湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2009年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第28節(2009年10月3日、土曜日)
- ボールがないところのアクションの量と質こそがメインテーマ!・・(RvsJE, 3-1)
- レビュー
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- 「サッカーは数学と違うからな・・(レッズが)何度もつくりだした決定的チャンスを、うまくゴールに結びつけられなかったこと対して、必然的な(論理的・・ロジカルな)要因を探ること自体がナンセンスな場合が多いということさ・・ビールでも飲みながら、夜通し、アーでもないコーでもないって激論を交わしたって結論が出ないことがほとんどなんだよ・・論理とは違うところで『動いている』部分が多いのがサッカーということだな・・だからサッカーは面白いんじゃないか・・」
「レッズは、あれだけたくさんの、それも100パーセントの決定的チャンスを作り出したけれど、それを外しまくっていた・・フィンケさんが冒頭で言っていたように、このままだったら、もしかしたら負けてしまうかも知れないと感じるのも道理だと思う・・そんな決定的チャンスをゴールに結びつけられなかった背景に、何らかの、必然的なバックボーンがあったのだろうか・・?」
そんな私の質問に、いまにもウインクしそうな雰囲気で、フォルカー・フィンケが冒頭のようなコメントをくれました。
もちろん決定的チャンスをゴールに結びつけられなかったシーンでは、必然的な背景要因が明確なミスも多いよね。とはいっても、高原直泰や阿部勇樹が、相手GKと一対一になった状況で(自信をもって!?)放ったシュートシーンは、どうだったろうか? たしかに、GKの身体を「よける」ようにシュートが打たれたし、普通だったら入っていたのかもしれない。でも、この日は、当たりまくっていたジェフGK岡本昌弘が投げ出した身体に当たって弾かれてしまう。この現象は・・さて・・
それ以外にも、(何度も実効オーバーラップを決めた)左サイドバック細貝萌のクロスを、エジミウソンが決定的ヘディングシュートを見舞ったり、(攻守にわたって自信にあふれた本当に素敵な積極プレーを披露した)右サイドバック高橋峻希のクロスからのヘディングシュートが僅(わず)かに逸(そ)れてしまったり、トゥーリオやポンテの決定的シュートが僅かに外れたり・・等々、とにかく後半は、決定的チャンスのオンパレードだった。でも入らない・・
フォルカー・フィンケは、ビールでも飲みながら夜更かしディスカッションしたって、結論が出ないことの方が多いサ・・と言っていたけれど、多分ワールドクラスならば、あのチャンスのうちの何本かはゴールへ叩き込んでいたに違いありません。そこにこそ、世界トップレベルとの間に、まだまだ厳然と存在する「最後の僅差」の本質的なコノテーション(言外に含蓄される意味)が内包されている!? さて・・
たしかに「このテーマ」は、話しはじめたら止まるところを知らないだろうし、結局は、心理・精神的な部分がディベートのコアになっていくんだろうね。決定力・・ってか〜〜っ!? たしかに、酒の肴として、これほど相応しいテーマはないよな・・。何せ、噛めば噛むほど味が出てくるんだからネ。
まあ、このテーマはこのくらいにして、ここからは、このゲームからピックアップした「わたしが最も興味を惹かれたメインテーマ」に入っていくことにしましょう。それは、後半10分にレッズが作り出した決定的チャンスのシーン。
左サイドで、細貝萌と原口元気がパスを交換し、最後の瞬間、中央ゾーンで待ち構えるポンテへ、鋭いグラウンダーパスが送られたのです。同時に、三列目から、阿部勇樹が、二列目と最前線の味方プレイヤーを「追い越して」決定的スペースへ飛び出していた。そして最後は、ポンテから、阿部勇樹が走り込む決定的スペースへ、ラスト(ダイレクト)パスが送り込まれたというわけです。本当に目の覚めるような、『決定的スペースを攻略する』コンビネーションプレーだった。
ところで原口元気。先日のレッズナビ(テレビ埼玉)で、「彼は、攻守にわたって、ボールがないところでのプレーが鈍重だ・・」なんていうニュアンスのことを言った。ところが、その後2試合の原口元気のプレーが、(攻守にわたって)ボールがないところでの「汗かきの量と質」が明らかに活性化したと感じたのですよ。
