湯浅健二の「J」ワンポイント


2009年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第8節(2009年4月29日、水曜日)

 

良いサッカーのイメージが確立しつつあるレッズ・・発展スピードが加速するのも当然だ・・(エスパルスvsレッズ, 2-2)

 

レビュー
 
 あらら・・引き分けちゃった・・。

 タイムアップの笛を聞いたときの率直な思いでした。内容的には、レッズが明かな勝利を収めてもおかしくないゲームだったからね。私は(最後の時間帯)そんなロジカルな結末をイメージしながら、こんなメモを取っていましたよ・・

 ・・いまのレッズには逆転する(様々な)パワーが十分に備わっていると体感する・・『逆転するパワー』というキーワードには、本当に様々なコノテーション(言外に含蓄される意味)が内包されているんだ・・

 ・・ところで、久しぶりの2ゴールだったわけだけれど、試合後の記者会見では、「ゴールを奪うことの最も重要なバックボーンは?」なんていう質問をフォルカー・フィンケにぶつけてみよう・・また、リードして迎えた最後の時間帯では、守りを固めるのではなく、しっかりと押し返すことでゲームをコントロールし、逆に「突き放しゴール」のチャンスも作り出した・・これもまた、レッズが継続的に発展していることを如実に証明する現象だった・・などなど・・

 そんなことをメモしていた、ちょうどそのとき、エスパルスが、ダイナミックで大きな展開から、逆サイドに空いたスペースへオーバーラップしていた児玉新にサイドチェンジ(ラストパス)が入り、彼が、見事な、本当に見事なボレーシュートで同点ゴールをブチ込んだ・・というわけです。フ〜〜

 「我々も三点目を奪うチャンスを作り出したけれど、最後の時間帯でのエスパルスの勢いがレベルを超えていたことも確かな事実だった・・最後の時間帯の展開だけをみれば、引き分けという結果が仕方のないものだったという見方ができるかもしれないな・・」

 フォルカー・フィンケが、冷静に、そんなことを言っていた。でもサ・・内容と結果がロジカルに一致しなければ悔しいでしょ? 攻守にわたって、あれほど素晴らしい組織サッカーを展開し、グラウンド上の現象をあらかた掌握していた(そして実際に何度もチャンスを作り出した!)にもかかわらず・・、それに、まさにロジカルな(理の当然という)素晴らしく爽快な逆転ドラマをほぼ完結させていたにもかかわらず、結局は引き分けに持ち込まれてしまったんだからネ。

 でも、記者会見場を出るフォルカー・フィンケの表情は、非常に穏やかなモノだったね。もちろん、あれほど長くブンデスリーガで生き延びた猛者にとっては、こんな結末は当たり前だろうし、彼自身は、いまのレッズのサッカーコンテンツに、ものすごい手応えを感じているはずだからね。

 手応えといったら、選手たちの方が、もっと強いモノを感じているのかもしれないね。別な言い方をすれば、本当の意味でサッカーを楽しめるようになった・・ということかな。そのあたりについて、レッズが展開する見事なサッカーをみながら、こんなメモにまとめていた・・

 ・・とにかく、素晴らしくクリエイティブに(決定的スペースをイメージした)仕掛けの「流れ」が組み立てられている・・人とボールが、相手の守備ブロックが振り回される(うまく対応できない)くらい素晴らしく動きつづける・・

 ・・フォルカー・フィンケの言う「コンビネーション・サッカー」・・その本質は、動きの優れた「量と質」をベースに、攻守にわたって、できる限り多く「数的に優位な状況」を演出しつづけるということ・・

 ・・そこでは(人とボールの)動きのリズム「も」重要な意味をもっていると思う・・忠実なパス&ムーブもそうだけれど、とにかくスペースへ動けば、かならずパスをもらえると「確信できること」こそが、いまのレッズの組織プレーを支えているといっても過言ではない・・

 ・・シンプルな「球離れ」こそが、その優れた「リズム」を支えている・・タテへパスを出せなくても、後ろへボールを動かすことで一度クッションを置き、次のタイミングで素早くタテのスペースへパスが送り込まれる・・そんな「イメージの連鎖」があるからこそ、彼らのバックパスや横パスは「逃げ」ではない・・『攻撃的なポゼッション!?』ってか〜〜!?・・フムフム・・

