湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2010年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第9節(2010年5月1日、土曜日)
- 二試合を一気にレポート・・あ〜、疲れた・・(MvsJU, 1-0)(FRvsB, 4-2)
- レビュー
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- やっぱり疲れるネ〜〜、連チャン観戦。もちろん、物理的なことだけじゃなく・・ネ。
帰宅したあと、錯綜したアイデアを処理してくれた脳細胞を解きほぐすようにリラックスし、ひとしきり、ある本に入り込みました。サッカーとはまったく関係のない小説。でも、発想によっては、サッカーのエッセンスを至る処に見いだせる。フムフム・・なんてコトを考えながらネ。それから、ゆっくりと夕食を済ませたわけだけれど、気付いたら、もう2100PMを回っていた。フ〜・・
読書と夕食で精神・心理状態をリフレッシュしたつもりだったけれど、それでも、まだ書きはじめるためのモティベーション(やる気)が高揚していかない。今日はコラムアップを止めようかな・・。そんなことまで考えたけれど、でも・・まあ、やはり鉄は熱いうちに打て・・と、無理矢理キーボードに向かった次第でした。
そんな体たらくだったから、とにかく気張らずに書くしかないと、脳細胞が処理してくれたポイントを簡単に整理するつもりで、カタカタといった鈍重なリズムでキーボードを叩きはじめました。とにかく、まずマリノス対ジュビロからいきましょう・・フ〜〜・・。
この試合のジュビロだけれど、前節のレッズ戦と同じように、とても堅牢な守備ブロックを敷きました。もちろん、ジュビロ柳下正明監督は、安定した守備ブロックをベースに、ココゾ!のカウンターを仕掛けていく・・というだけではなく、チーム全体が押し上げていくような組み立てプロセスでは、しっかりとした(人数を掛けた!?)ポゼッションから、マリノス守備ブロックを崩してスペースを突いていくというイメージなんでしょう。でも実際には、前節レッズ戦と同様に、相手にゲームを支配されるなかで、一発カウンター「だけ」を武器に闘っていた。
ところが、そのサッカーが、殊の外うまく機能してしまうのですよ。前節のジュビロ守備は、強力なレッズの攻撃に、何度か、バーやポストを直撃する惜しいシュートをブチかまされるといった「タラレバのドラマ」を演出されてしまったけれど、この試合でのマリノスは、ほとんどチャンスらしいチャンスを作り出せないのですよ。
逆にジュビロは、前半の28分に、まったくフリーになったイ・グノが、マリノスGKと1対1の状況で惜しいシュートを放つといった完璧なチャンスを作り出した。それは、カウンターの流れのなかで前田遼一がしっかりとボールをキープし、逆サイドで抜け出したイ・グノへ、素晴らしい(サイドチェンジ気味の)ロビングスルーパスを通したことで生まれた決定機。そのパスは、美しい軌跡を描いて相手ディフェンダーのアタマを正確に越えていった。
それは、両チームあわせて、最初のチャンスらしいチャンスだったのですが、もしそのカウンターゴールが成就していレバ・・。このゲームは、「・・もしそのシュートがが決まっていタラ、後は推して知るべし・・」なんていう展開になっていたかもしれない。それほど、この試合でのジュビロ守備ブロックは充実したパフォーマンスを魅せていたのです。
そんなゲーム展開だったから、全般的にゲームを支配していたマリノスにしても、カウンター気味の仕掛けやセットプレーから「しか」チャンスらしいチャンスを作り出せないのも道理だった。
例えば、中村俊輔が中盤でボールを奪い返してちょっと「タメ」、次の瞬間、タテの決定的スペースへ抜け出した坂田大輔へ見事な超ロングパスを決めたシーン。前半31分の一発カウンターのシーン。
結局は潰されてしまったけれど、やっと、中村俊輔が決定的な仕事が出来たシーンでした。またその二分後には、中村俊輔が送ったサイドチェンジパスから、逆サイドでフリーになっていた渡辺千真が(だと思ったけれど・・)決定的シュートを放つというチャンスも演出した。
またセットプレーでも、中村俊輔が相変わらず存在感を魅せていた。前半44分のコーナーキック。ピタリと、栗原勇蔵のアタマに合わせた。
