湯浅健二の「J」ワンポイント


2011年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第19節(2011年7月30日、土曜日)

 

もう眠くてダメ・・でも何か、ポイントをピックアップして書いた気がする・・フ〜ッ・・(FRvsR, 0-1)

 

レビュー
 
 あ〜、驚いた。

 ホントに、目を奪われるエキサイティングマッチになった。そんな展開になったから、最後の最後まで眠くならなかったのも道理だったネ。あっ・・わたしは今朝帰国したばかりで、少なくとも30時間以上は寝てないのですよ・・。

 特に後半の攻防には手に汗を握った。そんなゲームのポイントについて、例によってランダムにまとめます。何せ・・自然と瞼(まぶた)が閉じてしまうようなくらい眠いから・・

 ・・後半、一点を追うフロンターレが、全力で攻め上がる・・その最初から中村憲剛が登場したこともあって、そこでタメられてから展開される縦横無尽のボールの動きが、相手にとって、とても危険なモノへと進化していった・・

 ・・中村憲剛のパス能力に対するチームの信頼は抜群・・だから、前半でも目立っていたボールがないところでの動きの量と質が、大きく増幅したと感じた・・そしてフロンターレは、素晴らしいコンビネーションから、繰り返し決定的チャンスを作り出す・・

 ・・ただ、そこに立ちはだかったのは、レッズGK加藤順大・・前半も含めると、彼のスーパーセーブが防いだピンチは、少なくとも三本から四本はあった・・

 ・・たしかにセンターバックコンビも含めて、レッズ最終ラインは良くなっているけれど、(中盤ディフェンスとの連係がうまくいかずに!?)何度もウラの決定的スペースを攻略されたのも確かな事実・・

 ・・「アッ!、フロンターレが同点ゴールを叩き込むっ!」と誰もがフリーズしたシーンは、とても多かった・・でも、そのたびに加藤順大が立ちはだかった・・

 ・・対するレッズも、前半のような(まあ先制ゴールを挙げてリードしていたということもあったんだろうけれど・・)「情けない」スタンディングサッカーではダメだと奮起したのだろうか・・流れのなかからは難しいにしても、少なくともカウンターやセットプレーから決定的なチャンスを作り出す・・

 ・・カウンターは個の才能がベース・・だからレッズは、ツボにはまれば抜群に危険な速攻を仕掛けていける・・マルシオ、原口元気、山田直輝、柏木陽介、そして優れたポストプレーを披露するシーンもあったデスポトビッチ・・

 ・・久しぶりに観たレッズだけれど・・「それなり」に良くなっているのかもしれないと感じていた・・攻め方の全体的なイメージが、より深く共有されるようになってきたということなのかもしれない・・両サイドに「張る」サイドハーフの個人突破能力を最大限に活かせるように、効果的にサイドゾーンを活用しようとするレッズ・・

 ・・そのもっとも効果的な仕掛けプロセスは、何といってもサイドチェンジ・・でもサ・・

 ・・要は、相手は、そんなレッズの仕掛け(そのプロセスの)イメージを、しっかりと把握しているということなんですよ・・だから相手守備は、それなりに対応する・・逆にレッズは、そんな相手の意図を「逆利用」することが出来ない・・

 ・・レッズは、両サイドが広く「張る」というイメージを徹底しているからこそ、逆に、周りの、ボールがないところでの動きの量と質が減退してしまっていると感じるのですよ・・

 ・・両サイドハーフの両翼ゾーンには、常に決められた選手が「張って」いる・・そして「そこ」を出来るかぎり活用していかなければならない・・そんな仕掛けイメージがチームに深く浸透しているからこそ、フロンターレが魅せたような、後方からの縦横無尽の追い越しフリーランニングや、それを活用するコンビネーションが出てこない・・

 ・・というわけで、レッズがチャンスを作り出すのは、カウンターやドリブル勝負、はたまたセットプレーからの一発勝負がメインということになってしまう・・

 ・・そこで、ゼリコ・ペトロヴィッチに聞いた・・

 ・・監督が言われたように、フロンターレの方が良い(組織)サッカーをやったと思う・・それに対してレッズが、チームの仕掛けイメージがステレオタイプになっているようにも感じている・・いまのレッズには、フロンターレが魅せたような、後方からのオーバーラップを活用して数的優位な状況を作り出し、危険なコンビネーション「も」繰り出していくといった「仕掛けの変化」が必要なんだと思う・・そのために、あまりサイドハーフのポジションを固定する(張らせる)のではなく、もう少し柔軟に、選手たちの仕掛けイメージを解放してやってもいいと思うが?・・

 ・・うなづきながら聞いていたゼリコ・ペトロヴィッチ・・決して、わたしの質問の骨子を否定することなく、こんなニュアンスの言い回しをしていた・・

 ・・言われるとおり、フロンターレの方が良いサッカーを展開したと思う・・我々の場合は、山田直輝や原口元気がもっと活発に走れるようになれば、事態は好転していくはずだ・・この試合では田中達也も交代出場したが、まだまだコンディションに難があった・・ただ、そんなに良いサッカーではなかったにせよ、しっかりと結果を出したことも事実だ・・昨シーズンは、あまり出ていなかった選手も多い・・まだまだチームが完成するまでには時間がかかるんだ・・

 スミマセン・・どうも睡魔に勝てそうになくなってきた。

 とにかくゼリコ・ペトロヴィッチが、様々な事実をしっかりと理解し、発展へ向けた対策を着実にイメージして実行しているのは確かなことのようです。たぶん彼も、様々な意味合いを内包する「柔軟なマネージメント術」を身につけつつあるということなのかもしれないね。

 彼の優れた学習能力に期待したいですね。やっぱり選手は、指揮官の「ストロングハンド」を求めているわけだから・・。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。