 ・・またそこでは、(優れた守備意識を絶対的なベースにした!!)組織コンビネーションがうまく機能しているからこそ、個のチカラを出し切れる(勝負ドリブルが、組織プレーとうまく噛み合う!)という見方もできる・・

 ・・ポンテが、エジミウソンが、原口元気が、山田直輝が、両サイドの山田暢久や細貝萌が、はたまた阿部勇樹が、後ろ髪を引かれることのない吹っ切れた勝負ドリブルを仕掛けていく・・それでも、次の組織パスプレーの「リズム」が狂うことがない・・それこそが、チーム全体が共有する「組織と個の優れたバランス・イメージ」・・

 ・・ところで、守備的ハーフコンビの阿部勇樹、鈴木啓太と、最終ラインのトゥーリオの三人・・基本的には鈴木啓太が「アンカー」的な役割を果たしているけれど、この三人については、守備ブロック中央ゾーンの『攻守にわたって素晴らしい機能性を魅せつづけるクリエイティブ・トライアングル』なんて命名しちゃおうかな・・あははっ・・

 ・・そんなクリエイティブサッカーのベースは、言わずと知れた「優れた守備意識」・・次の守備への「意志」に対する「相互信頼」があるからこそ、誰もが、決定的ゾーンへ仕掛けていける・・(トゥーリオの上がり=啓太への信頼)・・(阿部勇樹の上がり=山田直輝への信頼)・・(山田直輝の決定的ゾーンへのオーバーラップ=原口元気への信頼)etc.・・

 ・・ダイナミックな守備というテーマ・・誰もが汗かきの動きをいとわない・・だからこそ縦横無尽の「効果的カバーリング網」が構築され、それがうまく機能する・・だからこそ、次の攻撃に勢いが乗っていく(後ろ髪を引かれないサポートダイナミズム!)・・

 ・・パス&ムーブと三人目、四人目の(スペースを突いていく)人の動き・・その動きが、常にスペースをイメージしているからこそ、素早いリズムのボールの動き(ボールホルダーと次のパスレシーバーの『イメージ』)と連動しつづける・・

 ・・だからこそ(組織パスプレーと勝負ドリブルがうまく組み合わされて)決定的スペースを突いていく『頻度』も非常に高い・・いまの「J」のなかでは、その頻度はダントツではないか!?・・とにかく「組織と個のハイレベルなバランス」は、コーチにとって永遠のテーマなのだ・・

 ・・フ〜〜〜ッ!!

 あっと、もう一つ大事なことがあったっけ。それは、チーム内に、「出場できるプレーに対する明確な評価基準」が確立しつつあるというテーマ。要は、「こういうプレーをしなけりゃ監督は使ってくれない・・」ということが、チーム内に、前向きに浸透しつつあるということです。誰もが「それ」を明確にイメージし、意識しつづける・・だからこそ、チームが良い方向へ発展をつづける・・。フムフム・・

 それ以外にも、例えば中距離シュートなどといったテーマもあった。それにしても山田直輝の中距離シュートは見事の一言だった。まさに自身の努力で勝ち取った栄光!ってなところかな。

 いまはまだエコパで書いています。これから愛車のオートバイで出発し、牧ノ原サービスエリアでHPをアップする予定。そこには「公共の無線LAN」がはしっているんだとサ。また急いで帰っても渋滞に巻き込まれるのがオチだから、ゆっくりと食事でもしていこう・・。

 行きは、230キロの距離を一気に走ったけれど、やっぱり「昔」のようにはいかない。走っていて、身体がうまく言うことを聞いてくれないという「感覚」が襲ってきたのですよ。これは危ない。もうそろそろ「57歳」だから、やっぱり歳のことも考えなければ・・なんてネ。あははっ・・

 このゲーム以外の「J」も、余裕があればレポートするつもりです。でも「UCL」もあるしネ〜〜。とにかく帰ろうっと・・

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 



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