まあ、とはいっても、中村俊輔の状態は(報道されているように)あまり良くなかった。ケガが完全に治っていないということなのだろうか・・。運動量は、100パーセントの状態から比べれば6-7割程度といったところ。守備にしても、全力のアタックは控えているのがアリアリだった。また攻撃にしても、(もちろん、相手にかなり厳しくマークされていることもあったけれど・・)トップフォームのキレがないし、あまりリスキーな勝負プレーにもチャレンジしない。
どうなんだろうね・・。ワールドカップまで、あと一ヶ月。それまでにはトップフォームに戻すつもりでプレーをつづけているのだとは思うけれど・・。「彼にしても、チームに迷惑をかけると思ったら、自分から出場を辞退するでしょ・・でも、いまの俊輔でも、十分な戦力だし、周りとのイメージの連係さえアップすれば、もっともっと決定的な仕事をやってくれると思いますよ・・」と、木村和司監督。
あっと・・試合。ジュビロ守備ブロックを攻めあぐねていたマリノスだけれど、残り25分というタイミングで、清水範久に代わって、新戦力のアルゼンチン人、バスティアニーニが登場します。そして彼をワントップに(ポストプレイヤーにして!?)その後方に、山瀬功治、坂田大輔、渡辺千真のトリオが控えるというイメージの布陣に変える。
わたしは、バスティアニーニのプレー内容には、まったく不満でした。ポストプレーでも、個人勝負プレーや周りとのコンビネーションプレーでも。ただ、彼が入ったことで、ちょっとジュビロ守備ブロックの安定イメージに「偏り」が出てきたとも感じた。彼らは、バスティアニーニを必要以上に「強く意識」したということなんだろうね。
そしてジュビロ守備が、サイドからの仕掛けに「より大きく」振り回されるようになっていった・・。もちろんそれは、私の「感覚」だけれど、ジュビロ守備ブロックの人数バランスとポジショニングバランスが、ちょっと「偏り」はじめたと感じられたのです。だから、サイドからの仕掛けに(それまではあった)余裕をもって対処できなくなっていった。要は、サイドからのドリブル勝負に、少し遅れ気味に対処するという場面が増えたのですよ。
そして結局は、そんな「ネガティブな変化」が、取り返しのつかない結果につながってしまう。後半30分に、左サイドから坂田大輔にクロスを送り込まれ、逆サイドから走り込んだ天野貴史にダイレクトシュートを決められてしまったのです。それが決勝ゴールということになりました。
この試合のテーマは、ジュビロが魅せた堅牢な守備ブロックと、それが非常にうまく機能しつづけていたからこそ(!?)バスティアニーニという「変化」に、十分に対応し切れなかったのかもしれないというポイントでした。
まあ、バスティアニーニの実際のプレー内容はあまり気に入らなかったけれど、ジュビロ守備ブロックの気を引く効果的な変化(=オトリ!?)としては、とてもうまく機能していたと思いますよ。
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次は、フロンターレ対ベルマーレ。
「この試合は負けてしまったけれど、そんな結果とは関係のないニュートラルな視点で、ベルマーレは良くなっていと思うのですが、そのことについて、反町さんはどう思っていますか?」
「エッ!?・・まあ、負けたから言いにくいのですが・・たしかに選手たちは、J1に慣れてくるにしたがって、より自信をもって(ポジティブなフィーリングで)良いプレーを展開するようになっていると思います・・もちろん、ボールをしっかりと動かすチカラとか、中盤での攻守のプレー内容とか、まだまだ課題は山積みですが、全体的なプレーの質の向上にともなって、攻撃にも、より強い意志を表現できるようになっていくと思っています・・」
冒頭のわたしの質問に、反町康治監督が、そんなニュアンスのことを言っていた。
わたしは、ベルマーレが、着実に良くなっていると思っているのですよ。この試合でも、たしかにフロンターレに攻め込まれはしたけれど、それでも後半19分に、臼井幸平が一発レッドを喰らうまでは、実質的なサッカー内容で、とても拮抗したゲームだった。
ベルマーレは、守備に「追い立てられる」のではなく、フロンターレの攻撃を「しっかりと受け止め」、逆に、とてもクリエイティブで危険なミドルシュートを何本もブチかますなど、力強く「押し返して」いったのです。頼もしかったですよ。
それでも最後は、個のチカラにやられてしまった・・!?
