湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2010年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第13節(2010年7月17日、土曜日)
- 後半は、とても興味深い「我慢比べ」になった・・(AvsFR, 2-1)
- レビュー
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- 「このままウチがトップを走りつづけるだって!?・・コトは、そんなに単純じゃないよ・・まだ22試合も残っているんだぜ・・Jリーグは、そう簡単に独走できるようなリーグじゃないんだよ・・対戦相手もレベルが高いしね・・とにかく、まだ何も決まっていないんだ・・まだリーグの中盤に差しかかったところだし、ワールドカップ中断明けのフォーミングアップが済んだだけというところだね・・とにかく我々は、一つ、ひとつ、コツコツとやりつづける・・もちろん当然ながら、最後の最後にはトップに君臨しているように全力で頑張るさ・・」
「久しぶりにトップに返り咲いたわけだが、これで、強いアントラーズがダントツのトップを突っ走ってしまうのではないかと心配している・・そのことについてコメントをいただけませんか?」
そんな質問を、アントラーズの名将オズワルド・オリヴェイラ監督に投げたのですが、それに対してオリヴェイラ監督が、冒頭のような「ニュアンス」のコメントをくれたというわけです。
それほど、立ち上がりのアントラーズは、素晴らしく「質実剛健」なサッカーを展開したのですよ。強いし、部分的には、とても美しい。あれだけの才能連中が、攻守にわたって「クリエイティブなムダ走り」を積み重ねていくんだからね。組織プレー良し。また攻撃でタイミングよく繰り出していく個人勝負プレーも良し。
そんな強いアントラーズを観ながら思っていた。オズワルド・オリヴェイラ監督は、才能トップ選手のマインドを、着実に掌握しているよな〜〜。そう・・マルキーニョスやフェリペ・ガブリエルといった主力選手。
皆さんもご存じのように、マルキーニョスやフェリペ・ガブリエルは、ものすごく忠実に(守備での)チェイス&チェックを実行しつづけるよね。もちろん攻撃でも、右のサイドから、斜めに、逆のサイドに広がるスペースへ向けて、全力で何十メートルもスプリントしちゃったりするんだよ。それでも、パスがこなくても、何事もなかったかのように次の『汗かきディフェンス』に精を出すのですよ。
決して彼らは、自分だけが目立ちたいといった不健全な意図をもっていない。あくまでも忠実に、組織的なハードワーク(純粋なチームプレー)に徹するのです。あれほどの才能が、そんな忠実な汗かきプレーを繰り返すんだから、周りのチームメイトだって、そりゃ、一生懸命にならざるを得ないよな〜。
たぶんオズワルド・オリヴェイラ監督は、彼らの「忠実な全力汗かきハードワーク」に対して、言葉でモティベートするだけじゃなく、クラブと交渉して、彼らの契約内容の変更といった「実」の部分でも、しっかりとマネージしているはずだよね。あっ・・もちろん想像にしか過ぎないけれど・・ネ。
でも、このコラムの骨子テーマは、強いアントラーズではありません。それは、稲本潤一が退場処分に遭って一人足りなくなったフロンターレが、この強いアントラーズに対して、特に後半、(もちろん全体的には押されてはいるものの・・)ものすごく立派な積極サッカーを展開し、そして何度もチャンスを作り出したことなんですよ。
「そうですね・・稲本が退場になってからは、こんなゲームプランを実行しました・・前線の2トップはそのまま残し、中盤の構成を変えたんですよ・・中村憲剛を真ん中にシフトし、その右に田坂、左にヴィトール・ジュニオールを配置しました・・そして、ディフェンスの時は、4バックと、その中盤の3人をトリプルの形でブロックをつくります・・ボールを奪ったときは、前戦に残っている2トップが、しっかりと起点にならなければいけません・・全体的には、攻撃では、ヴィトールと田坂が前線をフォローするというイメージにし、憲剛はアンカーとして残り、攻撃では、リンクマンとして中盤をつくるというイメージですかネ・・あと、しっかりと局面でボールをキープし、常に逆のサイドをイメージするよう指示をしました・・そこにはいつもスペースがありますからね・・そんなプレーが、うまく機能したということだと思いますよ・・」
高畠勉監督が、「後半は(一人足りないが)かえってボールがよく動くことでリズムが出てきたように感じたのですが・・」という質問に、例によって「淡々と」そんなニュアンスのことを言っていた。
同様のテーマについて、オズワルド・オリヴェイラ監督にも聞いてみた。「後半は、一人少ないフロンターレと、チャンスの量と質も含めた実質的な内容では、互角だったという印象が残っているが・・」
「たしかに、チャンスでは互角の展開になった・・我々は、ちょっと攻めすぎたかもしれない・・それが、フロンターレに効果的なカウンターのチャンスを与えてしまったということだろう・・何せ、彼らには、スピードとテクニックに長けた優れたドリブラーがいるからね・・」
そして、こんな興味深いニュアンスのコメントも残してくれた。「一人多いというアドバンテージを、どのように効果的に活用していくのかというテーマだが、まずとにかく、オーソドックスにバランスの取れたサッカーを目指すべきだろうな・・グラウンドを広く使った展開とかね・・そのことで、それに対応せざるを得ない相手の(肉体的・精神的な)疲労を誘うというのが冷静でクレバーなやり方だと思うわけだ・・後半は、そのような、長いスパンの戦略的な発想が大事だったわけだが、うまく機能しなかった・・とはいっても我々は、最後は、この我慢くらべに勝ったわけだけれどネ・・まあ、フロンターレ戦は、常に厳しい闘いになるよね・・」
フムフム・・。ちょっと今日は、時差ボケのために疲れ気味。コメントが多すぎるとは思うけれど、そのままじゃなく、しっかりとニュアンスを「アレンジ」してまとめてあるはずだから、まあ許してくださいな。
それにしても、フロンターレの選手たちは、高畠勉監督の「ゲーム戦術的なオーダー」を忠実に実行しただけじゃなく、「それ」を超えて、要は、自分たちの強烈な「意志」をベースに、とてもダイナミックな積極サッカーを展開したと思いますよ。
特に、同点ゴールを決めた黒津勝と、何度も右サイドゾーンを、コンビネーションや勝負ドリブルで「切り裂いた」田坂祐介のプレーに、とてもシンパシーを感じていた筆者でした。あっ・・もちろん二人の外国人選手や「牛若丸」も素晴らしかったけれど、とにかく「期待以上」というニュアンスで、この二人にスポットを当たることにした次第です。
ちょっとアタマがボ〜〜っとしてきた。ではまた・・
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。
4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。
出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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