湯浅健二の「J」ワンポイント


2010年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第14節(2010年7月25日、日曜日)

 

やはり「個のチカラ」が前面に押し出されてくるフロンターレ・・極限の「集中力」のアップが課題のサンガ・・(FRvsP, 1-0)

 

レビュー
 
 いろいろと、コトが重なってしまい。コラムを書きはじめられたのは、夜中の「0100AM」を過ぎたあたりからでした。フ〜〜ッ・・

 ということで、この試合では、テーマを二つだけ簡単にまとめます。何といっても、もう酔っぱらっているから・・。お恥ずかしい・・スミマセン・・

 まず第一のテーマが、やはり、日本の「厳しい夏」。もちろんそれは、ボールがないところでの動きの量と質の減退を意味します。要は、人数を掛け、人とボールをしっかりと動かしつづけなければうまく機能しない「組織プレー」で、相手守備ブロックのウラスペースを攻略していくのが、より難しいものになる・・ということです。

 案の定このゲームでも、両チームともに、組織パスプレー(組み立てプロセス)では、可能性の高い(誰もがハッと息を呑むような!?)シュートチャンスは作り出せなかった。

 そんななかで、セットプレー(コーナーキックとかフリーキックとか・・)とカウンターを除き、チャンスの「兆し」が感じられたのは、やはり「個の勝負シーン」でした。その視点じゃ、やっぱり、後方からタイミングよく押し上げてくる中村憲剛、前戦のレナチーニョとヴィトール・ジュニオール、そして決定的スペースへ抜群の抜け出しを魅せつづけた超速特急、黒津勝を擁するフロンターレに一日の長があった。

 まあ、サンガにも、ドゥトラやディエゴ、はたまた、17歳の新鋭で、「部分的に」素晴らしいドリブル勝負を披露した宮吉拓実といった魅力的な選手はいるけれど、やはり「個の才能レベル」という視点じゃ、フロンターレの方が上であることは論を俟(ま)たない。

 そんなハンディキャップをもっているのに、京都サンガは、よく頑張った。部分的に、フロンターレ間の個の才能に振り回されるシーンもあったけれど、最後の最後まで、しっかりと組織カバーリングが機能していたのですよ。

 でも・・最後の最後に、あり得ない集中切れが・・。だから加藤久監督に、フラストレーションに突き動かされるように、ちょっと攻撃的な質問を投げつけてしまった。

 「加藤監督には、わたしの(読売サッカークラブ時代での)コーチの現役当時には、本当に世話になった・・加藤さんの、超人的な集中力(素晴らしいボール奪取勝負やカバーリングなど)によって、本当に何度、チームが助けられたことか・そんな加藤さんが監督を務めているからこそ、決勝ゴールシーンでの、サンガ守備ブロックの集中切れが信じられなく、残念で仕方なかった・・いや怒りさえ感じる・・あのシーンでは、二つも、集中切れのマークミスが重なったと思う・・それは、ある意味で、サンガの今の順位を象徴している現象だったと言えるのかもしれない・・あのようなシーンを見せつけられたら、それを修正するのは、とても難しいと感じてしまうのだが・・一体どうやって、あのような瞬間的な集中切れを繰り返さないようにコーチングするのだろうかという疑問が出てくるのです・・そのことについてコメントをいただけませんか?」

 加藤久監督は、一瞬口ごもっていた。厳しい質問だったとは思うけれど、それ以上に、あの集中切れシーンが残念で、そして悔しくて仕方なかったのですよ。あれだけサンガ守備は頑張ったのに、その一瞬の集中切れで一敗地にまみれ、それまでの守備での努力が水の泡になってしまう・・。その厳しい現実と対峙しなければならない監督さんにとって・・

 それでも、加藤久監督は、立派に受け答えしてくれた。

 気持ちの強さ・・忍耐強さ・・それが、いまのウチの選手の一番のウイークポイントだと思う・・それは、彼らが育ってきた環境や文化と深く関わっている・・それが彼らのパーソナリティーを形成した・・そんなパーソナリティーだから、一朝一夕に改善していくのは難しい・・怒っても、そんな側面が簡単に改善するはずもない・・そこでは、コーチの忍耐力が問われる・・戦術的なことや技術的なことは修正できる・・また、本物のプレッシャーが掛かっていない練習では出来る・・ただ本番は違う・・緊張感などに押されて実力を発揮できない・・それに今日は、ジュニーニョが入ってきたことで、彼を恐れてしまったという心理的なマイナス現象もあったと思う・・自分は、そんな「人間の本質的な部分の改善」も引き受けたつもりだ・・要は、選手を逞しく変身させるというのも仕事の一環ということだ・・だから、歯がゆい気持ちを押し殺す忍耐を維持することが肝心だと思っている・・選手たちのそんなマイナス面が改善されていけば、いまの勝ち点でいることはないはずだ・・

 もちろん、加藤久監督の気持ちはよく分かるし、コーチの仕事が、忍耐を積み重ねていくことだという事実もよく分かっているつもりです。とにかく、加藤久監督が、そのメカニズムをしっかりと理解したうえで努力を積み重ねていることは、ヒシヒシと伝わってきた。だからこそ、あのシーンでの、選手たちの一瞬の集中切れが残念で仕方なかった。フ〜〜・・

 ところで、加藤監督のハナシにも出てきたジュニーニョ。最後の25分間プレーし、抜群の存在感を発揮した。

 決勝ゴールを決めたことも含めて、やはり素晴らしい選手ですよ。フロンターレには欠かせない「決定力」っちゅうことだね。それまで、ヴィトール・ジュニオールや黒津勝、はたまたレナチーニョが成し得なかった「チャンスを実際のゴールに結びつける」という仕事を、いとも簡単に(まあ・・彼に限ってそう見えるのだろうけれど・・)やり遂げちゃうんだからネ。

 前節のアントラーズとの試合でも、(結局、負けちゃったけれど・・)一人足りないにもかかわらず、とても魅力的で実効レベルの高い組織サッカーを披露したフロンターレ。彼らの今後に期待しましょう。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 



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