湯浅健二の「J」ワンポイント


2011年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第20節(2011年8月6日、土曜日)

 

レッズは良くなっている・・解放された意志がアップしつづけている!?・・(RvsVI, 2-3)

 

レビュー
 
 まず、松田直樹から・・。素晴らしい、日本を代表するディフェンダーでした。

 ドイツからも何件か、彼について問い合わせがあり、それに対して下記のようなニュアンスの内容を伝えました。

 ・・前兆のない急性心筋梗塞だった・・そして34歳という若さ・・だからショックも大きかった・・何人もの(代表)選手が、彼の意識が戻ってないことを知りながらも、トレーニングの後に数百キロをクルマで移動して彼を見舞った・・彼は、サッカーファンだけではなく、選手からも慕われ、高く評価されたプロプレイヤーだった・・彼は、横浜マリノスだけではなく、アトランタでブラジルを破った試合、シドニーオリンピック、日韓ワールドカップなど、日本代表でもチームの中心として「熱い」闘いを魅せつづけた・・亡くなった日から、ほとんどの報道(ショー)では、松田直樹がトップニュースになっている・・などなど・・

 わたしは、プレイヤーとしての松田直樹しか知りません。だから、彼のプレーをイメージしながら、コラムを書いています。合掌・・

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 ということでレッズ対ヴィッセル。

 所用が重なったことで、この試合はテレビ観戦ということになってしまった。それでも、BS1の中継技術(ディレクターのウデ!?)が優秀だったから、「痒(かゆ)いところに手が届く」ような観戦を楽しむことができました。デジタルになったんだから、他局も、もっともっと「カメラを引く」ことで、ボールがないところでのドラマを表現しましょうよ・・ネ。

 ということで試合だけれど、ヴィッセル決勝ゴールの場面、ありゃ、まったくPKじゃなかったね。マルシオが全力で伸ばし切った両足は、相手よりも先に(そして相手を倒すことなく=相手は、マルシオが伸ばした足に『直後のタイミング』で引っ掛かった!!)完全にボールを「はさみ込んで」いたからね。(特に後半)良くなったレッズだったから、とても残念な敗戦(PK)ではありました。

 まず、レッズが「それなりに良くなっている」というポイントから入りましょうかね・・あっと・・まあ、全体的なゲーム内容も含めて、例によって、ランダムな箇条書き形式にしましょう・・その方が読みやすいっちゅう読者の方が多いんだよ・・フンッ!・・

 ・・たしかに両サイドハーフはまだまだ両翼に大きく張る傾向は強い(特に、サイドから切れ込むドリブル勝負をイメージする原口元気!)・・それでも、全体的には、以前ほど決まった選手がサイドゾーンに「張り付き過ぎる」ということはなくなった・・

 ・・要は、選手たちが(自分主体に!?・・もちろんゼリコも認めているはずだよ!)、攻守にわたって、より自由にポジションチェンジを繰り返すようになったということです・・

 ・・このテーマ(両サイドに決まった選手が張り付きすぎるステレオタイプサッカーというテーマ!)については、5週間ほど日本を空けていた筆者の見方が「硬直化」していたのかもしれない・・しっかりと観察したら、選手のプレーイメージが「より」解放されはじめていると感じましたよ・・

 ・・それでも前半は、完全に、ヴィッセルのプレッシングの勢いに「呑み込まれて」いたことも確かな事実・・ボールはキープしているけれど、人の動きが出てこない(連動しない)し、後方からのサポートの動きが少ないことで人数が足りず、相手の裏スペースを攻略できそうな雰囲気すらも醸(かも)し出せなかった・・

 ・・ただ後半(山田直輝が交替してしまったことは残念だったけれど・・)田中達也とマゾーラが出てきてから、ガラリと様相が変わった・・まさにフォートップ・・ゼリコ・ペトロヴィッチが、「レッズらしく(男らしく!?)全員で前から行け〜〜っ!!」てゲキを飛ばしたらしい・・

 ・・そして、まさにその言葉どおり、左サイドに張り付く原口元気を除き、デスポトビッチ、田中達也、マゾーラ、そして後方から押し上げるダブルボランチの柏木陽介とマルシオが、縦横無尽のポジションチェンジを交え、大パワーで仕掛けていくのですよ・・

 ・・あの仕掛けエネルギーは、ホント魅力的で、凄(すご)みにあふれていた・・そして、田中達也の追いかけゴール、マゾーラの同点ゴールと、まさに順当な得点を重ねていくのですよ・・

