湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2011年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第10節(2011年5月7日、土曜日)
- レイソルは、本当に素晴らしいサッカーを展開した・・(RSvsR, 3-1)
- レビュー
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- 「レイソルは(内容的にも!)順当な勝利を収めた・・今日の我々は、レッズにふさわしくない恥ずかしいサッカーになってしまった・・普段であれば、最後まで質疑応答に応えるが、今日は、これ以上コメントしたくない・・」
試合後の記者会見。ゼリコ・ペトロヴィッチは、そんな捨て台詞(ぜりふ)を残してインタビュールームを後にしてしまった。もちろん会見場には、「え〜〜!?・・聞きたいことが山ほどあったのに〜〜・・」という雰囲気が充満する。フ〜〜・・
わたしも、「ペトロヴィッチさんが言われた、恥ずかしいサッカーという表現だが、具体的に、何が恥ずかしかったのか?」という質問を投げようとしていたから、ちょっと機先を制されてしまった。まあ・・とても残念だったね。
とはいっても、こちらが書くまでもなく、ゼリコ・ペトロヴィッチが、この日レッズが展開したサッカーを「恥ずかしい・・」と認知していたことは分かったし、それはそれで重要なインフォメーションだった。まあ、あのサッカーじゃ、だれも胸を張れるはずないけれどね。
レッズのサッカー内容がアップしてこない・・。これまで私は、基本ポジションを固定し「過ぎる」オールドファッションの(ステレオタイプのサッカーに陥ってしまう危険の高い)チーム戦術だから、ゲームが進んでいくうちに仕掛けのイメージがスタックしてしまうことで、選手の足が止まり気味になってしまう(全体的な運動量が落ちていく・・)なんていうニュアンスの分析をした。
でもサ・・固定し「過ぎる」のはスリートップ(センターフォワードのエジミウソン、サイドハーフの原口元気と田中達也=この試合では原一樹=)だけで、両サイドバックとかセンターゾーンのプレイヤーは、活発にポジションチェンジをしているよね。
それに、前戦の三人を「傘を広げるように広くポジショニング」させるのは常道だし、そんなチームも多い。守備の基本は「集中」であり、攻撃では「広さと変化と自由な自己主張」というわけです。
でも・・まあ・・他のチーム(例えばエスパルスとか・・)の場合は、より柔軟な発想があると感じるよね。要は、選手の「自由度」がアップするように(考えつづけることを基本にした自己主張の可能性までも!?)しっかりとマネージしている・・っちゅうことなんだろうね。でもレッズでは・・!?
とにかく、この試合でも、レッズ選手たちのボールがないところでの動きの鈍重さは、度を越していた。足許パスのオンパレード。これじゃ(常に自分たちの眼前で勝負できる!?)レイソルに、効果的なボール奪取チャンスを与えてしまうのも道理。
またレイソルは、レッズのサイドへの展開を(イメージ的に)ケアーしながらも、逆に「そこ」へ展開されてくるようにレッズのボールの動きを「誘い出し」、そして効率的にボールを奪いかえしていた・・なんていう分析だって出来るかもしれないね。
とにかくレイソルは、とてもスマートに、そして効率的にレッズからボールを奪いかえしつづけるのでありました。それは、それは美しいインターセプトのオンパレード。その量と質は、レッズよりも数段上という印象だった。
もちろん、そんな効果的なボール奪取が、次のスーパーなカウンターのベースになったことは言うまでもありません。それにしても、カウンターシーンでのレイソル選手たちの「飛び出しの勢い」には目を見張らされた。
あくまでもシンプルに、そして直線的に素早く、タテへボールを運ぶレイソル。そんなカウンターイメージが徹底されているからこそ、その流れに乗っていく「ボールがないところの動き」も活性化する・・っちゅうわけです。そう、相互の信頼感。
そこで、ネルシーニョ監督に質問した。
「この試合でのレイソルは、本当に素晴らしいサッカーを展開した・・特に、カウンターシーンでの3人目、4人目の飛び出しには目を見張らされた・・今日のゲームは、レイソルが、まさに順当に奪い取った勝ち点3だった・・ただ、私は、そんな効果的なカウンターを展開できたのも、相手のレッズが無計画に上がり過ぎていたからだと思うのだが?・・もちろんその背景には、立ち上がりゼロ分に叩き込んだ先制ゴールもあったわけだが・・」
「そうだネ・・立ち上がりの先制ゴールは大きかったと思うよ・・そのゴールで我々が落ち着けたということもあったし、逆にレッズは攻め上がっていかざるを得なくなったわけだからね・・ボールを奪いかえしてからのカウンターイメージだが、我々は、柏木が攻め上がってくることを明確に意識していたんだよ・・要は、そのことで山田暢久の周りに(彼がカバーし切れない!)スペースが出来るということだ・・それが、カウンターの狙い目だった・・そう、山田暢久の周囲に空いたスペースをうまく突いていくというイメージだね・・それが、ツボにはまったということだと思うよ・・決して我々は、守備的なサッカーを展開したワケじゃない・・それが言いたかった・・相手のウイークポイントを突くサッカーとでも表現しようかな・・」
ネルシーニョ監督の舌はあくまでも滑(なめ)らかだったネ。そう、わたしもそう思う。決してレイソルは守備的なサッカーを展開したワケじゃない。選手たちの守備意識が、本当に素晴らしかったということ。だから、素早い攻守の切り替えから、忠実なチェイス&チェックをベースに、例外なく全員がディフェンスに参加するのですよ。要は、ダイナミックな組織ディフェンスが素晴らしく機能した・・だからこそ、次のカウンターも(ボールがないところの動きの活性化をベースに!)ものすごく効果的に繰り出していけた。
わたしは、このゲームでレイソルが魅せたダイナミックでスムーズ、そしてクレバーで忠実なサッカーに舌鼓を打っていた。
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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