湯浅健二の「J」ワンポイント


2009年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第32節(2009年11月21日、土曜日)

 

残り20分間に魅せたダイナミックサッカーを、残り180分(残り2試合)でやり通すのがターゲットかな・・(RvsJU, 3-2)

 

レビュー
 
  「あの」気抜けディフェンスには、ちょっと閉口した・・

 そう、右サイドの背後スペースを(村井慎二に)完璧に攻略されて叩き込まれた同点シーンだけじゃなく、その直前の、イ・グノの決定的シュート場面もそうだったし、エジミウソンが「神がかり決勝キャノンミドルシュート」を決める直前にも、ジュビロに攻め込まれ、これまたイ・グノに決定的スペースへ抜け出されて大ピンチに陥ったシーンですよ。

 ここで言いたかったのは、最後の(肝心要の)勝負所における、ボールがないところでのマーキングに集中を欠いている・・ということ。そう、もうこれまでに何度も書いているように、相手の最終勝負パスレシーバー(=シューター)の「抜け出し」をしっかりと抑え切れていない場面が多すぎるというということです。

 ボールウォッチャーになってしまい、マークすべき相手に背後スペースへ入り込まれてしまうのでは、次元が低すぎてハナシにならないけれど、自分では、その相手パスレシーバーを抑え切れる(最後は、しっかりとマーキングポジションに入り込める!)という確信イメージを持っていながら、最後の瞬間に、ちょっと「イージーな心理」になって、結局は「鼻の差」で先にボールに触られてしまうような気抜けディフェンス・・。それは、ホントに問題だよね。

 もしかしたら、「どうせパスなんか出てこない・・」といったイージーな(怠慢な)心理が先行しているのかもしれない。相手ボールホルダーが保持するボールの動きと、その相手の動作を見ながら、マーキングが、ちょっと緩慢に(甘く)なってしまう・・そして(偶発的なケースも含めて)5本に1本は出てきてしまう勝負パスでウラを突かれてしまう・・

 ジュビロに立てつづけに奪われたゴールだけじゃなく、前述した大ピンチシーンに、(いつも書いているような)大いなる「心理的な課題」を見ている筆者なのでした。

 今シーズンの失点の多さの原因は、そんなイージーな心理が、もっとも大きな要因だと思っている筆者なのですよ。とにかく、そんな勝負シーンをクレバーに編集したビデオによるイメージトレーニングが絶対に必要だね。

 ハナシは変わるけれど・・レッズは、本当によく大逆転ドラマを完遂させたよね。それに、ジュビロに逆転ゴールを叩き込まれてからのレッズのプレー内容は、とても魅力的だった。それは、今シーズンの立ち上がり頃に魅せつづけた(攻撃的ディフェンスを絶対的ベースにした!)ダイナミックな組織コンビネーションサッカーにも匹敵する。

 でも、どうして、そんなダイナミックサッカーを、最初から(もっと頻度たかく!)繰り出していけなかったんだい???

 わたしは、前半のレッズのサッカーを観ながら、こんなことを思っていました。

 ・・たしかにゲームは支配しているし、人やボールも、ある程度は動いている・・でも『何か』が足りない・・

 ・・守備では、集中プレスを仕掛けるチャンスなのに、それに呼応して連動アクションを起こしていかない選手が目立つ・・そんな「気抜け」選手だけれど、その他のシーンでは、しっかりと守備に入っているし、効果的な汗かきディフェンスだって実行している・・要は、肝心なところで気を抜いてしまっているということ・・最大限のエネルギーを傾注するボール奪取シーンと、休む(エネルギーを落とす)シーンの、イメージ的なメリハリが欠けている!?・・フムフム・・

 ・・攻撃では・・たしかに「全体的な人とボールの動き」は、より活性化しつつある・・ただ、タテへの仕掛けを逡巡して横パスを出すようなシーンも目立つなど、どうも、吹っ切れた仕掛け(リスクチャレンジ)に対する意志が、まだまだ脆弱(ぜいじゃく)だと感じる・・また、サポートの動き(後方からの三人目、四人目の動き)にも、ホンモノの勢いが乗っていない・・だから、仕掛けコンピネーションや、それがうまく機能することを前提にした個人勝負プレーにも、以前のような(このゲームの残り20分間で魅せたような!)破壊的なダイナミズムが出てこない・・

 そんな前半だったけれど、後半は、立ち上がりから、かなりサッカー内容がレベルアップしたと感じた。要は(ハーフタイムでフォルカー・フィンケが指示したように!?)守備の「量と質」が好転したことで、次の攻撃にも(ボールがないところでのアクションにも!)より、創造的&想像的な勢いが乗っていくようになったということなんだろうね。

 そんなポジティブな変化(意志の高揚)を感じ、もう大丈夫だな・・なんて思っていたのだけれど、その矢先に、前述した同点&逆転ゴールをブチ込まれてしまうのですよ。ホントに、ちょっとアタマにきたネ。何せ、気抜けプレー(ボールがないところでの集中を欠いた守備アクション)が原因なんだからね。

 でも、まあ、ケガの光明というか、その後にレッズが魅せた、吹っ切れた仕掛け(リスクチャレンジ)には、彼らが本来志向する、美しい組織コンビネーション(有機的な連鎖プレー)が満載だったことも確かな事実だった。だからこそ、局面での個人勝負プレーも、効果的に繰り出していけた。そう、彼らが志向すべき重要なイメージターゲットの一つは、『組織と個の優れたバランス』なのです。

 さて、残り2試合となったところで、三位のガンバとの勝ち点差は「5」と変わらず。まあ大逆転の3位獲得はかなり難しくなったけれど、逆に、もう何も失うモノはないという意味合いで大いなるチャンスなのだから、 とにかく今は、『自分たちのサッカー』を、しっかりとイメージに刻み込むことに全精力を傾注しなければいけません。そのためにも、この試合での、残り20分間のチャレンジングサッカー(そのイメージ)を、もっともっと前面に押し出していかなければならないのですよ。

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 



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