湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2010年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第2節(2010年3月13日、土曜日)
- マリノスの強さはホンモノだ・・でも、そのバックボーンは?・・(MvsB, 3-0)
- レビュー
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- 「実は、とても心配していたんですよ・・木村さんが、どんなチームを作るのかってネ・・でもフタを開けてみたら、とても魅力的で優れたサッカーを展開していると、感じ入った・・ハイレレベルな組織プレーに個人勝負もうまくミックスしている・・現役時代の木村和司のことをよく知っている私としては、あのプレー姿勢のキムラカズシが、どうしてこんな素晴らしい組織サッカーをリードできるのか(選手たちを、そのように導けるのか)なんて疑問に思ってしまうわけです・・」
ちょっとここで一息ついて・・「そこで質問ですが、川勝良一にしても、木村さんにしても、はたまたイビツァ・オシムにしても(実は、フェリックス・マガートのことも例示しようかなんて思っていました・・あははっ・・)、現役時代は天才といわれた(組織的な汗かきに怠惰な!)連中が、監督に就任した途端に、走れ、もっと守備をしろなどと言う・・それは、現役時代には、自分がまったく(ちょっと強調しすぎかも!?)やらなかったこと(汗かきプレー)だったわけです・・ということは、現役時代から、走ったり守備をしたりすることは、とても大事で、自分はそれをやっていないという意識(良心の呵責!?)があったということなんでしょうか・・ネ??」
そんなわたしの(例によって長〜い質問に対し)満面に笑みを浮かべながら木村和司監督が答えます。「おっしゃる通りだと思いますよ・・ワシも、現役時代は、30歳くらいになってから、もっと走らにゃイカンの〜〜と思っていたし、走ろうともしていたんですよ・・でも、走れなかった・・あそこまで行かなければと思っていても足が伸びなかった・・そんな悔しい経験が、いまの監督業の考え方の(基盤の)重要な部分になっていると思うのですよ・・」
そして一呼吸おいてから、「いや・・ホント・・サッカーは走るスポーツだから・・」と、記者会見場を和ませてくれるわけです。
私は、偶発的に、開幕の二試合を「マリノス連チャン」してしまったわけだけれど、その二回の記者会見で、木村和司に対する認識が、とてもポジティブに改まったモノです。
・・カズシは、とても優れた(実際的な・・選手の心を効果的にリードできる・・)パーソナリティーの持ち主かもしれない・・サッカーは、たしかに(ある意味)究極のロジックメカニズムを駆使するスポーツではあるけれど、でも逆に、不確実な要素が満載ということで、また、意志のポテンシャルが低く、チーム全体の攻守のプレーイメージが連動しなければ、どんなロジックだって機能しないという「究極の心理ゲーム」でもある・・だから、ギリギリの切羽詰まった状況では、チームリーダー(監督)のオーラで、選手たちが120パーセントのチカラを発揮してしまったり、逆に、パフォーマンスが奈落の底に落ち込んでしまったりする・・
・・ハナシは飛躍するけれど・・ワールドカップでのアルゼンチン代表・・彼らが、本当に切羽詰まった状況に追い込まれたとき、「大丈夫・・オマエたちは実力は世界一だ・・オレ達はアルゼンチンの代表なんだゾ・・自信と余裕をもってプレーすれば負けるはずがない・・」なんて、ディエゴ・マラドーナが演説をブッたら、チームの「意志」がポジティブな方向へ一変し、チームの士気が何倍にも増幅してしまうかもしれない・・そこでは、冷静でロジカルな指示よりも、より情緒的な雰囲気の盛り上げの方が効果を発揮するモノなのですよ・・何せ、究極の心理ゲームだからネ、サッカーは・・あははっ・・
・・ところで、前述した「オーラ」のことを、本場では「指先のフィーリング」なんて表現することもあるわけだけれど、木村和司監督の広島弁には(選手の心理をガッチリと掴み取ってしまう魅力的な言葉には)まさに「それ」が感じられた!?・・フムフム・・
