湯浅健二の「J」ワンポイント


2011年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第23節(2011年8月24日、水曜日)

 

強固なスジの通ったガンバ(西野朗)のチーム戦術・・(GAvsRS, 2-0)

 

レビュー
 
 いや・・ホント・・大したものだね・・ガンバの西野朗監督。

 ここ何年もつづき、これでもかというくらい外部からの選手引き抜きに遭いながらも、(シーズン途中であるにもかかわらず・・新規に加入してくる補充選手をチームに組み込む作業も含めて!)最短期間で、再びチームをまとめ上げちゃう。

 もちろん、その絶対的なバックボーンは、西野朗のチーム戦術に、一本、強固なスジが通っているからに他ならないよね。その「スジ」が、チーム全体に深く浸透しているのですよ。そう、攻守にわたる組織サッカー。

 ・・最前線でゴールを量産するラフィーニャも含む、選手全員に共通する高い守備意識(≒強固な意志パワー)・・とはいっても、肝心なところでの気抜け(集中切れ)プレーが目立つことで、ちょっと失点が多すぎるけれど、まあ、それでも守備への意識が高いことは確かだと思う・・

 ・・だからこそ、誰もが攻守にわたる汗かきプレーをいとわない・・だからこそ、相互信頼関係が深化する・・だからこそ、人とボールが動きつづける組織サッカーと、そのなかでタイミングよく光り輝く個人勝負プレーのハイレベルなバランスによって相手の背後のスペースを攻略していくような、美しく勝負強い組織サッカーが体現される・・

 ・・そして、チーム内に、そんなクリエイティブな雰囲気が浸透しているからこそ、新規に参加してくる個の才能プレイヤーたちも、その多くがポジティブに感化され、組織プレーと個人プレーがハイレベルにバランスするようになる・・ダントツの得点力も頷(うなづ)ける・・

 ということで、海外の(特に中東の)チームが、ガンバの選手を欲しがるのも当然の成り行きということです。聞くところによると、ガンバ出身の(外国人)選手は、彼の地でも、おしなべて高質なプレーをつづけているそうな。

 それは、とりもなおさず、助っ人としてガンバに参加した外国人選手が、ガンバのサッカーのなかにこそ、サッカーの進化にとって本質的な価値が内包されていることを体感していたからに他ならない。彼らの多くは、ガンバで大きく発展した。そう、思う。まあ、大したものだ。

 ということで、これまた大人の組織サッカーで競り勝った(このガンバの勝利を表現する形容句としては、ちょっと舌足らずだとは感じるけれど・・)レイソルとの首位攻防戦について、簡単にレポートする気になった。

 あっと・・。レポートをアップする気になったもう一つの背景要因には、言わずもがなだけれど、テレビ中継の「質」もありました。要は、カメラワークが、しっかりと、ボールがないところでのドラマまで捉えていたということです。

 テレビの映像作りについては、ホントに、腹が立つことが多い。

 とにかくカメラが「中途半端にボールに寄りすぎ」なのですよ。ディレクターやカメラマンは一体何を考えているのだろう。選手の顔の表情の変化を見られることの方が、サッカーの本質的な魅力を表現するよりも大事だと思っているのだろうか。

 それに対して、このゲームを中継した局のカメラワークは、本当に安定していた。

 たまには「寄り過ぎ」ることもあるけれど、大体は、ディレクター&カメラマンも、彼ら自身が、「ボールがないところでのドラマ」を楽しみに映像作りをしている・・なんてことを感じるくらいハイレベルなカメラワークを魅せつづけているのです。

 あっと・・またまた脱線。でも、大事なテーマだからご容赦アレ。

 ということでガンバ対レイソルだけれど、両チームのサッカー内容を比べたら、「微妙な差」で、ガンバが微妙な勝利を収めたと言えるだろうね。

 たしかにレイソルは主力を欠いていた。それでもガンバのサッカーには、そのことから「タラレバ論議」が出てくるような雰囲気を抑えてしまうだけの内容があったと思うわけです。

 ラフィーニャ、キム・スンヨン、イ・グノの前戦トリオが、例によって縦横無尽にポジションをチェンジしながら、2列目の二川、そして後方から押し上げてくるガンバ中盤の絶対的リンクマン(&ゲームメイカー&チャンスメイカー&シャドーストライカー、etc.)遠藤保仁と両サイドバックとの、有機的なコンビネーションを魅せつづける。

 そこには、以前のような「過度のポゼッション志向」は感じられず、シュートを打つために今何をやるべきかというテーマを突き詰めた「仕掛けプロセス」が見られたと思う。要は、遠藤保仁を中心に、よりタテへ積極的に仕掛けていくアグレッシブサッカー。

 まあ、そこには、ラフィーニャという素晴らしい選手を補強できたということもあるよね。

 テレビ中継のなかで、ラフィーニャが、ガンバはどのようなサッカーをするのかというテーマを突き詰めたというハナシがあった。要は、新しく加入したラフィーニャが、ガンバのサッカーを観察し、分析することで、どのようなプレーをすべきか、しっかりとイメージ作りをしたっちゅうことだろうね。素晴らしい・・。

 その結果が、ここまでのゴール量産のバックボーンだったらしい。そりゃ、ラフィーニャが、ガンバのサッカーをどのように捉えたのか聞きたくなるよね。もちろん、彼のボールがないところでの効果的なクリエイティブプレーの量と質を見ていれば、その答えは言わずもがなだけれどサ。

 やっぱり、組織プレーと(才能による!)個人勝負プレーがハイレベルにバランスする組織サッカー・・っちゅう表現がガンバに相応しいキャッチフレーズなのかな〜・・。まあ、西野朗がアグリーするとは思えないけれど・・あははっ・・

 それにしても、あの、殺人的な蒸し暑さのなかでも、これほどハイレベルなサッカーを展開した両チームに拍手ではありました。

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 ちょっと話題は変わりますが・・。

 このところ、わたしが愛用しているウエストバッグやバックパックについて質問してくる方々が増えています。ということで、それを軽くご紹介することにしました。

 ブランドは、METAS(メタス)といいます。

 以前「サザビー」という有名ブランドのチーフデザイナーを務めていたわたしの友人が、10年前に独立して作り上げたプライベートブランド。その、痒(かゆ)いところにも楽に手が届くっちゅう感じの、実用的なアイデアが満載されたビジネスツールが、とても気に入ってます。

 METAS(メタス) が扱っているのは、わたしが愛用するウエストバッグやバックパックだけじゃなく、ショルダーバッグやハンドバッグ、はたまたボストンバッグやブリーフケース等もあります。

 全体的なデザインはオーソドックス(どこか懐かしいスタンダード・・というのがコンセプトらしい)だけれど、高質な材料の選択や、その素敵な組み合わせだけじゃなく、細かな気配りアイデアにも感嘆させられるスグレモノです。使い込めば込むほど(長寿もコンセプトの一環!?)、愛着がわいてくる。そして、安物とは違い、古くなればなるほど、素敵なチャック金具やおしゃれな裏地といった「細かなデザイン」が光り輝いてくる。

 ちょっと誉めすぎ!? まあ私は、メタスの哲学と、それを具現化したバッグ類を、とても気に入っているのですよ。

 様々なタイプのバッグを日々のアクションに活用している方々こそが、その細かな気配りアイデアを高く評価するに違いないと確信する筆者なのでした。ちょっと「押し」過ぎ!? あははっ・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。