湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2010年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第11節(2010年5月8日、土曜日)
- ちょっと落胆・・でもマリノスのガンバリにも拍手しなければ・・そしてレッズの交替出場選手たちには反省を!・・(RvsM, 2-3)
- レビュー
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- そりゃ、誰でも、疲れないはずがないよな〜。わたしも、まったく覇気なく、首都高速を愛車のオートバイで帰路についていました。まあ、その方が、安全運転だから・・ネ。
(このゲームでの)内容的には、もちろん「浮き沈み」はあったけれど、全体としては良いサッカーが展開できていたレッズ。それなのに、結局は「自滅に近い失点」で負けてしまった。それもホームゲームなのに・・。スミマセンね・・木村和司さん、あくまでもサッカーの内容をベースに、この試合では、レッズの方に「肩入れ」してしまった筆者だったのですよ。
とはいっても、マリノスも、最後まで、とても立派なサッカーを展開した。それは、マリノスにとって、決してフロックな(まぐれの)勝利というわけではなかった。
「久しぶりに三ゴールも奪い、それに勝ち点3もついてきた・・選手は、本当によく頑張った・・彼らには、この一週間、そして試合前のミーティングでも、とにかく気持ちが大事だと言いつづけた・・そして彼らは、 素早い攻守の切り替えにしても、積極的にボールを奪いにいく姿勢にしても、チカラを出し切ったプレーを魅せてくれた・・この試合は、自分たちのサッカーが展開できたという意味でも、とても満足している・・」
マリノス木村和司監督の弁。まあ・・私もそのコメントにアグリーだね。たしかにマリノスは、最後の最後まで立派に闘い抜いた。だからこの勝利は、彼らが、自らのチカラで掴み取ったモノだったと言える。もちろん「彼らの視点」からすればネ。
この試合の最初のテーマだけれど、積極的な仕掛け合いになったからこそ、ゲームが、とても魅力的なモノへと「成長」していったというポイントですかネ。
マリノスは、ホントに積極的に攻め上がっていった。特に立ち上がりの気合いポテンシャルはとても高かった。それは、木村和司監督の「檄」が効いたということなんだろうね。だからこそ、押し返していくレッズも(ゲームの立ち上がり5分に、マリノス渡辺千真に100本に一本というスーパーキャノンシュートを決められたこともあって!?)とても実効レベルの高い攻撃を展開できた。
やっぱりサッカーはこうでなくっちゃね。そして、レッズがイニシアチブを握るという展開のなかで、左サイドを疾走した(マリノス守備ブロックを崩し切った!)田中達也によって、柏木陽介の同点ゴールが演出されるのです。それは、レッズが、自らのチカラで奪い取った立派なゴールだった。でも・・
ちょっとレッズのエネルギーが減退しはじめた、前半の大詰め時間帯(エネルギー減退については、大住良之さんの指摘に、フォルカー・フィンケも同意していた・・)、その残り二分というタイミングで、宇賀神友弥のミスによってフリーで抜け出したマリノス兵働慎剛が、ゴールマウスを飛び出してセービングを仕掛けたレッズGK山岸範宏の身体の上をフワッと浮かせるワザありシュートを決めるのです。
それまでの流れからすれば(たしかにレッズのエネルギーがちょっと減退していたとはいえ・・)とても「唐突」なゴールではありました。
そして後半。再びエネルギーを充填し、ゲームのイニシアチブを握るレッズが、始まって早々の三分に、(細貝萌によって送り込まれた正確なクロスボールに反応した!)エジミウソンのヘッドによる同点ゴールを挙げるのです。
それは、誰もがレッズの逆転勝利を信じて疑わなくなった瞬間だったはず。でも実際に、このゲームにおける五点目(=決勝ゴール)を奪ったのはマリノスの方だった・・。
とてもエネルギッシュなオーバーラップから、坪井慶介との粘り強い「ボールをめぐるせめぎ合い」を制したマリノス山瀬功治。最後は、ゴール前でフリーになっていた渡辺千真へ、置くようなラストパスを通した。
どうして「あのシーン」で、渡辺千真がまったくフリーだったんだ?? 「このシーン」もまた、とても貴重な、イメージトレーニング素材だよね。バレージだったら、決して、渡辺千真をフリーにしなかったはずだから・・。
そして「ここ」から、この試合での二つ目のテーマに入っていくというわけです。ペースを上げられないレッズ・・それまでのように、具体的なチャンスを作り出せないレッズ・・
たしかに、マリノスが守備ブロックを固めてきたというだけではなく、連戦で、レッズ選手に疲れが出てきたという背景要因はある。だからこそ、ここでは、同点から逆転していくために絶対必要だった「吹っ切れた勝負プレー」を繰り出していけなかった「交替出場選手」というポイントにスポットを当てるのです。
その点に関する私の質問に対して、フォルカー・フィンケ監督は・・、「サッカーはチームゲームだし、まず仕掛けのリズムに乗ることが大事だった(彼らだけがガムシャラに突っ掛けていっても効果は大きくない!?)・・彼らにしても、その流れに乗ることで良いパスを受け、効果的に仕掛けていけるはずだ・・ただ、先発出場した選手のダイナミズムが(疲労で)減退していったことで、チームワークの量と質が大きくダウンしてしまった・・」といったニュアンスのことを言っていた。
でも私は、交替出場した原口元気、セルヒオ・エスクデロ、そしてサヌには、そんな「従属的なマインド」でプレーして欲しくなかった。
率先して、爆発的なチェイス&チェックを仕掛けていく・・それで(高い位置で!?)奪い返したボールを、自らが率先して仕掛けていく・・ドリブル勝負に挑んでいってもいいし、自らが中心になってコンビネーションをスタートしてもいい・・ドリブルで、相手守備ブロックに突っ掛けていくだけで、必ず、マリノス守備ブロックのバランスは崩れていく・・そして、そこで生まれたスペースを、勝負ドリブルやコンビネーションで突いていく・・などなど・・
この三人には、そんな攻守にわたる、主体的なダイナミックプレーで(もちろん爆発的なディフェンスから全てをスタートするんだヨ!)チームのマインドを引っ張っていってもらいたかった。それがなければ、彼らが「ベンチ要員」という屈辱のチーム内ポジションから抜け出すコトなんて出来るはずがない。ホントだよ・・
本当に、この三人のプレーに、心から落胆していた筆者だったのです。どうでもいいから、一度くらい「吹っ切れた勝負プレー」を魅せてみろよ!・・いつまでも、周りのチームメイトに(そのプレーイメージに)従属しているんじゃ、ホンモノの個人事業主になんて、なれるはずがない。
厳しいコメントとは思うけれど、「そこ」には、彼らにとって、とても、本当にとても大事な「事実」があるんだよ。彼らは、自分たちのチーム内の存在価値(意義)を爆発的に高揚させられるだけの、願ってもない「ビッグチャンス」を掴みそこねたんだよ。
彼らには、本当に、心から、その事実を「反芻」しつづけ、それをベースに、闘う意識と意志を極限までアップさせ、高みで維持する努力をつづけて欲しいと思います。何せ、あれだけの天賦の才に恵まれているんだからネ。
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ところで、三年ぶりに新刊を上梓しました。4月14日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定したらしい。フムフム・・。タイトルは『サッカー戦術の仕組み』。岡田ジャパンの楽しみ方・・という視点でも面白いかもしれません・・たぶん。池田書店です。この新刊については「こちら」をご参照ください。
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