湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2010年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第4節(2010年3月27日、土曜日)
- セルヒオは良いプレーを展開したのに残念・・レッズのサッカーは良いベクトルに乗りはじめた・・(CvsR, 2-3)
- レビュー
-
- この試合は、ビデオ観戦ということで、簡潔にまとめるつもりでラップトップを引き寄せました・・でも実際はどうなるか・・あははっ・・
まず、前回のコラムで厳しく糾弾したセルヒオ・エスクデロ。ケガで交替してしまったけれど、そのことが、本当に、本当に、残念で仕方ありませんでした。そして思っていた・・
・・セルヒオがこの試合で魅せた、攻守にわたる「積極プレーマインド」を、もっともっと体感しつづけたかった・・「あの」セルヒオが、こんなに「頻度高く」攻守にわたって、効果的な仕事を探し出せるのか・・ちょっと感慨深いモノがあるな〜〜・・まあ、聞くところによると、調子がいいということだったから、私が「彼の変身」を知らなかっただけかもしれないけれど・・とにかく、私「も」セルヒオの「覚醒」を明確に感じることができた・・ということは、この数試合では「意識と意志」が高みで安定していなかったということか・・とにかく、この試合でのケガが大事に至らなければいいけれど・・
私もサッカーコーチですからね、何といっても、「才能の覚醒」という現象ほどエキサイティングな出来事はないのですよ。そう・・、この試合でのセルヒオは、攻守にわたって、とても素敵なプレーを魅せつづけたのです。まあ、とはいっても、まだまだ「組み立てでのシンプル・プレー&パス・ムーブ」や「忠実な汗かきディフェンス」、はたまた「実際のボール奪取勝負のコンテンツ」などなどといった課題も多いけれど、とにかく、ブレイクスルーの可能性だけでも明確に感じることができて、本当にハッピーだった筆者でした。
それと、もう一つ。前節の後半にセルヒオを送り込んだフォルカー・フィンケ監督というテーマ。
絶好調の田中達也を下げての交替だからね、その後の「サッカー内容の落差」を肌で感じない者はいなかったに違いない。セルヒオが、攻守にわたり、例によって「様子見」になってしまう状況が連続したことで、レッズのサッカーが(人とボールの動きが)スピードダウンしてしまったのですよ。またボールの動きも、タテ方向ではなく、横方向への逃げパスばかりが目立つようになっていく。フ〜〜・・
たぶん試合後には、そのプレーをセルヒオに見せ、繰り返し、そのプレーの本質的な意味合いを話し合ったに違いないと思うわけです。そう・・イメージトレーニング。
たしかに「考えて・・走る・・」のだけれど、考えが遅かったり、なるべく効率的に(要は、楽をして)プレーしようとする態度の場合、単に「次元の低い様子見」なってしまう。だからこそ、セルヒオのような選手は、まず「スペースへ向かって動き出す」ことが大事。まず自分がアクションを起こすというイメージを徹底するのです。それがあれば、必ず、チームの「動きのリズム」に乗っていけるし、その発想とアクションがもっと発展すれば、自分の「動き」がチーム全体の動きを誘発する(リードする)なんていう流れだって演出できるかもしれない。
そうすれば、サッカーが、限りなく楽しいものになるはずです。これまでのセルヒオは、限定的な効果しか期待できない「マスターベーション勝負ドリブル」だけが生き甲斐だったんだろうけれど、「あのプレー意志」さえ維持していけば、互いに「使い・使われるメカニズム」に、本当の意味で「乗っていく」ことにも深い悦びを持てるようになるはずです。
