湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2011年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第29節(2011年10月16日、日曜日)
- 最後の最後にギリギリのドラマが待っていた・・(FRvsAL, 1-2)
- レビュー
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- いや・・ホント・・観ていて、ものすごく疲れる勝負マッチだった・・もちろん心地よい疲労感だから誤解のなきように・・あははっ・・
この勝負マッチだけれど、このところリーグでの調子がアップしつつあるなかで、無様な姿を地元ファンにさらせないホームゲームを戦うフロンターレが、降格圏が忍び寄ってきていることで是が非でも勝ち点3をゲットしたいアルビレックスの挑戦を受けたという構図。
「挑戦を受けた」と書いたのは、やはり実力では、フロンターレに一日の長があるからです。そしてゲーム内容も、まさに、その事実を反映したものになった。
そしてそんなゲーム内容に、冒頭で「ホントに疲れる勝負マッチだった・・」と表現した背景要因が内包されていたっちゅうわけです。
・・立ち上がりからガチンコの勝負を挑んでいく両チーム・・そのガチガチのぶつかり合い(もちろん迫力満点のボール奪取勝負の応酬という意味合いだよ!)は、その後のエキサイトメントを予感させるに十分な刺激だった・・
・・ただそんなゲーム展開が、数分もすると、アルビレックスがゲームを支配し、フロンターレが、ジュニーニョ&矢島卓郎というスピードスターズと中村憲剛を中心に必殺カウンターをブチかましていくという展開へ変容していく・・
・・それは、ボールをキープするけれど、まったくといっていいほどチャンスを作り出せないアルビレックスに対し、完全にフロンターレが「勝負のイニシアチブ」を握るという展開・・何度フロンターレが、実のあるゴールチャンスを作り出したことか・・
・・その流れのなかで、前半43分にフロンターレが、絶対的なゴールチャンスを作り出す・・誰もが、どうしてゴールにならないの?と、目を疑ったはず・・それでもゴールを割れない・・
・・そんなアルビレックスにとってはジリ貧ともいえそうな展開のなか、唐突にアルビレックスに勝負の女神を微笑むのですよ・・
・・フロンターレのペナルティーエリア内で、もう「それしかない」というボールキープからの勝負にチャレンジするミシェウ・・二人に囲まれ、ボールを失うのも時間の問題と思われた次の瞬間・・キュッと切り返したことで、自然なリアクションとして(!?)フロンターレ選手が足を伸ばした・・そして、その足がミシェウを引っかけてしまうのです・・PK!!
・・まさにそれは千載一遇のチャンス・・でも、ミシェウのシュートは、アルビレックスGK武田洋平のスーパーセーブに弾き出されてしまう・・フ〜〜・・「女神」が微笑んだと思ったのに・・
・・後半・・今度はフロンターレがゲームの流れを支配しはじめる・・ようやく、実力の差が具体的に見えるような展開になってきた!?・・フムフム・・でも、そんな試合の流れって、実はアルビレックスの「ツボ」だったりして!?・・
・・でも、そこはフロンターレ・・ゲームを支配しながら、しっかりとチャンスも作り出すのですよ・・これまた、「どうしてゴールになったり、決定的チャンスにつながらないの?」といったシーンが一度ならず、二度、三度・・
・・そうだね〜・・これは、もう完全にフロンターレが勝負を決めちゃうような流れになりはじめたね〜・・その時間帯、私はそんなことを感じていた・・でも・・
・・後半13分・・これまたフロンターレが決定的なチャンスを作り出した直後のこと・・フロンターレ中盤の安易なパスミスを拾ったミシェウ・・これまた安易なアタックに突っ込んできた稲本潤一を軽くかわしてそのままドリブル・・フロンターレ守備は、そのミシェウのアクションに引きつけられる・・
・・そして次の瞬間、左サイドでまったくフリーになっていたブルーノ・ロペスへの効果的なサイドチェンジパスが送り込まれる・・
・・そんな仕掛けの流れを、後手後手に対応せざるを得なくなったフロンターレ守備・・それに対して、フリーでパスを受け、とても余裕のあったブルーノ・・状況は明確にブルーノに有利・・そして最後は、余裕なくチェックに入ったフロンターレディフェンダーを軽くかわし、そのまま右足で芸術的なシュートをゴール右上隅に決めた・・先制カウンターゴール!!・・
