湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2009年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第15節(2009年6月28日、日曜日)
- ガンバが抱える「諸刃の剣」という脅威・・そして進化しつづける木村浩吉マリノスの組織プレー・・(マリノスvsガンバ, 1-2)
- レビュー
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- 「レアンドロとチョ・ジェジンは、彼らなりの強み(ストロングポイント)を持っている・・例えば、ボックス内での(他の選手には出来ないような)仕事とか・・たしかに彼らの運動量は足りないわけだが、中盤が昨シーズンのように機能しはじめれば(彼ら二人の特異な能力によって!?)もっと攻撃力が上がってくるだろうし、色々なスタイルにもトライすることが出来るようになるばずだ・・」
わたしが投げかけた質問に対して、西野朗監督が、真摯に答えてくれた。
その質問は、こんな感じ。「今シーズンから加入したレアンドロとチョ・ジェジンだが、たしかに彼らは個の能力では長(た)けたモノを持っている・・ただ、まだまだ『諸刃の剣』というレベルから抜け出せていないとも思う・・昨シーズンは、ルーカス、山崎、播戸といった組織ストライカーを中心にアジアの頂点を極めたわけだが、そこで素晴らしい存在感を発揮しつづけた中盤の機能性が、この二人によって減退していると感じられるフシもある・・この段階では、まだチームが、完成型へのプロセスにあると考えていいのだろうか??」
たしかに、レアンドロにしてもチョ・ジェジンにしても、周りとの組織プレーイメージが「うまくシンクロ」しはじめれば、天から授かった個の勝負能力も、大きく花開くかもしれない。
特に、レアンドロの、素晴らしいスピードに乗った突破ドリブルには、観ている方をワクワクさせる「世界レベル」が見えるしね。でも、いまのところでは、まだまだ「独り善がり」のプレーが多すぎるし、守備もお座なり。だからこそ、彼らの個の能力も、最大限に発揮できていないと感じるのですよ。
実際、後半の立ち上がりにチョ・ジェジンがルーカスと交代するまでは、中盤での機能性(人とボールの動きをベースにした組織プレーコンテンツのレベル!)は、とても鈍重だったと思うのです。この試合ではサイドハーフに入った遠藤ヤットにしても、二川孝広にしても、うまく最前線と絡めなかったしネ。何せ、一度ボールを預けたら、まったく「ボールが戻されてくる気配さえない」のだから・・
それが、ルーカスが登場してからは、ガラリと様相を異にする。遠藤ヤットと二川孝広(その後は山崎雅人)だけではなく、それまで後方で「くすぶっていた」守備的ハーフコンビの橋本英郎と明神智和も、より積極的に「前へ絡んで」いくことで、リンクマンとしての機能性も格段にアップしたのです。
そんな流れのなかで、こんなシーンを目撃した。ガンバが右サイドでボールをキープしているシーン(スローインの状況だったですかネ)。その状況で、タテパスをレシーブしようとする動きをみせないレアンドロに対し、逆サイドから、ルーカスが寄ってきて何やら言葉をかけたのです。あからさまに嫌な顔をするレアンドロ。そしてルーカスが、レアンドロを差し置いて、ズバッとスペースへ戻ってタテパスを受け、うまく(シンプルに)逆サイドへ展開する。
素晴らしい組織パスによる効果的な仕掛けプロセス・・。その間、レアンドロは、完全に「状況ウォッチャー」になっていた。それでも、その後からは、シンプルにパスをつないだり、ボールのないところでも、しっかりとパスレシーブの動きに入るようになったと感じた。フムフム・・
そうそう・・ガンバはそうでなくっちゃネ。西野朗監督も「そのサッカー」でアジアの頂点に輝いただけじゃなく、マンU相手に抜群の存在感を発揮した(そして世界中に、ガンバと西野朗の名を知らしめた!)。
いかに「才能」に、攻守にわたる汗かきプレー「にも」精進させるのか・・。これは、非常に微妙なテーマなのですよ。もっと言えば、現代サッカーでは、「そのポイントにおいてのみ」監督のウデが測られるといっても過言じゃないほどなのです。フムフム・・
ガンバが抱える「諸刃の剣」という脅威。でも、脅威と機会は「表裏一体」だからね。いかに脅威を、最大限の「機会」として活かしていけるか・・。西野朗監督のウデが問われる。
とにかく、そんな視点でも、これからのガンバの発展プロセスを観察するのもオツなモノじゃありませんか。いかが・・!?
