湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2012年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第25節(2012年9月15日、土曜日)
- ポイントだけを絞り込むつもりだったのに、結局とても長くなってしまった・・(マリノスvsレッズ、 1-2)
- レビュー
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- このゲームについては、多くのポイントを見出しました。ということで、例によって、箇条書きでまとめます。ご容赦アレ・・
・・まず何といっても、ゲーム展開の「揺動」というテーマ・・
・・ゲームの立ち上がりから素晴らしい「入り」を魅せ、スーパーな先制ゴールまでブチ込んだマリノス・・そしてその後は、守備ブロックを質実剛健に組織し、レッズの攻勢を完璧なまでに抑え込みつづけた・・
・・ボールを支配し、タテパスを入れるところまでは組み立てられていたレッズだったけれど、実際のチャンスメイクは、まったくといっていいほど機能していない・・たぶん、そのことは、選手たちも十分に感じていたでしょ・・でも・・
・・そう、槙野智章・・後方から(まあ・・自分の目の前に大きなスペースが出来たこともあって!?)抜群の勢いのドリブルで攻め上がっていったのですよ・・
・・それまでは、レッズの攻勢をうまくコントロールしていたマリノス守備ブロックだったけれど・・その、槙野智章がブチかました「攻撃の変化」には対応できなくなってしまった・・要は、ボールウォッチャーになってしまったということ・・
・・そして槙野智章は、柏木陽介とのワンツーで再びボールをコントロールし、一瞬タメてからラスト(タテへの)スルーパスを出すんだよ・・「そこ」に
は、もちろん柏木陽介が全力スプリントで走り込んでいた・・本当に、目の覚めるようなコンビネーションの同点ゴールだった・・
・・このシーンでは槙野智章が主役だったけれど、ゴールを決めた柏木陽介も、主役に負けず劣らずの存在感を発揮した・・
・・槙野智章のドリブルを加速させるワンツーコンビネーションの「壁」になり、その後は、フィニッシャーとして爆発フリーランニング(パスを呼び込む決定的な動き!?)をブチかましたんだよ・・
・・ところで柏木陽介・・彼は、たまに最前線で、爆発的なチェイス&チェックを仕掛けるんだ・・そう、相手ボールホルダーの追い込み・・もちろん、相手ボールホルダーのパスコースを制限するのが主な目的だよ・・
・・その、相手への「詰め方」が、殊の外効果的なんだ・・巧みに、相手が横パスで「逃げ」られないようなコースを取ってチェイスする柏木陽介・・そして相手ボールホルダーを、タテへフィードせざるを得ない状況に追い込んでいく・・
・・こうなったら、周りの味方もボール奪取勝負を狙いやすい・・そして、次、その次の競り合いでボールを奪い返しちゃうってなわけさ・・
・・そのボール奪取は、柏木陽介の貢献度が半分以上なわけだけれど、柏木陽介自身は、そのボール奪取は、既に過去のこととして次の攻撃アクション(ス
ペースランニング)に入っていっちゃうんだよ・・ホント素晴らしいネ・・たぶんミーシャも、柏木陽介には心から感謝していると思うよ・・
・・あっと、脱線・・そうそう、ゲーム展開の揺動がテーマだった・・
・・要は、レッズが同点ゴールを奪ったところから、マリノスの攻守にわたるダイナミズム(効果的な動きやアクション)が減退していったと感じられたということです・・
・・そのことについては樋口靖洋監督も、何となく認めていたっけね・・
・・だから私は、後半の立ち上がりでは、再びマリノスが攻勢に出てくると思っていた・・でも結局その勢いは半減ってな感じだったね・・
・・そしてゲームは、ダイナミックな均衡状態に入っていく・・エキサイティングな仕掛け合いのことだよ・・でも決してノーガードの打ち合いじゃない・・とてもハイレベルな仕掛け合い・・
・・この試合では、ゲームの流れに、そんな「揺動」があったというコトが言いたかった・・
・・そして、それに絡んで、もう一つのテーマがある・・
・・マリノスは、先制ゴールを奪ったことで一旦「落ち着いた」よね・・そう、守備ブロックを堅牢に組織した・・そんなプレースタイルの変化も、必要なタ
イミングでのペースアップが出来なかった要因かもね・・もちろん「そこ」には、実質的なリーダーシップの不在というテーマも内包されている!?・・フムフ
ム・・
・・それにしても、マリノスの前線カルテットは破壊力バツグンだった・・
・・小野裕二に齋藤学という(左右サイドに張る)突貫ドリブル小僧コンビ・・言わずと知れた強力ストライカーのマルキーニョス・・そして、その三人を意のままに操る中村俊輔・・
・・とても個性的な攻撃カルテット・・いや、「様々な個性の効果的な組み合わせ」と言った方が正しいでしょうね・・そのカルテットの攻撃力は、リーグ最高峰かもしれない・・それでも、マリノスの勢いが減退してからは、彼らの危険度も地に落ちてしまった・・
・・もちろんその背景には、レッズ守備ブロックのイメージが(マリノスのプレッシングと攻撃の内容に慣れてきたことで!?)アップしたこともあったでしょうし、美しい先制ゴールをブチ込まれたことでハートに火がついたこともあったんだろうね・・
・・何せ、マリノス先制ゴールのシーンじゃ、突貫ドリブル小僧の小野裕二に、右サイドをブチ抜かれ(三人のレッズ選手が置き去りにされ!)、最後は、ファーポストでまったくフリーで待ち構えるマルキーニョスに、完璧なクロスを送り込まれちゃったんだからね・・