(テレビでコメントした手前!?)原口元気のプレーを特に意識して注視していた・・という側面があったのかもしれないけれど、とにかく、彼のプレーが全体的に活性化したと感じられるようになったのは、とてもポジティブなことです。とにかく若い選手は、限界まで汗をかかなければいけません。それがあってはじめて、チーム内での自己主張に「重み」が出てくるものなのです。
アッ・・またまたハナシが逸れた。ということで、阿部勇樹の決定的シュートシーン。結局、ジェフGKとディフェンダーの、ギリギリのスライディングで防がれてしまったけれど、前述したように、このシーンで取り上げたかったのが、相手守備ブロックのウラに広がる『決定的スペース』を、三人目、四人目が絡むコンビネーションで攻略したという事実なのです。
フォルカー・フィンケは、後半には、何度も、優れたコンビネーションでチャンスを作り出した・・と言っていたけれど、私が注目したのは、三人目、四人目の「フリーランニング」と、鋭く、広い『ダイレクトパス交換』で、相手守備ブロックの背後に広がる決定的スペースを突いていったということなのですよ。
その他のチャンスメイクでは、たしかにボールは動いていたけれど、決してウラの決定的スペースをコンビネーションで攻略したわけじゃないからね。まあ・・たしかに、逆サイドのスペースをうまく攻略したコンビネーションはあったし、小さな複合コンビネーション(いくつかのワンツーの組み合わせ)で、相手の最終ラインの眼前にある「クラック(ひび割れ)」のようなスペースにうまく入り込めたようなシーンはあったよね。でも・・
ここで私が深めたかったのは、ボールがないところのアクション(三人目、四人目の決定的フリーランニング)の量と質というテーマなのですよ。
このところのレッズ低迷の背景に、ボールがないところでのアクション(動き)の量と質の減退があることは、衆目の認めるところだからネ。要は、守備を強化した相手ディフェンスブロックによって、フリーなパスレシーバーを演出できなくなり、そのことでボールの動きも、人の動き(選手の意志のチカラ)も減退してしまったということです。
だからこそ私は、組織コンビネーションをイメージするだけではなく、シンプルなタイミングのアーリークロスを送り込んだり、ゴリ押しでもいいから、とにかく中距離シュートやロングシュートにもトライすべきだと言いつづけたわけです。そして相手守備の組織ブロックが「開きはじめる」ことでボールがないところでのマークも少しずつ甘くなり、それが、三人目、四人目の「決定的スペースをイメージしたタテのフリーランニング」を活性化させるはずだと考えたわけです。
この試合でも、トゥーリオや鈴木啓太、阿部勇樹といったところが、ロングシュートに対する意志をもっていたよね。また、素晴らしいオーバーラップを魅せつづけた両サイドバック(細貝萌と高橋峻希)も、ゴールラインまで持ち込もうとする(マイナスのクロス)だけではなく、シンプルなタイミングでアーリークロスを「放り込む」ようなイメージもあったように思います。
まあ・・ネ・・それが(前述した)阿部勇樹が決定的スペースでまったくフリーでボールを持つなどといった(タテ方向の)スーパーコンビネーションを誘発したかどうかは分からないけれどネ。とはいっても、このスーパーコンビネーションによって、その後の数分間は、ボールがないところでの決定的フリーランニングに対する「意志」が、明らかにアップしたと感じたモノです。
とにかく、そんな「勝負イメージの回復プロセス」を経ることで、レッズが魅せつづけた、今シーズン当初の素晴らしいコンビネーションフットボールも甦ってくるでしょう。
まあ・・ネ・・秋にはいって涼しくなってきているという気候的な変化も、とても大きな要素だとは思うけれど・・。そうですよネ、フォルカー・フィンケさん・・あははっ!?・・
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ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。
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ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。
基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。
いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。
蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。
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