湯浅健二の「J」ワンポイント


2011年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第24節(2011年8月27日、土曜日)

 

守備のせめぎ合いマッチ・・それでも興味深いテーマは山積みだった・・(SPvsM, 0-0)

 

レビュー
 
 厳しい気候条件のなか、両チームともに全力を尽くして闘ったけれど、結局はスコアレスドローという結果に落ち着いた。

 全体的なゲーム内容だけれど、シュート数が示しているとおり(エスパルス=14本、マリノス=7本)、エスパルスに一日の長があった。でもネ・・、ここがサッカードラマの「妙」ということになるわけだけれど、本当に決定的なゴールチャンスという視点では、マリノスの方に分があったんだよ。

 前半、まったくシュートが打てなかった(攻撃のカタチさえ作り出せなかった!)マリノスだけれど、一本のタテパスからエスパルス守備のミスを誘い、走り込んだ小野裕二が、ゴール手前10メートルから全くのフリーシュートを放つなんていう決定機があった。

 また後半には、30分あたりまで一本もシュートを打てなかったマリノスが、交替出場したキム・クナンの強引なシュートをきっかけに、連続的に絶対的ゴールチャンスを掴むのですよ(谷口博之のブロックシュートがバー直撃!)。

 そんなゲーム展開も、とても興味深かった。内容と結果の相克!? ということで、この試合を総括したら、まあ、両チームの「守備合戦」ってな構図になりますかね。

 特にエスパルス。

 一時は、大量失点での連敗がつづくというジリ貧のリーグ展開だったのに、ここにきて、しっかりと持ち直しはじめた。ゴトビ監督の「守備意識に対するてこ入れ」が効いたことと、新加入の元オランダオリンピック代表ヨン・ア・ピンが、チームに(殺人的な高温多湿気候に!?)慣れてきたことでチカラを発揮しはじめたことが大きい。

 そして両チームが誇る強力なセンターバックコンビの活躍。それもまた見所十分だった。

 もちろん、スペース攻略からのシュートチャンス演出という、本来あるべきサッカーの見所じゃなく、忠実&ダイナミックな「有機連鎖」アクションを積み重ねる、組織的なボール奪取シーンがゲームの主役を演じたという意味じゃ、まあ、見方によってだけれど、エキサイティングな要素に欠けるゲームだったとも言えるけれどネ。

 その他にも、いくつかの分析ポイントがあった。例えば、中村俊輔が不在というマリノスの現実・・

 中村俊輔の代わりに長谷川アーリアジャスールが先発し、例によって、強い意志を感じさせる闘いを展開したけれど、結局は存在感を示すことはできなかった。そして、マリノスの攻撃プロセスから、一本スジの通った「仕掛けイメージ」が霧散してしまうのですよ。

 まあ、アーリアにとっては、中村俊輔のパフォーマンスと比べられるという厳しい現実と対峙したわけで、その意味では、とても貴重な学習機会になったことでしょう。

 要は、中村俊輔の欠場によって、正確でスキルフルなトラップ&ボールキープから演出する「中盤のタメ」や、正確無比な「ウラ取りのスルーパス(ロングパス)」等といった、仕掛けイメージの「コア」が抜け落ちてしまったということです。

 そのことで、ボールがないところでの仕掛けアクション(コンビネーションを主導する、パスレシーブのフリーランニング等)の量と質も、格段に減退してしまった。

 要は、兵藤慎剛や谷口博之、はたまた両サイドバックの「押し上げダイナミズム」も、最後の最後まで(いつものレベルまで!)アップしていかなかったということです。それだけじゃなく、中村俊輔による危険なミドルシュートや、セットプレーでの高質な演出力の欠落も、とても痛い。

 とにかく、マリノスにとって、中村俊輔の離脱によるネガティブな影響は想像以上に大きそうだと感じていた筆者なのでした。

 とにかく、攻撃プロセスの基盤となるイメージ創造力の減退が(代替が効かないという意味も含めて)ホントに、とても痛い。とはいっても、まあ、俊輔のケガは現実なんだから、ここが、木村和司監督のウデの見せ所っちゅうことになるか。フムフム・・

 ということで試合の総括だけれど・・。

 たしかに、攻撃の見所に欠ける面はあった。とはいっても、そこには、両チームのディフェンスでのせめぎ合いや(この試合のカメラワークも寄り過ぎ・・ボールがないところでのディフェンダーと相手パスレシーバーのイメージ攻防が、うまく観察できなかった・・フ〜〜)、前述した勝負の流れの「妙」、エースの離脱によるネガティブ影響、新メンバーや代替メンバーの光と影などなど、興味深いテーマも見いだせたから、わたしは楽しんでいましたよ。

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 ちょっと話題は変わりますが・・。

 このところ、わたしが愛用しているウエストバッグやバックパックについて質問してくる方々が増えています。ということで、それを軽くご紹介することにしました。

 ブランドは、METAS(メタス)といいます。

 以前「サザビー」という有名ブランドのチーフデザイナーを務めていたわたしの友人が、10年前に独立して作り上げたプライベートブランド。その、痒(かゆ)いところにも楽に手が届くっちゅう感じの、実用的なアイデアが満載されたビジネスツールが、とても気に入ってます。

 METAS(メタス) が扱っているのは、わたしが愛用するウエストバッグやバックパックだけじゃなく、ショルダーバッグやハンドバッグ、はたまたボストンバッグやブリーフケース等もあります。

 全体的なデザインはオーソドックス(どこか懐かしいスタンダード・・というのがコンセプトらしい)だけれど、高質な材料の選択や、その素敵な組み合わせだけじゃなく、細かな気配りアイデアにも感嘆させられるスグレモノです。使い込めば込むほど(長寿もコンセプトの一環!?)、愛着がわいてくる。そして、安物とは違い、古くなればなるほど、素敵なチャック金具やおしゃれな裏地といった「細かなデザイン」が光り輝いてくる。

 ちょっと誉めすぎ!? まあ私は、メタスの哲学と、それを具現化したバッグ類を、とても気に入っているのですよ。

 様々なタイプのバッグを日々のアクションに活用している方々こそが、その細かな気配りアイデアを高く評価するに違いないと確信する筆者なのでした。ちょっと「押し」過ぎ!? あははっ・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。