 ・・でも、その代償とでも言いましょうかネ・・レッズ守備は、何度も、何度も、ヴィッセルの危険なカウンターを喰らう羽目に陥った・・その危険なカウンターを仕切ったキーパーソンは、言わずと知れた(後半途中から交代出場した)大久保嘉人でした・・

 ・・素晴らしく落ち着いた(スキルフルで効果的な)ボールキープから、レッズ守備の薄いゾーンへ軽快にボールを展開しちゃう・・それだけじゃなく、自身でも、チャンスを見計らって決定的ゾーンへ飛び出していく・・そして、打つと見せ掛けて、軽快にレッズ選手の守備イメージの「ウラを取るような」ラストパスを出しちゃう・・やっぱり天賦の才・・フムフム・・

 ・・そんなヴィッセルに対し、レッズも、前述した大迫力の仕掛けをガンガンとブチかまし続ける・・とはいっても、あまりにも勝負ドリブルでの仕掛けが多すぎる・・もちろん、調子の良い原口元気、田中達也、そしてマゾーラだから、彼らの才能を存分に活用しない手はない・・けれど、もっと組織コンビネーションもミックスすれば、より彼らの才能を活かし切ることができるのも確かな事実・・

 ・・良くなってはいるけれど、まだまだ組織コンビネーションという視点じゃ、以前の感覚を取り戻していないと感じている筆者なのでした・・

 ・・とはいっても、危険なコンビネーションを繰り出すためには、もちろん人数が必要だからね・・そのための後方からのサポートが、もっと必要になってくるよね・・でも、そのプロセスで、前後の人数バランスが崩れたら!?・・

 ・・「そのポイント」にこそ、監督の意志が明確に見えてくるんだよ・・リスクのないところに進歩もないという普遍的なコンセプトも含めてネ・・ゼリコ(ペトロヴィッチ)は、イビツァ・オシムとも接点があるんだろ!?・・

 ・・ゼリコは、もっともっと「行かせて」もいいと思うよ・・レッズには、それだけの才能が揃っているし、その絶対的バックボーンである守備意識「も」しっかりとマネージしておけば、前戦からのチェイス&チェックも含む効果的な組織ディフェンスだってうまく回りはじめるだろうから、まったく問題ないさ・・

 ・・とにかく「ここからは」、チャレンジという標語を前面に押し出して「突っ張り」つづけましょう・・そうすれば、チームの雰囲気だってダイナミックになるし、そんなポジティブな意志が善循環をはじめるに違いない・・そして、そこから放散されるオーラがファンにも着実に届くでしょ・・

 この試合でのレッズを見ながら、ちょっと面白くなってきたな・・なんて感じていた筆者でした。

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 ちょっと話題は変わりますが・・。

 このところ、わたしが愛用しているウエストバッグやバックパックについて質問してくる方々が増えています。ということで、それを軽くご紹介することにしました。

 ブランドは、METAS(メタス)といいます。

 以前「サザビー」という有名ブランドのチーフデザイナーを務めていたわたしの友人が、10年前に独立して作り上げたプライベートブランド。その、痒(かゆ)いところにも楽に手が届くっちゅう感じの、実用的なアイデアが満載されたビジネスツールが、とても気に入ってます。

 METAS(メタス) が扱っているのは、わたしが愛用するウエストバッグやバックパックだけじゃなく、ショルダーバッグやハンドバッグ、はたまたボストンバッグやブリーフケース等もあります。

 全体的なデザインはオーソドックス(どこか懐かしいスタンダード・・というのがコンセプトらしい)だけれど、高質な材料の選択や、その素敵な組み合わせだけじゃなく、細かな気配りアイデアにも感嘆させられるスグレモノです。使い込めば込むほど(長寿もコンセプトの一環!?)、愛着がわいてくる。そして、安物とは違い、古くなればなるほど、素敵なチャック金具やおしゃれな裏地といった「細かなデザイン」が光り輝いてくる。

 ちょっと誉めすぎ!? まあ私は、メタスの哲学と、それを具現化したバッグ類を、とても気に入っているのですよ。

 様々なタイプのバッグを日々のアクションに活用している方々こそが、その細かな気配りアイデアを高く評価するに違いないと確信する筆者なのでした。ちょっと「押し」過ぎ!? あははっ・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。