ということで、次は木村浩吉マリノス。
良かったですよ。例によって、粘り強くダイナミックなディフェンスを基調に、(だからこそ!?)攻撃でも「組織的な強力プレー」が炸裂しつづけていた。
たしかに立ち上がりの時間帯は、局面での競り合いで、ガンバの後塵(こうじん)を拝するシーンが多く、ゲームの流れを牛耳られた。そんな展開を観ながら、「そうだよな〜〜・・ガンバには、レアンドロ、チョ・ジェジン、遠藤ヤット、二川孝広、明神智和に橋本英郎という優秀なプレイヤーが揃っているしナ〜〜・・それに、山口智にリードされる、経験豊富な最終ラインも強力だよナ〜〜・・」なんて思っていた。
それでも、時間が経つにつれて、「相手にゲームを牛耳られている状況では、ガマンして粘りの組織ディフェンスをつづけよう・・そしてチャンスが到来したら、勇気をもって攻め上がっていこう・・」という木村浩吉監督のメッセージ通りに、マリノスが仕掛ける組織的なパスプレーにも勢いが乗っていった。彼らは、ガンバの個の能力にビビることなく、果敢に「スペースへのリスキーなパス」にもチャレンジしつづけたのですよ。
だから、松田直樹が蹴り込んだ先制ゴールは、まさに理の当然の(必然的な)結果だったのです。
この試合では、中沢祐二が戻ってきたことで、守備的ハーフのポジションへ上がった松田直樹だけれど、そのプレーを観ながら、彼の、天から授かった並はずれた能力を再認識させられていた。読みもよし。ボール奪取勝負もよし。また攻撃に上がっていっても良いパフォーマンスを魅せるし、その後の守備でも、汗かきプレーをいとわない。
やはり彼は、日本を代表するプレイヤーの一人だ・・でも、まあ間が悪かったということなのだろうか、結局は、日本代表チームに定着することは叶わなかった。世界には、そんな不運なプレイヤーは多い。わたしも、数限りなく、そんなプレイヤーを見てきたわけですよ。残念だけれど、仕方ない。
ところで、最後の時間帯に小椋祥平に代わってグラウンド上に登場してきた、長身194センチの「金根煥」。木村監督は、「彼本来のポジションじゃないけれど、このような試合展開になったら前戦で使うということはチームの全員が分かっているし、そのための練習もしている・・ただし、彼が入ったことが即パワープレーのサインであるということではないのだが・・」と言っていた。
今回は、山瀬功治も「まだ」グラウンド上にいるから、大いに期待したのだけれど、結局は、木村監督が言っていたように、本格的な『パワープレー』でチーム一丸になるという流れにはならなかったネ。最後尾から、栗原勇蔵も上がっていったのだけれど・・。
私は、もっと、もっと、早めのハイボール(アーリークロス)を放り込んでいれば、そこから何かが生まれたかもしれないと、ちょっと残念だったね。
サッカーでは、チーム一丸となって「共有するブレーイメージ」を徹底的に実行することほど、最高の効果を発揮できる「心理的&物理的な状況」はないのですよ。そう、徹底的に「迷い」を消し去るということを、チーム内で徹底的に共有する・・ということです。
そう、1980年代あたりまでのドイツサッカー。フムフム・・
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ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。
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ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。
基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。
いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。
蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。
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