湯浅健二の「J」ワンポイント


2010年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第8節(2010年4月24日、土曜日)

 

2010_「J1」_第8節・・レッズを術中にはめたジュビロの粘りディフェンスに拍手!・・・・(RvsJU, 0-1)・・(2010年4月24日、土曜日)

 

レビュー
 
 「とても集中した、粘り強いプレーが出来ていたと思う・・チームが一つになって守り切れたことが勝因だった・・」

 会見の冒頭で、ジュビロ柳下正明監督が、そんなニュアンスのことを言った。それで、こんなニュアンスの質問をぶつけてみた。

 「たしかにジュビロは粘り強い守備を展開した・・でも、柳下さんが、そのコメントの背景でイメージしていたのは、一点をリードした後半の戦い方がメインだったと思う・・ただ前半は、おっしゃるように粘り強い守備はそのままに、攻めでも、効果的なカウンターからしっかりとチャンスを作り出していた・・わたしは、前半のサッカー内容こそが、柳下さんがイメージした戦い方だったと思うが・・?」

 「いや・・立ち上がりの15分くらいは、かなり縮こまっていたと思う・・でも、それ以降は、おっしゃるように、徐々に吹っ切れた攻めを展開できるようになった・・カウンターにしても、ある程度のゴールの可能性を秘めたシュートを打つところまでいけた・・その意味では、たしかに前半の方が・・とは思うが、全体としては、我々がイメージする攻めが出来なかったことも確かな事実だった・・」

 フムフム・・。まあ確かに、この試合でのもっとも重要なポイントは、冒頭の柳下正明監督のコメントのように、ジュビロが、とても「粘り強い」ディフェンスを展開したということだね。

 粘り強いディフェンス・・。その意味合いは、それぞれの選手が、自分たちなりに(状況に応じた!)仕事を効果的に探し出せていた(しっかりと考え、実行できていた!)ということです。そして、(一人もサボることのない)そんな一つ一つの守備プレーが、素晴らしく「有機的」に「連鎖」しつづけていたということです。

 ・・相手ボールホルダー(次のパスレシーバー)に対する忠実でダイナミックな「チェイス&チェック」・・その守備の起点をベースに、周りの味方が、一人の例外なく、積極的に守備アクションに入る・・インターセプトや相手トラップの瞬間を狙ったアタック・・ボールから離れたところで仕掛けられる決定的フリーランニングに対する忠実なマーキング・・一人が「行った」後を受けた、ポジショニングの「スライド」からのカバーリング・・もちろん、レッズのボールの動きの停滞に狙いを定めた強力プレッシング守備・・などなど。

 たしかに、この試合でのジュビロ守備は(特に後半!)とても素晴らしい「忠実な粘り」を魅せつづけた。だから、ゲームを支配しつづけるレッズも、簡単にはゴールに近づくことは出来なかった。とはいっても、レッズが作り出したチャンス自体が、とてもゴールに「近い」モノだったことも確かな事実だった。

 前半のエジミウソンのミドルシュート(バーを直撃!)、後半のセットプレーからのエジミウソンのヘディングシュート(ポストを直撃)、後半にサヌが放った中距離シュートなどなど(・・それだけではなく田中達也や高原直泰、はたまた交替出場した原口元気のドリブル中距離シュートもあった)。タラレバで言えば、もちろん、結果が逆になっていてもおかしくない試合だったけれど・・。

 ところで、前半に(たしかに柳下監督が言うように、15分を過ぎたあたりから)ジュビロが繰り出しはじめたカウンター攻撃だけれど、そのほとんどに、とても「危険なニオイ」がプンプンしていたというテーマ。

 たしかに、フォルカー・フィンケが言うように、レッズのセンターバックコンビ(山田暢久と坪井慶介)はとても安定していたと思う。でも、わたしは(一緒に観戦していた、テレビ埼玉の方も!)サヌが、繰り返しボールウォッチャーになってしまうシーンを目撃していた。

 何度、「あ〜〜っ!・・サヌ!!・・オマエの背後だよ・・西紀寛がフリーで走り込もうとしているじゃないか・・」なんて声が出たことか。そして実際に、二度ほど、完璧に背後スペースに走り込まれ、そこにパスを通されて決定的シュートを打たれてしまった。山岸〜〜っ・・サンキュー!!

 サヌはサイドバックが本職じゃないんだろうね。本職だったら、あんなポジショニングミスや、自分の背後に対する「注意」が散漫になることはないと思いますよ。もちろん、全般的なプレーは、攻撃でも、守備でも「Jリーグでプレーする外国選手の水準を超えている」のは確かな事実。でも、この試合のように、「ボールがないところでの不安定な守備コンテンツ」をみせつけられちゃ、ちょっと不安の方が先行するよね。

 交替出場した宇賀神友弥の方が、よほど安心して観ていられた。繰り返すけれど、サヌが、とても能力が高く、魅力的なプレイヤーであることは疑いのない事実だけれど、サイドバックでプレーするならば、やはり、もっと「イメージトレーニング」を積まなければいけないと思う。「あの集中切れの守備プレー」は、確実に、脳裏に「勝負シーンのイメージ」が描写されていなかったことの証左だったわけだからネ。

 サヌは、レッズにとって、とても大事なプレイヤーです。それは疑いのない事実。でも、あまり「目立たないところでの決定的なミス」が重なるようだったら、彼の本来の「能力」を活かせない。まあ、そんなところも、フォルカー・フィンケ監督の「ウデ」の見せ所ではあるけれど・・

 この試合は、レッズが、見事にジュビロの術中にはまったというゲームに(結果として!?)なってしまったわけだけれど、これからレッズは、より「リキ」を入れて、「相手の強化ディフェンスをいかに崩してシュートまでいくのか・・」というテーマに取り組んでいかなければならないよね。

 それにしても、中距離シュートが少なすぎるし、エイヤ!の(放り込み!?)アーリークロスも見られない(まあ・・たしかにアバウト感覚のクロスボールは飛んでいたけれど・・フムフム)。要は、仕掛けの変化をより効果的に演出することで相手守備ブロックのバランス組織を崩していく・・というテーマのことだけれど、このゲームの終盤に原口元気が魅せた「元気なミドルシュート・チャレンジ」に、希望の光を見ていた筆者でした。

これから、テレビ埼玉の「レッズナビ」があるので、今日は、こんなところです。

============

 お知らせですが、きたる5月3日の月曜日。NPO法人横浜スポーツコミュニケーションズ(ヨココム)が主催する「湯浅健二の独演会」が、昨年につづいて開催されることになりました。テーマは「岡田ジャパン」・・まあ、「日本人はなぜシュートを打たないのか?」っちゅうテーマにも入っていかざるを得ない!? さて・・。詳しくは「こちら」を参照してください。

=============

 ところで、三年ぶりに新刊を上梓しました。4月14日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定したらしい。フムフム・・。タイトルは『サッカー戦術の仕組み』。池田書店です。この新刊については「こちら」をご参照ください。

 



[トップページ ] [湯浅健二です。 ] [トピックス(New)]
[Jデータベース ] [ Jワンポイント ] [海外情報 ]