記者会見では、増島みどりさんも、交替出場した狩野健太が決めた、スーパーキャノンシュートの三点目についてコメントを求めたのですが、それに対して木村和司監督は、またまた満面の笑みを浮かべながら、「ありゃ〜〜・・オレに対する怒りが込められていたね・・彼には、オマエはもっとできる・・俊輔がダメだったらオマエしかいないんだから・・一つのカラを破れれば次は世界だぞ・・なんて言っているんですがネ・・とにかく、あの凄いシュートは、私に対する怒りエネルギーがほとばしっていたと思っているんです・・それがいいんだナ・・」なんていうニュアンスのことを言っていた。いいネ・・
試合だけれど、まあ、マリノスがゲーム全編で、攻守にわたって(もちろん主体はディフェンスですよ!)ベルマーレを凌駕したというのが実際のところだったね。
反町監督が、局面でのボールをめぐるせめぎ合いで、どうも優位に立てない・・なんてニュアンスのことを言っていた。それはキーワード。それにハーフタイムには、「もっと走らなければゴールを奪えるはずがない・・」なんてことも言っていたらしい。
たしかに、局面でのボールをめぐるせめぎ合いで、ベルマーレはやられていた。これは確かな事実でしょう。それが、「31本対6本」という圧倒的なシュート数の差として現れている。その現象のバックボーンの大きなところは、個人のチカラの差ということだろうね。まあ、戦術的な理解と実行力については、そんなに大きな差があるとは思えないから、走りの量と質の差・・とか、局面での競り合いでのパワーとテクニック、そして「意志のチカラ」の差・・といった要素かな。
そのなかでは、もちろん「意志のチカラの差」が、もっとも重要な意味をもっていますよ。何せベルマーレは、前半、後半ともに、立ち上がりの3-5分間は、ゲームを支配していたからね。でも、そこから、ゲーム展開が大きく逆流していった。
それは、ベルマーレのペースが落ちたから?・・それとも、マリノスがペースを上げたから?・・。まあ、後者だろうね。やはり、個のチカラの差を充填するためには、少なくても、相手よりもより多く動き、攻守にわたって「究極の、戦術的なイメージ連鎖」を達成しなければならないからね。
そのためには、チームの全体的なイメージが高みで「シンクロ」しつづけなければならない。「今日はマリノスに叩きのめされた・・顔を洗って出直してこい・・っちゅうことでしょう・・」。例によっての『ソリマチ節』だけれど、彼らの場合は、常に白日の下にさらされる「課題」を一つひとつツブしながら「昇っていく」しかないわけだからネ。心理マネージメントとも含むチーム戦術マネージメントの方向性は、とても明快だと思いますよ。
これから反町康治監督が、どのようにチームを深化・発展させていくか、とても興味が湧きます。
あっと・・中村俊輔。とても良かったですよ。 俊輔はチームプレイヤー。だからこそ、インテグレート(チームへの組み込み)作業もスムーズにいったということなんだろうね。中村俊輔も、ボールが「戻ってくる」ことを分かっているから、シンプルな組み立てパスを回せる。だから、人とボールがしっかりと動きつづける。
魔法のボールコントロールから、シンプルにつないでパス&ムーブ。そこでは、山瀬功治とのパス交換で、 俊輔の方が「ゆずる」場面も多かった。チーム内の「使い・使われるメカニズム」の再確認といったところか。山瀬功治が、中村俊輔の「ためにも」ボールがないところで走るモティベーションのバックボーンが見えてくる。
俊輔は、守備にもしっかりと入るからね。もちろん、汗かきディフェンスは多くないけれど、何度も、スライディングでボールを奪い返したり、例によっての「スリ」のようにボールをかすめ取ってしまう「テクニカルなボール奪取」も魅せる。
中村俊輔は、とてもうまくマリノスに「戻ってきた」と言えるだろうね。そんなプロセスでも、木村和司監督のポジティブな「マインド」が効果的に機能していたりして。フムフム・・
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