湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2011年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第15節(2011年6月15日、水曜日)
- サンフレッチェには申し訳ありませんが、レッズを中心にレポートします・・(SAvsR, 0-0)
- レビュー
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- フムフム・・少しずつだけれど、良くなる傾向にはあるね、レッズ・・この試合では、強いサンフレッチェに対して、十分に対抗できていた・・
このアウェーマッチでは、ツートップではなく、エジミウソンのワントップに、柏木陽介、マルシオ、そして田中達也で組む攻撃的ハーフトリオが控えるという布陣だったけれど、グッドポイントの第一は、このトリオが(自分たちの意志として!?)サイドに張り付き「過ぎ」なくなったことだろうね。
必要ならば、下がってタテパスを要求したり、サイドを空けることでサイドバックのオーバーラップを促したり。それに、ポジションチェンジも活性化してきていると感じる。サイドバックとのタテ方向だけではなく、たまには横方向でも柔軟に入れ替わっていた(積極的にセンターゾーンにも進出していった!?)。
もう一つのグッドポイントは、この攻撃ハーフトリオの守備意識が、素晴らしく高質だったところ。
達也にしても陽介にしても、はたまたマルシオにしても、ボールを奪いかえすことに対する強い意志をぶつけるように、とてもクリエイティブに前戦からのチェイス&チェックを(相手の攻撃の流れの追い込みを)ディフェンスの起点として効果的に機能させていたし、守備でのカバーリングも「厚く」させていた。
だからこそ(攻撃では)サイドバックも、後ろ髪を引かれることなくオーバーラップ出来る。だからこそ(守備では)鈴木啓太と山田暢久で組む守備的ハーフコンビが、次のボール奪取ポイントを絞り込んで効果的に対処できる。
ところで、鈴木啓太と山田暢久で組む守備的ハーフコンビ。この試合では、どちらかといったら守備に重きを置く「バランサー&カバーリング要員」的なイメージでプレーする時間帯が多かった。そのこともあって、サイドバックや攻撃的ハーフトリオも、リスクチャレンジプレーに対する心強いバックアップという「安心感」をもって攻撃を繰り出していけた。
そんな風に、全体としては良くなる傾向にあるレッズだけれど、ただ、組織コンビネーションという視点では、まだまだだと思う。
・・3人目のフリーランニングが出てこない・・また、出てきても、うまく活用できない・・だから、最終勝負プロセスでは、足許パスからのドリブル勝負の方が目立ってしまう・・それも、相手守備が十分に組織されている密集ゾーンへ強引に突っ掛けていくという印象の方が強い・・
・・組織コンビネーションがうまく機能すれば、相手守備ブロックを振り回せるようになるはずだし、個のドリブル勝負にしても、相手守備が「薄く」なったゾーンへ、より有利なカタチで繰り出していける・・そんな、組織コンビネーションと個のドリブル勝負を高い次元で組み合わせることこそが、いまのレッズの最大の課題というわけだけれど・・
・・まあ、その意味合いも含め、守備的ハーフの攻守にわたる機能性を、もっと充実させていかなければならないということになる・・守備的ハーフから、効果的リンクマンとか、後方からのシャドーストライカー(3人目のフリーランニング)とか・・タテのポジションチェンジの演出家とかネ・・
・・まあその背景には、この試合では、山田暢久と鈴木啓太という、守備イメージの方が強い二人がコンビを組んだということもある(センターバックと守備的ハーフコンビの四人は常に後方に残っているという基本的なゲーム戦術だった!?)・・もし柏木陽介が「そこ」に入れば、より強く「タテ方向の変化」を演出できるはずだけれど・・
・・そういえば、このところ、柏木陽介の「ボランチ」はうまく機能していなかった・・要は、柏木陽介が後方から押し上げるカタチで組織コンビネーションをリードしていくという仕掛けプロセスがほとんど機能していなかった、ということ・・まあ、サイドハーフが、タッチライン際ゾーンに張り付き「過ぎ」、そこから個のドリブル勝負を繰り出していくという仕掛けイメージが強「過ぎた」だけではなく、ここ数試合はツートップで試合に臨んでいたわけだけれど・・
・・そんな柏木陽介を、一つ「上げ」て攻撃ハーフトリオの中心に据えた・・そのこともあって、選手たちの仕掛けの発想が(自分たち主体で!?)より「自由」になった!?・・まあ、そういうこともあったかもしれないネ・・
・・だからこそ、後半に投入された山田直輝と柏木陽介による、組織コンビネーションの機能性アップが見たかった・・残念なことに、その二人が交替してしまって・・ここは、守備的ハーフコンビの一人と交替させるとか、もう少し、リスキーな采配があってもよかったんじゃないの・・まあ、タラレバだけれど・・
とにかく、選手自身の意志として(!?)、ポジションにこだわり過ぎず、より自由に積極的にプレーすることを心がけていることで(!?)、全体的な運動量とサッカーのダイナミズム(力強さ・迫力)はアップする傾向にあると感じますよ。
田中達也、山田直輝、平川忠亮、マゾーラ、梅崎司といった「チーム活性化のキーマン」たちの復活だけではなく(まあ原口元気は抜たけれど・・)、選手自身の主体的な意志の高揚もあって(!?)、サッカー内容が「ジリ貧」の傾向に落ち込んでいくという最悪シナリオからは、ちょっと遠ざかりはじめていると感じ、胸をなで下ろしている筆者なのでした。
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ところで・・
私の、とても近い友人ご夫妻が、イタリアン・テイクアウトのお店をはじめたので、紹介させてください。先週は、ピアダやパスタを食してきた。頬(ほお)が落ちた。店はチェアも用意しているから、その場で食べられまっせ。
お店は「PaninoNino」といいます。友人の奥様が(調理も含む)実務を切り盛りしているのですが、その友人は建築(工業も!?)デザイナーで、長くミラノで仕事をしていた。イタリアサッカーファンのはず。彼がイタリア(ミラノ)で仕事をしていた当時、ACミランの監督を、アルベルト・ザッケローニさんが務めていたということです。
奥さんが、「ザッケローニさんは、ピアダが大好きだと聞いているから、お越し下されば大歓迎しますと伝えてくださいな・・」と上品に言われたけれど、そう簡単にザッケローニと立ち話するわけにゃいかないよね。あははっ・・
ということで、一度お試しあれ。ホント・・美味しいよ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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