・・そりゃ、レッズ選手たちもアタマにきたでしょ・・「次は絶対にやらせない・・!」と心に誓ったレッズ守備ブロックだった!?・・そしてだからこそ、その後のレッズ守備がマリノス前線カルテットの危険度を半減させられた!?・・フム〜〜・・
・・あっと、レッズ仕掛けの効果レベルが時間を追うごとにアップしていったというテーマだけれど、それについてミハイロ・ペトロヴィッチは、こんなコトも言っていたっけね・・曰く・・
・・立ち上がりの20分くらいは、サッカー内容はとても悪かった・・ただ、前半20分を過ぎたあたりから、阿部勇樹、永田充、そして槙野智章といった後
方の選手たちが、しっかりと押し上げられるようになったことで、レッズの攻めが、徐々に危険なモノへと変身していった・・
・・ウチのサッカーじゃ、チャンスを掴んだものは誰でも、攻撃の最終シーンまで絡んでいっていいんだよ・・そう、多くの「顔」がゴールに絡んでいくのがレッズのサッカーなんだ・・なんてコトも言っていたっけね・・フムフム・・
・・ところで鈴木啓太・・
・・ボールを持っても自信満々のプレー振りだったじゃありませんか・・たしかに前半はミスもあったけれど、「それ」で自信レベルが減退することもなかっ
た・・特筆だね・・とにかくボールを持った鈴木啓太は、とても実効レベルの高いリンクマンとして「も」機能していたんだよ・・
・・以前は、攻撃でのボール絡みのプレーは、鈴木啓太の強みではなかったよね・・そんなネガティブな印象もあったんだろうね、マリノスは、彼のところで
ボールを奪い返そうとしていたフシがあった!?・・でも実際は、何度も何度も、ボール奪取アタック(アクション)の逆を取られ置き去りにされていた・・
・・そんな、ボールを持った鈴木啓太の「自信のバックボーン」は一体何なんだろうね?・・もちろん日々のトレーニングもあるんだろうけれど・・もっと具体的に知りたい・・フムフム・・
・・ちょっと冗長になりはじめた・・ということで最後のテーマ・・
・・それは、レッズの勝負強さ・・
・・でも前節では、一人足りないアルディージャと、それも埼スタで引き分けてしまったそうな・・わたしは外国にいたから観ていないけれど・・
・・シュート数も、レッズの17本に対し、アルディージャは、たったの2本しか打ってなかったとのこと・・そりゃ、なによな・・一体どんなゲームだったのかね・・
・・でも、この日のレッズは違った・・
・・ワンチャンスを逃さずにゴールを奪い(槙野智章は、この日の「完璧ヒーロー」だった}・・そのゴールを、素晴らしく集中したディフェンスで守り切った・・
・・前回のコラムでは、最後の時間帯の集中切れが目立っていた・・でも、この試合では、ほぼ完璧な内容で1点差を守り切った・・
・・たしかにクロスを送り込まれたり、中距離シュートをブチかまされたりしたけれど、最後のところでは、相手に仕事をさせなかったんだよ・・とにかく、この試合でレッズが魅せた集中力は、特筆モノだった・・
・・そこには、勝者のメンタリティーまでもプンプンと匂っていた・・ちょっと誉めすぎ?・・
・・そのことについて質問した・・最後の時間帯でのディフェンスが素晴らしかったが・・ってね・・
・・そしたら、ミハイロが止まらなくなった・・曰く・・
・・安定した守備だった!?・・そう、オレもそう思うよ・・その背景に何があったかって?・・
・・そりゃ、トレーニングの積み重ねさ・・レッズの練習ではゲーム形式が多いから、攻撃のトレーニングと考えられがちだよな・・でも実際は、攻守両面にわたって最大限の効果が生み出されるように計画しているんだよ・・
・・要は、2対1でも3対2でも、4対4でも5対5でも、フルコートのトレーニングマッチでも・・攻守両面にわたってテーマが示されているというわけさ・・良い攻撃のトレーニングこそが、効果的な守備のトレーニングでもあるっちゅうわけだ・・
・・でもオレは、選手たちに指示しすぎることはない・・トレーニングの目標をしっかりとイメージさせ、後は選手たちに工夫させるんだよ・・そう、それはインテリジェンス(考えること)のトレーニングとも言えるよな・・
・・試合がはじまってしまえば、後は選手たちが自主的に考え、勇気をもってリスクにもチャレンジしていかなけりゃいけない・・そう、自分が主多胎なんだよ・・だからこそインテリジェンス(考えること)が求められる・・
・・そこでは、選手たちの向上心がとても重要なファクターになる・・そのためにこそ、オレ達コーチがいるっちゅうわけだよ・・優れた心理マネージメントだね・・
・・とにかく、主体的な工夫が大事なんだ・・そして、ゲーム形式のトレーニングのなかには、そんな必要な全てのファクターが内包されているっちゅうわけだよ・・そして「それ」を自分たち自身で探し出す・・それが、もっとも重要なトレーニングテーマということだな・・
・・ミハイロは止まらない・・そして最後に、「あ〜、また喋りすぎちゃった・・オレはサッカーを愛しているんだよ・・だからサッカーについてだったら一晩中でも喋りつづけられるぜ・・あははっ・・
・・だってサ・・
・・まだまだ、メモしたテーマはあるけれど、今日は、こんなところで・・乱筆、乱文、ほんとにスミマセン・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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