシーンは希だったことも確かな事実だった。
フィニッシャー(パス・レシーバー)巻誠一郎は、例によって忠実に、ニアポスト勝負スポットやファーポストの勝負スポットに「メリハリが効いた全力スプリント」で走り込むけれど、いかんせん、ラストパスやラストクロスが出てこない。アレックス・ミラー監督も、そのコンビネーション(イメージ・コミュニケーション)の精度を上げることが課題だと言っていた。フムフム・・
そんな色々な「ポイント」があったエキサイティングマッチだったけれど、この試合で筆者がピックアップした最も興味深かった視点は、マリノスの木村浩吉監督が、後半14分に、山瀬功治を交替させたことでした。
山瀬功治と交替して出場したのは、最近になって韓国代表にも名を連ねるようになった「金根煥」。193センチの長身ディフェンダーだけれど、この試合では、最前線の「ヘディング・スピアヘッド」として抜群の存在感を発揮した。
とにかく足が速いことで(=ジャンプ力が優れている!)ヘディングが強いだけじゃなく(ただしヘディング感覚については課題が山積み!?)タテスペースへのロングパスにも必死で食らいついてキープしちゃうといった「スーパー・フィジカル・プレー」でも存在感を発揮できる切り札的プレイヤーなんですよ。
わたしは彼を観るのは初めてだったけれど、ホント、ビックリした。まさに、ドイツ代表の「ハンス・ペーター・ブリーゲル」を観ているようだった。彼については、ウィキペディアを参照してくださいネ。
だからこそ、その「金根煥」が山瀬功治と交替したことに合点がいかなかった。最前線のターゲットが出来たからこそ、山瀬功治の「仕掛けプレー」がもっともっと活きるはず。要は、「金根煥」と山瀬功治のコンビネーションが観たかったということです。
だから木村浩吉監督に、山瀬功治の交替の根拠について聞いてみた。「山瀬功治だが、攻撃の変化を演出できるのは彼しかいないと思っていたから、彼の交替にはちょっと驚いた・・ケガではなかった思うが、その根拠を聞かせて欲しいのだが・・」
それに対して木村浩吉監督が、真摯に、こんなコメントを出してくれた。「たしかに山瀬は、攻撃に変化を付けられる優れた選手だと思う・・私は彼に、もっともっと前を向いて仕掛けていけ!と言いつづけた・・ただ実際のプレーは消極的なところも多かったしミスも多かった・・それだったら金根煥の身体能力の高さに賭けた方がいいと思った・・決して山瀬功治がダメだというわけではない・・」
そうネ〜・・木村浩吉監督は、いつも彼らを観察しているから細かな判断もつくんだろうけれど・・選手のプレーは、味方のプレー内容が変われば(選手が替われば)大きく変化するモノだからネ・・もう少しガマンして、金根煥と山瀬功治を一緒にグラウンド上に立たせて欲しかったよナ〜〜・・まあ、自分勝手な願望だけれどサ・・まあ仕方ない・・「次」はお願いしますよ木村浩吉さん・・
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ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。
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ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。
基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。
いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。
蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。
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