湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2012年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第14節(2012年6月16日、土曜日)
- 素晴らしい守備をベースに、魅力的なダイナミックサッカーをブチかましたマリノス・・(MvsFCT、 1-0)
- レビュー
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- 「グッドルーザーかもしれないけれど、でもオレは、負けるのは嫌いなんだ〜!」
試合後の記者会見。FC東京のランコ・ポポヴィッチ監督に、こんな質問を投げた。
「とても冷静に、事実をしっかりと分析している・・それは、とても立派な姿勢だと思う・・だから聞きますが、ポポさんは、ご自分のことをグッドルーザーだと思いますか?」
冒頭の発言につづけて・・
「とにかく、敗戦の内容をしっかり分析することが大事なんだ・・サッカーだから、負けることはある・・ただ今日の負け方は、とても良くなかった・・ホン
ト、とても良くない・・我々は、一つも決定的チャンスを作り出せなかったんだからね・・今日のゲームでは、我々の悪いところが(凝縮して!?)出てしまっ
た・・まあ、でも、こういう日もあるさ・・大事なことは、このような日を繰り返さないことなんだよ・・我々は、そのために何を修正するのかは分かっている
んだ・・」
彼は、こんなニュアンスの内容もコメントしていたっけ。
「悲しい試合だった・・こんなゲームだったから、多くを喋る必要なんてないよ・・ただ、一つだけ良かったのは、全てが悪かったということかもしれない・・あっと・・最悪内容のゲームでも、最少失点に抑えられたという運には恵まれたよな・・」
そう、この試合でのFC東京は、最悪だった。まさに、何も出来なかった。それほど、マリノスのサッカーが、素晴らしかったんですよ。
まず何といっても守備がスーパーだった。
富澤清太郎と兵藤慎剛のボランチコンビ、その前の、中村俊輔、齋藤学、小野裕二、そしてマルキーニョス。彼らは(まあ富澤清太郎はアンカー気味だけれど・・)まさにクルクルと、縦横無尽にポジションチェンジを繰り返すのですよ。
もちろん両サイドバック(小林祐三とドゥトラ)も、そんなダイナミズムの輪のなかに、どんどんと絡んでいく。そんな両サイドで繰り広げられるタテのポジションチェンジは、見応え満点だった。
そんなダイナミックな攻撃を仕掛けていくマリノスだけれど、それでも次の守備に「穴」が空くことはない。それは、彼らが、マルキーニョスも含めたまさに全員が、ものすごくハイレベルな「守備意識」を魅せつづけていたからです。
ボールを奪われたら、一人もサボることなく、瞬間的に攻守を切り替えて全力ディフェンスに入るマリノス選手たち。その忠実な「汗かきの姿勢」には感動さ
え覚えた。だからこそ、サイドバックも含め、チャンスに恵まれた誰もが、最前線のスペースへと、まったく後ろ髪を引かれることなく飛び出していけるので
す。フムフム・・
この試合では、守備的ハーフの「はず」の兵藤慎剛が決勝ゴールをブチ込んだんだけれど、それ以外でも彼は、二度、三度と、FC東京バックラインのウラに
広がる決定的スペースへ全力スプリントで抜け出し、決定的シュートチャンスや決定的ラストクロスのチャンスを作り出した。
その飛び出しがチャンスにつながったのは、もちろん「そこ」にタテパスが出たからなんだけれど(その最終勝負コンビネーションをマネージするのは中村俊輔!!)、とにかく彼らの、最終勝負におけるイメージ・シンクロ・コンビネーションには感動させられた。
守備と攻撃は表裏一体。でも、やっぱり、サッカーの絶対的なベースは「守備にあり」なんだな。
マリノスの攻撃に(その縦横無尽のポジションチェンジに!)素晴らしい勢いが乗っていたのは、前述したとおり、彼らのディフェンスが(守備意識が=闘う意志が!)素晴らしかったからに他ならないのです。
それにしても、マリノスの攻めのダイナミズムはレベルを超えていた。
組み立てプロセスでは、中村俊輔が音頭を取る。タメあり、中盤のスペースをつなぐ高速ドリブルあり、はたまた相手を引きつけて繰り出すスーパースルーパスあり。
もちろん中村俊輔は、シンプルな「リズム」のボールの動き(パス回し)も積極的にリードする。そして、そんなシンプルなボールの動きが、マリノス選手の
プレーイメージに確実に刻み込まれているからこそ、大胆で忠実な「複合した人の動き」も出てくるのです。そう、3人目、4人目の爆発フリーランニング・・
ハイレベルな組織サッカー。そして、そんな組織プレーが機能しているからこそ、マルキーニョスや小野裕二、はたまた齋藤学といった個の才能がタイミングよくブチかます「勝負のドリブル」が素晴らしい効果を発揮する。
この試合でのマリノスは、まさに、「組織」と「個」が、これ以上ないほど美しく、ダイナミックにバランスした高質なサッカーを魅せてくれた。私は、心から楽しんでいた。
今シーズンのマリノス。
わたしはマリノスの開幕ゲーム(対レイソルのアウェーゲーム)をみた、そして今シーズンの彼らは「やる」に違いないと思った。そのゲームのコラムは「こちら」。
次に彼らを観たのは、第9節、レッズとのアウェーマッチだった。そのコラムは「こちら」を参照していただきたいのですが、そこでもマリノスは、素晴らしいサッカーを展開した。開幕ゲームから、その第9節まで、大きく負け越していたにもかかわらず・・
彼らは、やっと、(サッカー内容でも結果でも!?)本格的な上り調子のベクトルに乗ったということなんだろうね。今のマリノスが、リーグ屈指のサッカー
を魅せていることに異論をはさむ方はいないでしょ。わたしも、これから出来る限り頻繁に、彼らの爽快なサッカーを堪能させてもらうことにしますよ。
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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