湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2010年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第2節(2010年3月14日、日曜日)
- ナンカ、新刊のことも含め、またまた長いコラムになっちゃった・・(RvsFCT, 1-0)
- レビュー
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- 「フォルカーさんも、今日の出来について、そんなに満足していないように見えるのですが・・それは、私も同様なのですよ・・勝つには勝ったけれど、何か、不満・・でも、それが何なのか、よく分からない・・そんな私の疑問を解決していただけませんか?」
フォルカー・フィンケ監督の会見の冒頭で、そんな質問をぶつけてみました。ちょっと口元が緩んだフォルカー・フィンケ。
「闘う意志のレベルは十分だったと思う・・ただ、ボールを奪い返した後の切り替えやプレーテンポのコントロールとか、ゴールへ向かうときのプレーなどが、ちょっと不満・・ただ、前半われわれが優れたサッカーを展開したことを忘れてはいけない・・またフリーキックで絶対的なゴールチャンスも作り出した・・まあ、たしかに後半には改善するポイントは見えていたが・・」
どうもフォルカー・フィンケのコメントは、ロジカルすぎて、つまらネ〜〜ってな印象の方が強くなってしまう。もう少し「くだけても」いいんじゃないですかネ〜、フォルカーさん。たしかに、まだまだ悪意のメディアもいるんだろうけれど、全体的には、フォルカー・フィンケに対する評価はポジティブなベクトル上にあるわけだし、実際に良い仕事をしているのだから、もっと余裕をもってもいいんじゃないですか〜!?
・・なんて言っても、こちらは、日常からベッタリ取材をしているわけじゃないし、あまり余計なコトは書かない方がいいかもネ・・。今度(新刊の校了が過ぎたら)番記者の「島崎英純さん」にハナシを聞くことにしよう。彼は、レッズとスポナビに請われ、これから週一のペースで、レッズのコラムをスポナビ上で発表することになったのだそうです。優秀な記者だから、面白い記事になるはず。是非、読んでみましょう。
ハナシが横道にそれてしまったけれど、そういえば記者会見で、開幕のアントラーズ戦とこの試合について、ワントップだ、ツートップだ・・などといった質問が飛んだときのことです。ちょっと構えたフォルカー・フィンケが、「そうそう・・その質問を待ってたんだよ・・日本語は読めないけれど、前節ではワントップだったという報道が為されたと聞いたんだ・・そして今日はエジとタツヤのツートップ・・でも決して、そういうわけじゃなかった・・」と切り出したのです。
要は、フォルカー・フィンケは、ワントップだツートップだなんていう「カタチの議論」なんて意味がないということが言いたかったんでしょう。もちろん、誰もが、レッズのトップには常にエジミウソンが張っていることは知っているしネ。
「レッズの場合は、四人の攻撃陣が設定されている・・ただそれだけのことだ・・もちろん状況によって、そんな基本ポジションや役割も変化することもある・・そして守備に入ったら、最前線の一人を除いて全員がディフェンスに入る・・ただそれだけのことなんだよ・・」ってなニュアンスのことを言っていた。これは、ちょっとくだけた調子の、とても面白いコメントだったネ。そうそう・・そんな感じでハナシをすりゃ〜いいんじゃないですか、フォルカーさん・・あははっ・・
ワントップ、ツートップ、スリートップ、ゼロトップ・・などなど。それは、システムと同じように「カタチ」のハナシだからね。「それ」が、プレーイメージを支配してしまったら、完璧に型にはまり込んだステレオタイプのサッカーになっちゃう。そして、またまた「トライアングルを作るイメージでプレーすることが大事だ・・」なんていうバカげた論調が盛り上がっていく。
選手は、トライアングルを作ろうとしてプレーしているわけじゃないんですよ。要は、ボールがないところでの動きを活発化するなかで、しっかりと人とボールを動かしながら、スペースを攻略しようとしている「だけ」なのです。それがうまくいったら、結果としてトライアングルが(自然と)出来ているっちゅうだけのハナシなんです・・あははっ・・
ところで、わたしの新刊。その内容も、「カタチの議論」はもう止めにしよう・・もっと、サッカーの根源的なメカニズムを前提にサッカー談義に花咲かせようゼ・・そうすれば、型にはまった(ステレオタイプの)システム論が、いかに無意味なモノかって分かるはず・・そろそろ、数字の羅列などで戦術を語り合うのは止めにしませんか・・なんていうのが骨子なんです。それに、日本代表や世界トップサッカーの、戦術エッセンスが満載の「瞬間プレー」を切り取った『5秒間のドラマ』を、イラスト入りで多数とりあげたり、最後は、例によって監督論で締めたりしました。
