湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2012年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第15節(2012年6月23日、土曜日)
- 両チーム(監督)のゲーム戦術が、極限のバトルを魅せた・・(RvsVE、 0-0)
- レビュー
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- 素晴らしく「動的に均衡」したエキサイティングマッチだった。攻守にわたるハイレベルなせめぎ合いが、最後の最後まで集中を切らさずグラウンド上に展開されつづけた。
そのことについては、観ていた誰もがアグリーだったはず。何せ、試合後は、両チームのサポーターが満足げに拍手をおくっていたからね。
「昨シーズンのベガルタは、守ることがメインだった・・でも、そんな堅守速攻というチーム戦術を徹底することで4位という好成績を残せた・・そして今
シーズンは、昨年のサッカーにプラスして、しっかりとボールをキープして(ポゼッション率を高めることで!?)ゲームのイニシアチブを握るような攻撃的
サッカーも展開できるようになった・・我々は着実にステップアップしていると思う・・」
「えっ、そのバックボーンは何かって?・・それは、昨シーズンの成功が、選手たちに、限りなく深くてパワフルな自信を植え付けたからだと思う・・」
ベガルタの手倉森誠監督が、私の質問に対するモノも含めて、そんなニュアンスの内容をコメントしていた。それも、自信にあふれた微笑みとともに・・。良
いね。そんな「ストロングハンド」に接するたびに、心地よい感覚に包まれる。このような優れた監督(優れたパーソナリティー)が存在感を発揮していけば、
日本サッカーは安泰だ・・。
さてゲーム。
この試合のポイント(テーマ)は、何といっても、前半から後半にかけて、レッズのミハイロ・ペトロビッチがイメージしていた「ゲームの流れ」だった。それは・・
・・今シーズンのベガルタは、昨シーズンからワンランク以上ステップアップして強いチームになっている・・前半から攻撃的なサッカーを展開したら、彼ら
の必殺カウンターに沈められてしまうかもしれない・・前半に、カウンターから失点するのは、とても悪いパターンだし、それではドツボにはまってしまう・・
・・だから前半は、まず安定したディフェンスから入っていこう・・そして、相手ディフェンスに疲れが見えてくる後半に勝負をかけていく・・
そしてレッズは、まさに、そのゲームプランどおりのサッカーを展開し、成功を収めかけた。そう、後半のレッズは、後半0分に仙台ゴールの右ポストを直撃
したマルシオ・リシャルデスのキャノン・ミドルシュートと、後半13分に仙台ゴールのバーを直撃した梅崎司のヘディングシュートに代表される決定機を、何
度も作り出したのですよ。
後半立ち上がりのレッズは(その基本的なプレーイメージ=意図と意志の内容=は!)、前半と比べれば、まさに別人。その変身ぶりには、誰もが驚かされたでしょ。もちろん私も・・
そして、レッズがチャンスを作り出すたびに、誰もが、「これは行けるぞ・・!」と大いなる期待を抱いた。でも結局は「タラレバ・・」になっちゃったね。あっと・・、久しぶりに登場した田中達也がブチ込んだ「幻のゴール」もあったっけね。フムフム・・
でも、やはり今年のベガルタは、一味も二味も違った。
彼らは、たしかに何度かピンチには陥ったけれど、最後の瞬間には、例によっての「粘りのディフェンス」を魅せつづけたのですよ。何度ガッカリさせられた
だろうか、レッズのシュートチャンスという場面で、最後の瞬間に、ベガルタの複数のディフェンダーが身を投げ出してシュートをブロックしちゃったシーンを
見せつけられて・・
そしてベガルタは、チャンスとなったら(高い位置でのボール奪取!?)、例えば右ハーフの太田吉彰が、まさに爆発する勢いの超速ドリブルで右サイドを駆
け上がってクロスを上げちゃう。もちろん逆サイドゾーンには、これまた超速スプリントで、そのカウンターの流れに忠実に「乗った」チームメイトが詰めてい
る。
そんな危険なカウンターに、何度レッズファンから悲鳴が漏れたことか。フ〜〜・・
この試合では、手倉森誠も、ミハイロ・ペトロビッチも、秘術を尽くしたゲーム戦術をブチかました。もちろん両チーム選手たちも、全力で、そんな監督のゲームプランイメージを、グラウンド上に体現した。
そんな視点でも、とても、とても見所豊富な勝負マッチだった。フ〜〜、面白かった。
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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