湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2010年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第13節(2010年7月18日、日曜日)
- レッズの、前半と後半の「激変(ペースダウン)現象」は昨年と同じ!?・・(GAvsR, 3-2)
- レビュー
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- どうだろうね〜・・またまた、昨年と同じようにゲームの途中から、「アナタ任せの心理」が目立つことで、ガクッとプレーペースが減退してしまうというネガティブ現象がチラつきはじめてきそうな感じが・・
それは、選手たちの「意志パワーの減退」というネガティブ現象のことです。危機感があったら(要は、自ら闘う意志を高揚させられれば・・)あんなふうに、急激にペースが落ち込むような沈滞したゲーム展開にはならなかったはずだと思うのですよ。誰か、ガンガンとアグレッシブに(?咤激励する刺激によって!)チームメイトの意志(≒ファイティングスピリット)を引っ張り上げていけるような選手(心理的リーダー)が出てきてもいいように思うのです。でも・・
スミマセンね・・、この試合はテレビ観戦だったこともあるので、レッズを中心に、簡単に印象だけをまとめようと思います。
そのレッズ。たしかに前半は、ガンバを圧倒したし、見事なコンビネーションから右サイドへボールを展開し、そこでまったくフリーで待ち構えていた平川が送り込んだ正確なクロスを、ゴール前で(その前に、ボールがないところでの動きがあったからこそ)まったくフリーになっていたエジミウソンが見事なダイビングヘッドを決めた。
そこまでは、「オッ・・大丈夫そうだな・・フォルカー・フィンケの理想イメージが、徐々に、ポジティブに、グラウンド上に投影されていきそうな雰囲気だな・・」なんて期待を込めて観戦していた。それほどレッズは、中盤ディフェンスでガンバを圧倒し、次の攻撃でも、効果的にスペースを攻略しつづけていたのですよ。
その絶対的なベースは、もちろん攻守にわたる運動量とシンプルな組織プレー。運動量があるから、忠実なチェイス&チェックと周りの「次のボール奪取勝負」がうまく連動した。運動量があるから、田中達也、山田直輝、阿部勇樹、細貝萌(まあ、ポンテも・・)といった中盤プレイヤーたちが、縦横無尽のポジションチェンジを繰り返すことで、ガンバ守備ブロックを翻弄した。
また、(フォルカー・フィンケのイメージが浸透してきたことで!?)無駄な運動量の増大を防ぐような、互いのポジションを効果的にバランスさせる「意識」も高まっていると感じた。
要は、攻撃に人数を掛け、そこでポジションチェンジを繰り返していても、(素早く効果的な攻守の切り替えをベースにした)次の守備では、スッと、まさに流れるように、要は、臨機応変に、守備の組織(正確なポジショニングバランス)を構築してしまうのですよ。
そのゲーム展開は、とてもインプレッシブだった。でも、後半は・・
もちろんガンバのペースアップもありました。人の動きの量と質のアップを絶対的ベースにしたダイナミズムの高揚。また、「どうせレッズの運動量は、そのうちダウンしてくるサ・・」という西野明のゲーム展開の読みもあった!? でも実際には、それに輪を掛けて、レッズのプレー内容が大きく減退していったと感じた。
要は、人の動きがピタッと止まっちゃったと感じられたのですよ(もちろん、前半の内容と比較しての感覚的な捉え方だけれど・・ネ)。前半は、ボールを奪い返したら、すぐに、一人や二人の選手は、後方から、前のスペースへ押し上げていった(オーバーラップ=ボールがないところでのサポートの動き)。でも後半は、どんどんと、様子見のプレイヤーが増えていった。
それでも守備の組織は出来ているからディフェンスは大丈夫だろう・・なんて思っていたら、ガンバのペースアップした攻撃に、どんどんとウラのスペースを突かれるような(前半にはまったくといっていいほど見られなかった!)ビンチシーンが連続してしまうのですよ。
そして、ボールを奪い返しても、足許パスばかり。要は、誰も、スペースへ入り込んでいったり、自らスペースを作り出すために動いたりするような「汗かき」のプレーをやらなくなってしまったということです。そして、無為に、足許パスを待つばかり。これじゃ、ガンバ守備ブロックの餌食になるのも道理だよね。
特に、ルーカスが一発退場になってからの「攻めあぐむ」という展開が、とてもネガティブな印象を振りまいていたっけ。もちろんガンバが守備ブロックを固めてきたこともあるけれど・・。
そんなジリ貧の展開だからこそ、誰かが効果的な「複合」コンビネーションを引っ張っていくという「意志のプレー」を魅せるだけじゃなく、中距離シュートやアーリークロスといった、シンプルな(単純な)勝負を繰り出してもよかったと思うわけです・・いつも書いているように・・フォルカー・フィンケは、そんなアバウトな仕掛けは嫌いなんだろうけれど・・。
こちらは、忸怩(じくじ)たる思いにかられているのに、グラウンド上では、ボールホルダーの誰もが、「周りが動かないからダメなんだよ〜〜」といった心理が見え隠れするかのように、安全パスに「逃げ込む」ばかり。誰も、危険を冒して仕掛けていこうとしない。そんなネガティブな心理が、またまたチーム全体に、消極ビールスを蔓延させつづける。そして足が止まる。まさに、心理的な悪魔のサイクル・・
たしかに、ロスタイムに入ったタイミングで、エイヤッ!のコーナーキックから、エジミウソンがスーパーヘディングシュートを決めたけれど、その一分後には、ガンバが誇る組織プレーの天才、遠藤保仁が基点になったコンビネーションから、最後は、遠藤をまったくフリーにしたために、そこにリターンパスが入り、劇的な決勝ゴールを奪われてしまった。まあ、自業自得・・
さて、フォルカー・フィンケは、選手個々の能力レベルという意味で本来的には底力があるレッズを、夏場の環境に適合するカタチで、うまく立て直すことができるだろうか・・。まあ、とても興味深い学習テーマではあります。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。
4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。
出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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