・・その後は、もちろんフロンターレが前へくる・・その圧力は、1.5倍くらいかな・・ちょっと迫力が足りないとも感じられた・・でも、とにかくフロンターレは、ガンガンと前へくる・・そう、同時に、アルビレックスのカウンターチャンスは増幅する・・フ〜〜・・
・・そして後半24分・・これまた、フロンターレが決定的チャンスを「自ら」潰した次の展開で、ミシェウのカウンター突破が爆発した・・すごいスピードと迫力だった・・最後にクロスボールを受けたブルーノ・ロペスは、もうプッシュすればよいだけ・・アルビレックスの追加ゴール!!・・
・・さて・・ということで、ここからホンモノのドラマが始まるわけです・・スミマセンね、ゲーム展開を追いかけてしまって・・でもサ、とにかく、疲れる(だからこそ手に汗握る!)ゲーム展開だったことを表現したかったわけだから・・御容赦アレ!!・・
・・ということで、もう何も失うモノがなくなったフロンターレが、ガンガンと前へ行く・・そして、その勢いに押されるように無益なファールを冒した(審判のホイッスルが吹かれた後、ボールを故意に移動させた!)アルビレックスの菊池直哉が、二枚目のイエローで退場になってしまうのですよ・・
・・これで、その後のアルビレックスのやるべきサッカーが決まったわけだけれど、方向性が完璧に決まったことは、良かったのか、それとも裏目に出るのか?・・それは、ひとえに、選手たちの意識(イメージ)と意志が、どのくらい統一されているかに掛かっていた・・さて・・
・・そこから、基本布陣を「4-4-1」とした(黒崎久志監督の弁)アルビレックス・・でも私の目には、ちょっと下がりすぎ傾向が強いと映っていた・・どうも、バイタルエリアから後方のゾーン(もちろんフロンターレにとっての手前ゾーン!)をフリーにし過ぎていると感じていたのです・・それでも、ギリギリのところでフロンターレのプレッシャーを凌(しの)ぎつづけるアルビレックス・・
・・とても興味深い展開だったね・・とにかく、相手の強化守備ブロックをいかに崩していくのかという普遍的なテーマが内包されていたわけだから・・
・・私の目には、ちょっと下がりすぎ(最終ゾーンでの人数が増えることで肝心な勝負所でのマークが甘くなってしまう!)と映っていたアルビレックス守備ブロックだけれど、結局は、最前線ゾーンのスペースを潰すことで、(一見したところ!?)後方からのチャレンジのタテパスを簡単には入れさせないという「やり方」が功を奏していたとも言えそうだった・・でもネ・・
・・そう、結局は、そのことが(後方の人数を増やすことで必然的に発生してしまう、肝心な勝負所でのマークの緩さが!)最後の勝負ドラマをクライマックスへと導いていくのですよ・・フムフム・・
・・まず後半43分の、ジュニーニョの追いかけゴール・・クロスを矢島卓郎が胸で落とし、動きのなかで、偶発的にまったくフリーになったジュニーニョが見事なミドルシュートを決めた・・
・・そしてロスタイム・・まず後半47分に、フロンターレの小林悠が、そして同49分には、菊地光将が、それぞれ、まさに決定的なシュートを放つのですよ・・それは、両方とも、完璧な同点ゴールになった「はず」の決定機だった・・フムフム・・
そこで、黒崎久志監督に、「あのピンチは、現場の人間にとっては、決して看過できない、とても重要な意味合いをもつシーンだったと思うが・・?」と聞いた。
「その通りです・・だから、ツキにも恵まれたという意味合いで、相手に助けられた部分もあったという表現をつかったわけです・・最後は、テクニカルというよりも、気持ちでフロンターレを上回っていたという部分もあったと思う・・」
同じシーンについて、「・・アレは決めなければいけなかったと思うのだが・・?」という質問を相馬直樹監督に投げた。
「たしかに決めなくてはいけなかった・・泥臭 さ、勝ちに対する執念という要素もあると思う・・選手たちは、そんな心理ベースで、ギリギリまで闘ったとは思う・・でも本当は、その要素で相手を上回わならくてはいけなかった・・その視点で、新潟さんの執念が上回ったのかなと思う・・」。フムフム・・
とにかく、最後の数分間に飛び出したドラマチックな展開には、手に汗握ったですよ、ホントに。とても素晴らしいエキサイティングマッチだった。サッカーの内容的にも、また勝負という視点でも。あ〜、面白かった。
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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