「いや、我々は、決して個人勝負プレーばかりを前面に押し出しているわけじゃありません・・しっかりと(人と)ボールを動かしながら、相手守備の薄いゾーンへボールを運び、そこから効果的な個人勝負を仕掛けていくというイメージなのです・・我々は、とてもうまく組織プレーと個人勝負プレーをバランスさせられていると自負しているのですよ・・そのリンクマンというか、中心的にマネージしているのが中村憲剛というわけです・・」
「ベルマーレの反町康治監督が、フロンターレの個の勝負にやられた・・と言っていたが、いま高畠さんが言われた『フロンターレの攻めのカタチ』という表現では、個人勝負を前面に押し出していくというニュアンスが骨子なのですか?」・・そんな私の質問に対し、フロンターレ高畠勉監督が、例によって真摯に、そして落ち着いて、上記のようなニュアンスのコメントをくれた。フムフム・・
でも、ベルマーレの臼井幸平が退場になるまでのフロンターレは、どちらかといったら、個人勝負の方が目立っていた。そう・・「効果的な組織リンク」というニュアンスが薄い、ゴリ押しの個人プレー。最初の同点ゴールにしても、ヴィトール・ジュニオールの個人勝負からのクロスを、レナチーニョが蹴り込んだ。
まあ・・ネ、二回目の同点とするフロンターレの二点目にしても、それ以降の見事な二ゴールにしても、たしかに、しっかりとボールを動かしてサイドゾーンへ運び、そこからのドリブル突破で(個人勝負プレーで)ベルマーレ守備を崩すというプロセスだった。
ちょっと、高畠勉監督を挑発するような質問をしたけれど、これで、チョン・テセやジュニーニョが復帰してきたら組織と個のバランスが微妙に崩れ、より個人プレーをゴリ押しする傾向が強くなるかもしれないという心配はぬぐえないのも事実なのですよ・・
・・ヴィトール・ジュニオール、レナチーニョ、ジュニーニョ、そしてチョン・テセという才能あふれる攻撃カルテットが揃うことによる前後分断サッカー≒個人プレーが強調され過ぎるアンバランスなサッカー!?・・フムフム・・
まあ、高畠勉監督と中村憲剛という、チームマネージャーと、グラウンド上のエクステンションハンド(監督の右腕としてのグラウンド上のリーダー!)の協力作業に期待しましょう。とにかく、フロンターレが抱える「組織と個のバランス」というテーマは、個のチカラがレベルを超えているからこそ、とても興味を惹かれる学習テーマなのですよ。
それにしても、楠神順平とか登里享平とか、フロンターレは、素晴らしい才能に恵まれたヤングドリブラーを擁している。いや、ホント、とても魅力的なチームだよね、フロンターレは・・
ちょっと疲れ気味。これから、エスパルスとレッズ戦のビデオを観てレポートするつもりだけれど、さて・・
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お知らせですが、きたる5月3日の月曜日。NPO法人横浜スポーツコミュニケーションズ(ヨココム)が主催する「湯浅健二の独演会」が、昨年につづいて開催されることになりました。テーマは「岡田ジャパン」・・まあ、「日本人はなぜシュートを打たないのか?」っちゅうテーマにも入っていかざるを得ない!? さて・・。詳しくは「こちら」を参照してください。
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ところで、三年ぶりに新刊を上梓しました。4月14日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定したらしい。フムフム・・。タイトルは『サッカー戦術の仕組み』。池田書店です。この新刊については「こちら」をご参照ください。
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