要は、わたしの代表作である「闘うサッカー理論(三交社)」「サッカー監督という仕事(新潮社)」「サッカーを観る技術・5秒間のドラマ(新潮社)」を合体させ、それに(私もどんどん進化しているのだけれど、そのプロセスで発見したり考案した)新しい発想やコンセプトを散りばめた「湯浅の代表作2010年バージョン」ってな感じですかネ。タイトルは「サッカー戦術の仕組み」・・4月の半ばには上梓される予定です・・あっ・・スミマセン・・宣伝しちゃった・・とにかく、出版の日が決まったら、また告知しますので・・あははっ・・
ということで、この試合でのわたしの不満。その骨子も、まさに組織プレーの内容にあったというわけです。
どうも、人とボールの動きが「スムーズじゃない」と感じられたのです。アントラーズ戦では、アチラの守備がとても堅かったから、どうしても攻めが詰まり気味になってしまった(アントラーズの守備ブロックに、そのようにドライブされてしまった!?)。それはよく分かる。でも、この東京戦でも、なんか・・こう・・攻めのリズムが「加速」していかないと感じられたのです。
エジミウソン、田中達也、柏木陽介、はたまた細貝萌や阿部勇樹といった面々は、相変わらず、攻守にわたって「ダイナミック」に仕事を探しつづけ、そして忠実に(そして全力で)自分のイメージを実行に移していた・・と、思う・・部分的にではあるけれど・・
それに対して、ポンテ・・。やっぱり、彼のパフォーマンスが(不可逆的に!?)落ちつづけているということが、攻めのリズムが加速していかない大きな要因なんだろうね。そこで、一旦ボールの動きが落ち着き「過ぎて」しまうのは確かな事実だからね(ボールの動きが停滞してしまう!)。
だから組織パスプレーが加速していかない。もちろん「効果的なタメ」だったらいいですよ。次に、溜められたエネルギーが爆発するわけだからね。でもポンテの場合、もう自分にスピードやスタミナがないことを知っているから、それを前提にして攻めのリズムを「コントロール」しようとするわけです。もちろん、周りもポンテに「まだ」遠慮しているから(!?)そのペースに乗って足が止まり気味になってしまう。まあ、ポンテも、部分的には全盛期を彷彿させるプレーを魅せることはあるけれど、全体的なパフォーマンスの内容では、やはりブレーキ要素の方が大きい・・フムフム・・
そんな「微妙な現象」にフラストレーションが溜まりつづけていたということだったんですかネ、だから、FC東京の右サイドからのクロスに、逆サイドから飛び込んだFC東京の選手のマークを外された平川忠亮に対して「何やってんだよ〜」なんて文句が口をついてしまう。
また同じ平川忠亮が、エジミウソンとのワンツーにトライしようとしたとき、最初のワンのパスが短かすぎて相手にカットされてしまったり、センターバックに入った山田暢久が(たしかに、フォルカー・フィンケが言うように、全体的には、アントラーズ戦とは見違えるほどステディーなプレーが出来ていたけれど・・)何度もイージーなパスミスを冒したり、坪井慶介が、平山相太のチェイスに気付かずにボールを奪われてしまったり・・などといった無様なプレーに、何度も(ドイツ語の)強烈な罵倒発言が出てしまうのですよ。ホント、フラストレーションが溜まった。
とはいっても、たしかに前半は、時間の経過とともに、攻めの内容がアップしていったことも確かな事実だった。だからこそ逆に、「あのネガティブ要因」が改善されれば・・なんていう思いを強くしたというわけです。まあ、新加入選手やケガ人が復帰してくれば、状況はガラリと変わるだろうから、あまり心配はしていないけれどネ。
とにかく、昨シーズン前半のダイナミックサッカーを、はやく取り戻して欲しいと思っている筆者なのです。その「ダイナミズム」が、安定的に表現できるようになったら、夏場の厳しい環境でも、相手も含む「全体的なゲームペースがダウンしていく」なかで、レッズの「ダイナミズム」だけは、少なくとも、相手を凌駕するくらいの高いレベルに維持できるというわけです。
よく言うじゃないですか、「あんなハイペースサッカーなんて、あの自然環境じゃ絶対に無理・・」とか、「あれじゃ、絶対に90分もたない・・」とかネ。いやいや、違うんですよ。「その評価」は、決して絶対的なモノじゃなく、あくまでも『相対的なモノ』なのです。要は、相手よりも多く走り、相手よりも、より多く数的に優位なカタチを作り出せばいいということです。
厳しい気候条件になったら、相手の運動量も落ちますよね。でも、こちらのチームの場合は、それでも、少なくとも「相手よりも多く走る」ことで、攻守にわたって、より有利にゲームを進めていけるというわけです。
このことは、もちろん岡田ジャパンにも当てはまるし、同じような「究極の組織プレー」を志向するフォルカー・フィンケ率いるレッズにも当てはまる(特に、昨シーズンは失敗した夏場にネ)。
今日は、こんなところですかネ。ではまた・・
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