湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2009年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第18節(2009年7月19日、日曜日)
- もっと柔軟なプレーアイデアを!?・・(トリニータvsレッズ, 1-0)
- レビュー
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- 明日からドイツ出張ということで(サッカー関係者や友人たちと旧交を温めたり、ドイツサッカーコーチ連盟主催の国際会議に出席したり・・)今日のレイソル対ガンバのスタジアム観戦は難しくなってしまいました。まあ・・いろいろと「処理&仕込み」をやっておかなければならない用事が山積みということです。
ということで、今日は(ビデオ観戦した)昨日のトリニータ対レッズ戦を簡単にレポートしておくことにしました。
この試合でのキーポイントは、何といっても「グラウンドの状態」。トリニータのホームは「ドーム・スタジアム」ということで(!?)芝が、十分に日光の恩恵に浴することができない・・だから根が十分に張っていかない・・。これでは、ちょっと選手がスパイクで踏ん張ったら、簡単に芝が剥がれてしまうのも道理。グラウンドには、至るところに、めくれ上がった芝による障害物(小山)が散乱していました。
こんなグラウンド状態では、コンビネーションサッカーを効果的に仕掛けていくのは難しい。両チームが同じ条件だとはいえ、人とボールをしっかりと動かしつづける(激しくスピードと方向を変化させつづける『動き』によって相手守備ブロックを翻弄し、彼らのウラスペース突いていく!)組織コンビネーションを強く志向するレッズにとっては、特に難しい条件だったと言えるかもしれない。
いくら、シンプルなパスと、間髪を入れないパス&ムーブによるコンビネーションをイメージしても、その途中で、高い確率で何らかの支障をきたしてしまうのだから(イメージ以外の事態が発生してしまう)スピードを落とし、より慎重に、確実にプレーせざるを得なくなるのも道理。それが、レッズがイメージする組織コンビネーションの「流れのリズム」を微妙に乱していったというわけです。
この試合では、両チーム合わせて「たったの11本」しかシュートが放たれなかったわけだけれど、このグラウンド状態を考えれば、それも当然の成り行きだと合点がいくよね。
とはいっても(組織パスや勝負ドリブルが難しいグラウンドコンディションという悪条件によって!?)シュート数が少なくなってしまった事実には、より確実にシュートへもっていこうとする日本サッカーの性向(弱点)が露呈していたという見方もできそうだね。もちろん、両チームのディフェンスが「忠実&ダイナミックに」奮闘しつづけたということもあるけれど、それ以上にネ・・
前半は(そんな悪グラウンド状態に慣れている!?)トリニータが、早いタイミングでクロスボールを送り込んだり、思い切りのいいミドルシュートを放つなど、殊の外、効果的にシュートシーンを演出していた。
それに対してレッズは、最後の最後まで「自分たちのやり方」にこだわりつづけていた。いや、臨機応変に「アバウトな仕掛け」もミックスしていくという発想の柔軟性に欠けていた・・と言えるかもしれない。
パス&ムーブを組み合わせる「ショート・コンビネーション」・・原口元気に代表される、サイドからの突破ドリブル・・などなど。それは「それ」で相手にとって危険なトライではあったけれど、それでも、成功する確率が普段よりも低かったことも確かな事実だったよね。
だからこそ私は、もっと仕掛けの「変化」にチャレンジしても(そのことに対する明確な発想と意志をもってグラウンドに立っても)良かったのではないか・・と思うわけです。
素早い組織コンビネーションや(それをベースに良いカタチでボールを受けたところから仕掛けていく!)勝負ドリブルによる最終勝負だけではなく、シンプルなタイミングの放り込み(アーリークロス!?)からの一発ヘディングや、その競り合いからのこぼれ球を、走り込んだ「三人目」が狙うとか、相手ゴールへ突っ掛けていくと見せ掛けてバックパスを戻し、それをダイレクトで叩く中距離シュート、はたまた、弾丸クロスからのニアポスト勝負(スリップヘッドで中央ゾーンに流してチャンスを演出する)などなど、その時々の自然環境やゲーム条件に効果的&柔軟にアダプトできるように、レッズが志向するベーシックなコンビネーションサッカーをより多彩なモノにする「シオ&コショー・アイデア」には際限がないよね。
とにかく(特に守備で!)素晴らしいガンバリを魅せ、久しぶりの勝ち点3をゲットしたトリニータには、心からの賛辞を呈したいと思います。
そしてレッズには、時には、スマートさとは掛け離れた「泥臭さ」も前面に押し出して勝負を仕掛けていけるような、より柔軟なプレーイメージも身につけて欲しいと願う筆者なのでした。
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ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。
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ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。
基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。
いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。
蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。
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