湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2012年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第2節(2012年3月17日、土曜日)
- 2試合をつづけてレポートします・・(RvsRS、1-0)(FCTvsGR、3-2)
- レビュー
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- 「こんな(浦和レッズを応援する!?)楽しみがなくっちゃ、日常の仕事なんて、詰まらなくてやってられないわよ・・」
「新しい監督さん(ミハイロ・ペトロヴィッチ!?)がやりたいサッカーを実現するためにゃ、とにかく全員が、一生懸命に走らなくちゃダメだよな・・」
この日は、ダブル観戦。それも、電車での移動です。埼スタから味スタへが鬼門だけれど、でもまあ、この日は時間がたっぷりあったから余裕の移動ということになりました。
とはいっても、埼スタから浦和美園駅まで運行している「メディアバス」に乗ってしまうと、途中の大渋滞に巻き込まれてしまう。だから、いつものように早足のウォーキング。テクテク・・脇目も振らずにテクテク・・
そして、その途中で、冒頭の会話が耳に入ってきたっちゅうわけです。他にも、レッズをサポートする参加(当事者)意識の高さや、サッカーに対する造詣の深さがビンビン伝わってくる会話のオンパレードだった。いつもながらに、レッズファンの本格度を再認識していた筆者なのでした。
ホント、レッズは幸せだよ。こんな本物のサポーターに支えられているんだから。
・・と、そんな風に書きはじめたけれど、連チャン観戦だったことで、時計はすでに真夜中を回っている。まあここは、例によって、テーマを短く列挙することで、ご容赦願うことにしま〜す・・
・・ということで、まずレッズ対レイソル・・この試合には、二つの流れがあった・・ガップリ四つの展開になった前半・・追いかけるレイソルが主導権を握った後半(立派なディフェンスを展開したレッズ・・という視点も!)・・
・・前半・・立ち上がりはレイソルがペースを握ったけれど、すぐにレッズも押し返していく・・もちろんそこでは、素晴らしく忠実で創造的&想像的なディフェンスが絶対的なベース・・そして彼らは、「そこ」から、とても高質な攻撃を繰り出していく・・
・・その攻撃だけれど、近頃では希にみるほど「高質」な組織コンビネーションが多く見られた・・人とボールが、とてもスムーズに、そして広く動きつづける・・原口元気も含め、シンプルにボールを動かしつづけるレッズ・・だからこそ、原口元気、梅崎司、平川忠亮といった「個」の勝負師たちが、スペースでボールをもって効果的にドリブル勝負を仕掛けていける・・フムフム・・
・・前半36分の決勝ゴールは、ジョルジョ・ワグネルの(デスポトビッチのフェイント動作が効果的に決まったことで派生した!?)コントロールミスからボールを奪ったデスポトビッチがたたき込んだ・・たしかにラッキーゴールではあったけれど、全体的なゲームの流れからすれば、そこには、十分な「必然性」もあった・・
・・後半・・追いかけるレイソルが攻撃の勢いを増幅させていく・・対するレッズは、カウンターで応戦・・
・・後半の見所・・それは、何といっても、守備でのレッズ選手たちの意識の高さと意志の強さ・・レイソル選手たちは、ボールのないところで、全くといっていいほどフリーになれない・・忠実な、ホントに忠実なレッズ選手たちの汗かきマーキングがつづく・・
・・後半に関して言えば、たしかにレイソルが二倍のシュートを打ったけれど、本当の意味のゴールチャンスという視点じゃ、レッズに軍配が上がるかもしれない・・レッズは、「ココゾッ!」のカウンターチャンスには、しっかりと人数を掛けて仕掛けていった!・・だから、チャンスの質では、レイソルを上回った!?・・
・・この試合、レッズ監督ミハイロ・ペトロヴィッチは、ワントップにデスポトビッチを起用した・・まだまだヘディングの競り合いやポストプレー(最前線での、タメのキープ)に課題を抱えるデスポトビッチ・・それでも、忠実さや闘う意志では群を抜くモノがある・・それは、たしかにチームメイトに勇気を与えたことだろう・・
・・また、相手の絶対的なエース(ゴールゲッター&チャンスメイカー)であるレアンドロ・ドミンゲスを抑えるというイメージで、阿部勇樹を「一つ」上げた・・そう、阿部勇樹をボランチへ上げた・・そして、その対策が大当たり・・この試合ほど、レアンドロ・ドミンゲスとジョルジョ・ワグネルが、効果的に抑えられたことはなかった・・
・・鈴木啓太と阿部勇樹で組んだ「ダブル・ボランチ」・・とても、とても効果的に機能した・・レイソルの攻撃の勢いを抑制するという視点でも、次の攻撃のゲームメイキングという視点でも・・
・・この二人が、攻守にわたって効果的にバックアップ機能を果たしたことで、両サイドハーフや(スリーバックの左サイドを務めた)槙野智章も、タイミングよく最前線へと仕掛けていけた・・
・・とにかく、ミハイロ・ペトロヴィッチは、良い仕事をしている・・
・・そのことは、攻守にわたるレッズ選手たちの意識の高さと意志の強さに如実に現れている・・そう、攻守にわたる「ボールがないところでのアクションの量と質」が、発展しているのだ・・
・・もちろん、まだまだ課題も多いけれど、でも「それ」は、今日のゲームで彼らが示した高質な「意識と意志」を見れば、まったく問題なく(早急に)解決されると確信できる・・
