湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2010年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第7節(2010年4月18日、日曜日)
- 「不満足」なレッズは、これからも発展をつづける!?・・(RvsFR, 3-0)
- レビュー
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- 「我々は(理想イメージを目指して!?)統一された方向へ成長していかなければならない・・そこでは、優れたコミュニケーションによって、互いの信頼関係がより深いモノへと発展していくわけだが、それこそが、成長へ向けた、とても有意義な心理ベースとなる・・選手は、一人ひとりが(攻守にわたって)主体的に考え、次に何を為すのがベストかを考えつづけなければならないし、それを(そこで描写したベストプレーイメージを!)しっかりと(勇気をもって徹底的に!?)実行していかなければならない・・」
フォルカー・フィンケ監督のコメントのニュアンスをまとめたけれど、それは、私のこんな質問に対するモノでした。「先制した二つのゴールや、パーに当たった柏木陽介のシュートも含め、この試合では、5-6本、強い意志をぶつけるような中距離シュートが見られた・・それはフォルカーさんの意図するところだと思うが・・?」
もちろん、いつも書いているように、私が質問するときは、監督さんに発言の機会を提供するという意図も込められていますよ、でもネ〜〜・・あははっ。もちろん、このコメントの後半のパートは、「主体的に考えて走る(勇気をもって実行する!)・・」というニュアンスだから、ある意味、わたしの質問の答えにはなっているけれどネ・・。
まあ、ことほど左様に、フォルカー・フィンケとのやり取りは、(素敵に!?)哲学的なモノへと発展していくことが多いということが言いたかったわけです。
試合内容だけれど、わたしは、前半の25分を過ぎたあたりから(まだ、0対0という雰囲気の!?)通常の緊迫した攻防が見られるようになったと思っています(要は、そこらあたりから、両チームの実質的な実力を測り、それらを比べることが出来るようになった・・)。
後半は、フロンターレの高畠勉監督も勝負を懸け、中村憲剛とヴィトール・ジュニオールを、先発だった田坂祐介と黒津勝に代えてグラウンドに送り出したわけですが、わたしは(上記したように)前半25分過ぎあたりから試合終了まで両チームが魅せつづけた、エキサイティングでダイナミックな攻防の「内容」から、やはりレッズの方が、「チームの地力」という視点で、(微妙に)一日の長ありと感じていたのですよ。
「偶発的な二つのゴールも含め、実際にグラウンド上で起きた現象は別にして、純粋に、両チームの地力を比べた場合、どちらの方が上だと思いますか?」
そんな私の質問に、フロンターレの高畠勉監督は、迷わず、毅然として、「それは・・フロンターレの方が上だと思っています・・上です・・」と答えていた。フムフム・・
ちょっと分かり難い文章になってしまった。とにかく、両チームのサッカーの「質」を比べるのは、前半25分すぎあたりからタイムアップまでのグラウンド上の現象を対象にするのが妥当だということが言いたかった。何せ、あの立ち上がりの二つのスーパーゴールは、あまりにもセンセーショナルだったからね。そんな「非日常の現象」が起きたときには、物理的&戦術的なモノだけじゃなく、心理・精神的なファクターも含め、様々な意味合いで「バランスが崩れる」ものなんですよ。
ということで、その後の(前半25分をすぎたあたりまでの)レッズのサッカーも、ちょっとバランスを欠いたモノになったというのが私の見立て。もちろんフロンターレが、まさに吹っ切れたマインドで前へ攻め上がってくることは当然の成り行きだった。対するレッズ守備ブロックは、そんなフロンターレの攻勢を、(心理的な安定感やギリギリの意志のパワーを欠いたことで!?)しっかりと受け止められないでいたのです。
そして、相手の攻めをコントロールするのではなく、時々「振り回され」てスペースを活用され、そこからチャンスを作り出されるといったネガティブ現象の方が目立つような展開になってしまう。
たしかに、素晴らしい個の才能も含め、本当の意味での「優れた総合力」を秘めるフロンターレだから、彼らが(一丸となって)吹っ切れたリスクチャレンジをブチかましてきたら、そうそう簡単に、その勢いをコントロールできないのは自明の理(フォルカー・フィンケも、そう言っていた・・)。
とはいっても、やっぱり「ちょっと崩されすぎ」という印象はぬぐえなかった。後でビデオで確認するけれど、私の目には、チェイス&チェックや、その周りでチームメイトが展開する、インターセプト狙いや、相手トラップの瞬間を狙ったアタックアクションなど、守備プレーの内容が、どうも「ちょっと甘すぎる」と映っていたのです。
そこでの私は、「何故もっと素早く、激しくチェイスしないのか・・次のパスを狙う動きも緩慢だぞ〜・・もっと阿部勇樹や細貝萌がリーダーシップを取って、仲間を叱咤しなければダメだ〜・・」などなど、ちょっとリキが入っていた。レッズ選手たちのマインドが、二点をリードしたことで、明らかに「緩く」なっていたと感じられたのですよ。
「もちろん我々は、まだまだ多くの課題をクリアしていかなければならない・・」
フォルカー・フィンケの弁だけれど、まさに、そういうことだね。満足してしまったら、「そこ」で進歩が止まってしまうわけだから・・。
ところで「サヌ」。とても魅力的なプレーを展開する優れた組織プレイヤーです。1.FCケルンにいたということは、私が(当時ケルンの監督だった)クリストフ・ダウムを尋ねたときにも(そのときの対談コラムは、こちら・・)そこでプレーしていたんだよね・・きっと。今度、クリストフと連絡をとったときに聞いてみよう。
とにかく、優秀な選手ですよ。ただ、まだまだ、チームメイトとの関係がスムーズじゃない。フォルカー・フィンケが言う「コミュニケーション基盤の信頼関係」が、まだ熟成されていないということなんだろうネ。
要は、(特に前半)何度もオーバーラップするチャンスがあったのに(実際にタテのスペースへ全力フリーランニングを仕掛けていったにもかかわらず)そこへパスが出されることがなかったのですよ。彼は、パスを「呼んで」いたのだろうか??
後半の25分あたりから、何度か、本当に魅力的で危険なタテへの勝負プレーを魅せてくれた。とても優秀な選手ですよ。でもそのときは、自分でボールを奪い返し、そのまま突破ドリブルを仕掛けていったという状況だった。それ以外の、ボールのないところでのフリーランニング・オーバーラップ状況では、例外なく、タテパスをもらえなかった。
「彼は嫌われているのかい?」。思わず、ライターの島崎英純さんを探して質問したくなった。でも・・まあ・・そんなことはないでしょ・・単に、タイミングとシチュエーションが合わなかっただけ!?・・まあ、これからも注視しましょう・・
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ところで、三年ぶりに新刊を上梓しました。4月14日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定したらしい。フムフム・・。タイトルは『サッカー戦術の仕組み』。池田書店です。この新刊については「こちら」をご参照ください。
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