そして、前節のプレー内容から、ちょっと落ち込んでいたに違いない(!?)セルヒオに、正しい心理マネージメントを施し(効果的なイメージトレーニングを課し!)そして、次の試合で(要はこの試合で)再び先発出場というチャンスを与えたフォルカー・フィンケ監督。確かな「指先のフィーリング」を感じるネ。まあ、彼に言わせれば、ロジカルな対処だった・・ということになるんだろうけれどサ・・あははっ。
ちょっと、セルヒオが秘める「天才」への思い入れがつのり「過ぎて」しまったかもしれない筆者でした。
次のテーマは、柏木陽介と阿部勇樹の守備的ハーフコンビ。この試合での彼らは、まさに「ダブルボランチ」という賞賛の呼称が相応しい活躍だった。
わたしは、ブラジルに敬意を表す意味も含めて、「ボランチ」という表現は、特定の、優れたプレー内容に対してしか使わないようにしてきました。だから、代わりに、守備的ハーフとかセンターハーフといった表現を使っているわけです。何せ「ボランチ」って、英語の「ハンドル」という意味だからね。チームの操縦桿・・。やっぱり、簡単に、そんな「賞賛の呼称」を与えられるわけがない。でも、この試合での阿部勇樹と柏木陽介は・・
良かったですよ・・ホントに・・。もちろん、相手が強くなって、チーム全体として守備に追われるようになったら、特に足の遅い柏木陽介が持ちこたえられるかどうかは疑問だけれどネ。
全体的な「機能性」が良かったバックボーンには、彼らの自身のプレーだけではなく、両サイドの中盤パートナーである、ポンテとセルヒオ(原口元気)とのディフェンス連係もありました。阿部と柏木がタテへ抜け出していけば、もしポンテやセルヒオが、その流れに乗り遅れた場合(または彼らが阿部や柏木をタテへ送り出した場合=タテのポジションチェンジ)、彼らが守備的ハーフとして(決してぬるま湯ではない)十分な機能性を魅せていたからね。
とにかく、この試合では、柏木と阿部で校正するダブルボランチの、攻守にわたる機能性が素晴らしかったからこそ、レッズの攻撃も、うまく機能したということです。別な表現をすれば、三人目、四人目の「相手ディフェンスにとって消えた選手」の最終勝負シーンへの飛び出しが、いかにチャンスメイクにとって効果的かということだけれど、逆から見たら、そんな後方からのサポートが「薄い」場合、仕掛けに変化を付けることなど望むべくもないということも言える。もちろん、セルヒオや田中達也、はたまた梅崎司といったドリブラーが、ブチ切れた活躍を魅せればハナシは別だけれど・・。まあ、サッカーは、常に、様々な「要素」が表裏一体で「リンクしている」ということです。
レッズのサッカーだけれど、全体としては、徐々に良くなっている(先シーズン前半のサッカーに近づいている)という印象が強い。人とボールが動きつづけるシンプルな組織プレーがうまく機能しているからこそ、最終勝負シーンでの個人勝負にも、最高のチャンスを演出できる。要は、相手守備のスペースをうまく攻略できているということだけれど、選手も、そのことをしっかりと体感しているはずです。
最後に原口元気。やっと彼も、本物のコンテンダー(競争相手)が出てきたことで、危機感一杯のプレーをするようになったネ。要は、攻守にわたって、しっかりと汗かきプレーにも精を出すようになったということだけれど、そんなプロセスを経て大人(ホンモノの個人事業主)になっていくということか・・。
あっと・・原口元気のコンテンダーって、もちろんセルヒオでありサヌーであり、梅崎司であり・・であり・・だよ。もちろん彼らは、「どんなサッカーを目ざし・・そこで、どんなプレーをやればいいのか・・」という明確なイメージを持っているから、そこで展開される「競争環境」も、とてもポジティブな効果的なモノになる。そんなところにも、フォルカー・フィンケの「ストロング・ハンド」を感じるわけです。
さて、レッズが、本格的に始動しはじめた・・かな・・!!!???
[トップページ ]
[湯浅健二です。 ]
[トピックス(New)]
[Jデータベース ] [
Jワンポイント ]
[海外情報
]