・・ミハイロ・ペトロヴィッチもまた、とても短い期間で「ウデ」を魅せはじめた・・どんどんと、今シーズンのレッズに対する期待が高まりつづけるじゃないか〜・・ホント、楽しみが格段に増えた・・
・・最後にレイソルだけれど(コメントが短くてスミマセン・・)・・彼らも、例によって「高みで安定したクリエイティブサッカー」を魅せている・・リーグやACLでは、まだ勝利はないけれど、ネルシーニョ監督が言うように、この内容からすれば、おのずと結果も付いてくる・・っちゅうもんです・・
・・今シーズンの「J」が、本当にエキサイティングな展開になるに違いないと確信でき、とてもハッピーな筆者なのでした〜・・
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さて、ということでFC東京vsグランパス戦。こちらも、変化に富んだエキサイティング勝負マッチへと発展していった。
前半のゲーム展開だけれど、たしかに半ばの時間帯にはホームのFC東京が盛り返していくシーンもあったけれど、全体的にはグランパスがイニシアチブを握っていたとするのがフェアな評価でしょ。一瞬のスキを突いて「タテパスに飛び出した」玉田圭司が、見事な先制ゴールを突き刺したことも含めてネ。
「どうして後半のような良いサッカーを前半から出来なかったのか・・相手に対して敬意を払いすぎていた!?・・遠慮していた!?・・後半のような良いサッカーを出来ることは知っていたから、今でも、どうも腑に落ちない・・」
記者会見で、FC東京のランコ・ポポヴィッチが、そんなニュアンスの内容をコメントしていた。
まあ、ピクシーが言うように、グランパスが良かったんだよ。だから、FC東京が、自分たちのサッカーを展開できなかった。サッカーは「相対ボールゲーム」だからね。
でも後半は・・
そう、まさにガラリと様相が変化していったのですよ。今度はFC東京がイニシアチブを握り返してゲームを支配し、大逆転ドラマを完遂してしまったのです。
ちょっと微妙だけれど、その背景に、後半のFC東京ディフェンスが、より前から(コンパクトに)プレッシングを仕掛けていくなど、アグレッシブに変化していったこともあったと思う。
そして後半13分には、そんなゲームの流れからすれば「順当」といえる同点ゴールを奪い取ってしまうのです。
ここでグランパスが動く。それまで、中盤ディフェンスで動き回り、忠実でエネルギッシュなチェイス&チェックを繰り返していた守備的ハーフ吉村圭司を下げ、センターバックのダニエルを投入したのです。そして、それまでセンターバックだった闘莉王をボランチの位置へ上げた。
そのとき私は、「エッ!!!???」と目を疑った。
吉村圭司は、攻守にわたって動き回り、グランバスの組織サッカーを支えていた。また前述したように、ボランチ、ダニルソンのパートナーとして、中盤守備(忠実チェイス&チェック)に奔走していた。ピクシーは、そんな、中盤ディフェンスの中心選手を下げてしまったです。
ピクシーは、試合後の記者会見で、ケガ明けの吉村圭司は、まだフィジカル的には、1時間プレーするのが限度だった・・と述べていたけれど、ホントにそうだったかな〜〜!? 私の目には、まだまだ十分にプレー出来ると映っていたけれど・・
とにかく、闘莉王が中盤守備に上がったことで、中盤守備のキモとなるべき「チェイス&チェック要員」がいなくなったのは確かなコトだった。実際、闘莉王は、守備では、まったくといっていいほど動かなかった(動けなかった!?)からね。
そして、グランパス最終ラインの前の「ヴァイタル・エリア」が空いてしまい、そこをFC東京に、続けざまに攻略されてしまうのですよ。そんなだから、FC東京の攻めの勢いが大きく増幅していくのも当然の成り行きだった。
ところで試合後の記者会見。ランコ・ポポヴィッチに、こんな質問をぶつけてみた。
「いまポポヴィッチさんは、美しく勝つということを目標にしてチーム作りに励んでいると言われた・・我々コーチにとって、美しく勝つことは、常に究極の目標だ・・そこで質問だが、美しいサッカーをやるためには、もちろん様々なリスクにチャレンジしつづけなければならない・・ただ、そのリスクをヘッジする(出来るかぎりリスクを抑えるための策を施す)必要もある・・もちろん、それは内部シークレットだろうから言えないかもしれないが、出来るならば、より具体的に、その方策を教えていただけないだろうか・・??」
「いや、隠すことは何もない・・ウチの場合、(守備の選手に対しても!)上がるなとは決して言わない・・でも、誰かが上がった場合には、前後左右のポジションを入れ替えることになるわけで、そこでは誰かがバランスを考えなくてはいけない・・誰でも上がっていい・・ただし、前後左右のバランスは崩すなと言っている・・そこでは、選手たちに考えさせ、工夫させている・・選手たちは、ゲームの流れのなかで、状況に応じた判断を求められるわけだ・・だからこそ、選手たちの優れた意識と意志が問われるのだと思う・・」
さて・・、ということで、ここでも、レッズ対レイソル戦レポートの末尾で書いた文章を繰り返すことにしま〜す。
レッズを見ても、FC東京を見ても、今シーズンの「J」がエキサイティングな展開を魅せてくれるに違いないと確信でき、とてもハッピーな筆者なのでした〜・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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