湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2009年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第16節(2009年7月4日、土曜日)
- ポンテという、組織プレーイメージの牽引車・・(山形vsレッズ, 2-3)
- レビュー
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- そうだね〜〜。この試合の最大のポイントは、鈍重だった前半のサッカーに対し、ポンテが入った後半には、サッカーの流れが大きく活性化したということですかね。
昨日は、プライベート・イヴェントが重なり、帰宅したのは深夜。ということで、ビデオを見はじめたのは翌日(日曜日)になってからでした。まあテレビ観戦だから、選手にスポットを当てたポイントをピックアップし、その背景要因(仮説)を簡単に探っていこうかな・・と、キーボードに向かった次第。
前半にレッズが展開したのは、個のブツ切り局面勝負シーンを、イメージが同期することなくつなぎ合わせたような鈍重サッカーだった。そんなジリ貧サッカーから、後半は、人とボールがよく動く(落ち着きと、ココゾ!の連動アクションがメリハリ良くバランスされた)組織パスサッカー(コンビネーションフットボール@フォルカー・フィンケ)へと見違えた。
冒頭で書いたように、そのもっとも大きな要因は、ロブソン・ポンテの投入にありました。もちろん、右サイドバックとして、攻守にわたって目立ちに目立っていた(守備でも素晴らしく効果的なシーンを何度も魅せた!)ヤングスター西澤代志也の存在も見逃せなかったけれど、その西澤にしても、ロブソン・ポンテがコアになって演出した「組織パスプレーの流れ」にうまく乗れたというだよね。
ロブソン・ポンテは、ホントに良かった。守備での忠実なチェイス&チェックや汗かきプレス(もちろんボール奪取勝負シーンでも何度も才能を発揮していた!)を絶対的なプレーイメージ・ベースに、攻撃でも、あくまでもシンプルなパスプレーを積み重ねていく。そんな『効果的なシンプルプレー』の絶対的基盤は、何といってもパス&ムーブなのですよ。
それがあるからこそ、周りが刺激され、スペースへと動きつづけるし、後方からもサポートに上がってくる。そして、グラウンド全体に(もちろんレッズが攻撃している限定ゾーンのことだよ!)数的優位の輪が作り出されるのです。
ロブソン・ポンテが魅せつづけた、攻守にわたる忠実なシンプルプレーだけれど、それによる「心理的な効果」は、もちろん、彼の個の才能がチーム全体で深くレスペクトされているからに他なりませんよね。だからこそ彼は、監督やコーチにとって、とても重要な「パートナー」なのです。
そんなグラウンド上の(コーチングスタッフにとっての)パートナー・・。エジミウソンは言うまでもないけれど、彼とパートナーを組む高原直泰も、パートナーになり得るだけの存在感を発揮しはじめている。
前半はチーム全体がうまく機能しなかった(イメージが連動しなかった=共通イメージの牽引プレイヤーがいなかった=ロブソン・ポンテや山田直輝がいなかった!)ことで、実効レベルが高揚しなかったけれど、組織の流れが加速しはじめた後半では、攻守にわたって、とても印象的なプレーを魅せた。
守備では、汗かきプレーを厭(いと)わないから、周りの味方に「次で」ボールを奪い返させるだけじゃなく、自身も、最前線からタイミングよくボール奪取の競り合いシーンに参加してくることで効率的にボールを『かすめ取って』しまうシーンが続出した。
そんな効果的なディフェンスは、味方の高原直泰に対する「信頼感」をアップさせるだけじゃなく、彼自身の「自信レベル」も確実に高揚させる。何といっても守備は、全てのスタートラインなのです。
・・だからこそ、攻撃でも、自信をもってシンプルに組織プレーに徹することが出来る・・だからこそ、より良いカタチで「個人勝負」も仕掛けていけるようなシーンを『自ら』演出することが出来る・・彼は、絶対的なスピードでは劣るけれど、タイミングのよい(スペースでの)パスレシーブが出てくれば、流れのなかで(スピードを落とすことなく)スムーズに勝負(シュートやラストパス)にもっていくことができるのですよ・・
今の高原直泰は、ジュビロ絶頂期の「組織プレーイメージ」を反芻しているに違いない。
そんな「天才たちの組織プレーの饗宴」に、うまく乗り切れなかったのが、セルヒオ・エスクデロ。例によって、ドリブル勝負に代表される局面勝負では才能を感じさせてくれる。でも、攻守にわたる、目立たないところでの汗かき組織プレーでは・・
要は、攻守にわたって、まだまだ様子見(意志やイメージの空白)に陥ってしまうシーンが多すぎるということです。意志やイメージが徹底していないということなんだろうね。「気が向いたら行きますよ・・」ってなマインドじゃ、ダメなんだよ。いくら息が上がっていても、とにかくサポートするために動いたり(パスを呼び込むスペースランニング!)、守備でも必死にチェイス&チェックで相手に食らいつく・・。
そんな、汗かきの全力スプリント(強烈な意志の表現=自己主張)が「もっと」出てくるようになれば、確実にチームの彼に対するイメージは変わる。あれだけの才能に恵まれているんだから、局面ドリブル勝負で「ちょっとくらい」よいシーンを作り出したってダメなんだよね。そんな汗かきプレーを「もっと忠実に積み重ねられるようになれば」必ず彼は、もっとよいカタチで自分の才能を表現できるようになるはずです。
とにかくセルヒオには、『ポンテやエジミウソン、高原直泰じゃなく、このオレがサッカーを引っ張ってやる!』という強烈な意志を期待するっちゅうことですかね。
その他にも、『トゥーリオと鈴木啓太のタテのポジションチェンジ』とか、『攻守にわたって細貝萌が魅せつづける全力プレーのバックボーン』とか、いろいろな視点はあるけれど、まあそれらは別の機会に・・
ということで最後になったけれど、実質的な(勝負という視点でみた)ゲーム展開というテーマにも簡単に触れておくことにします。
要は、素晴らしい(後半の)サッカー内容で山形を圧倒したにもかかわらず、ゲームとしては(カウンターで決定的ピンチが何度もあったこと・・そして山形を突き放すチャンスを決め切れなかったことなどで!)引き分けに終わっても仕方ないというゲーム展開に落ち込んでしまったということです。神様のドラマは、常に「そこ」にあるのですよ。だからこそ、チャンスは、しっかりとモノにしなければならなかった。後半のレッズは、何度も「二点差」にするチャンスを作り出していたわけだからネ。
ゲームのなかで、相手の(あのレベルの)攻撃だったら余裕をもって守り切れるという「イージーな心理」が芽生えていた!? さて・・。
とにかくこのゲームの奥底に潜んでいた「攻守にわたる実質的な勝負の流れ」は、上を目指すレッズにとって大事な反省材料と思うわけです(反省材料=イメージトレーニング素材=として効果的に活用しなければならない!)。何せターゲットは、アントラーズやフロンターレといった強者なんだからネ。
さて、今日のスタジアム観戦は、フロンターレ対アントラーズ。いまから胸が高鳴りますよ。
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ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。
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ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。
基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。
いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。
蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。
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