湯浅健二の「J」ワンポイント


2012年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第26節(2012年9月22日、土曜日)

 

ホームチームが負けた2試合を一気にアップしました・・(レッズvsガンバ、0-5)(FC東京vsフロンターレ、1-2)

 

レビュー
 
 今日は、2試合を「はしご」。ということで、2試合目に間に合うように、レッズvsガンバ戦の記者会見はパスしました。

 後から、レッズのミハイロ・ペトロヴィッチ監督が、「出来が悪かった・・たぶん今シーズンでもっとも内容が悪かった試合だと思う・・その原因だが、いま この場で探すのは難しい・・選手には、負けたときの態度にこそ、我々の質が表れると話した・・等など」といったニュアンスの内容をコメントしていたと聞い た。フムフム・・

 この試合だけれど、その構図は「はじめから」明確だったと思う。それは、降格圏内にいるガンバにとっては、決して負けてはいけないゲームだったということです。

 だから彼らは、立ち上がりから、とても強固に守備ブロックを組織した。そして、チェイス&チェックや忠実マーク、相手トラップの瞬間を狙うアタックやインターセプト、はたまた効果的な協力プレッシングなど、まさに最高の集中力で「ボール狩り」を展開したんだよ。

 断っておくけれど、ガンバは、下がって(人数を掛けて!)守備を固めた・・っちゅうことじゃないよ。ガンバは、そんなに低級のチームじゃない。あくまでも、一人残らず全員が、全力のディフェンスからゲームに入っていった・・というニュアンスです。

 このところのガンバは、ケガをしていた主力メンバーが戻っただけじゃなく、外国人選手も本来のチカラを発揮しはじめていた・・とか。

 そう、優れた(多くの)個のチカラを擁するガンバ大阪は、本来は、とてもチカラのあるチームなのです。だから、主力のケガからの復帰と、心理・精神的な部分のマネージメント(自信と確信レベルを高揚させる心理マネージメント!?)がうまく機能すれば・・

 とにかく、このゲームでガンバが魅せつづけたディフェンス(ボール奪取プロセス)は、とても、とても威圧的だった。もちろん、ボールがないところでのプレーも含めてネ。

 優れた個のチカラを擁するガンバが、レベルを超えた集中力と忠実さでディフェンスに入ったら、そりゃ強いに決まっている。レッズは、ほとんどと言っていいほど、スペースを攻略できなかった(前半のシュートはたったの1本だった!)。

 とにかく、走っても、走っても(パスレシーバーとして)フリーになれない。また肝心の仕掛けのタテパスも、受けた選手のところで、ことごとく潰されてしまう。そして徐々に、レッズ選手の足が止まり気味になっていく。これじゃあ、ネ・・

 そんな展開のなか、徐々にガンバの攻撃もイニシアチブを握るようになっていくんだよ。ということで、実際のゲーム展開は、まあ一進一退。とはいっても、仕掛けの(チャンスメイクの)量と質では、強力なディフェンスに支えられたガンバ攻撃に一日の長があった。そして・・

 そう、唐突に、ガンバの阿部浩之がミドルシュートを決めちゃうんだよ。レッズ守備ブロックが崩されたわけじゃなかったけれど、一瞬のスキを突いた阿部浩之の「エイヤッ!」の勝負ドリブルと爆発シュートに拍手だね。

 それが前半18分。そして前半35分には、レッズセンターバックの「間」に入り込んでフリーになったレアンドロが、ガンバ左サイトバック藤春広輝からの正確なクロスボールを、ヘディングで「流す」ように、巧みにレッズゴールの右隅に決めちゃう。

 たしかに2点を追うレッズは、後半には盛り返したけれど、いかんせん、人数とポジショニングのバランスを欠いてしまうシーンが続出したからネ、カウンター気味に、続けざまに追加ゴールを奪われちゃうのも道理ってな展開。

 そしてその後は、集中を切らせ(!?)単純なコンビネーションや勝負ドリブルから、何度もスルーパスを決められちゃう・・といった具合でした。

 そう、スルーパスを出した相手ボールホルダーを止められなかっただけじゃなく、前線で決定的スペースへ抜け出そうとする相手選手(パウリーニョ)もフリーで「行かせて」しまったっちゅう体たらくでした。

 まあ、仕方ない。サッカーだから、こんなこともあるさ。

 それにしても、ガンバは素晴らしいサッカーを展開した。

 もちろん前述したように、「決して負けない戦術サッカー」に徹した・・という意味合いの素晴らしさだけれど、「あの」優れた個のチカラを擁するガンバだからね、そりゃ、戦術サッカーとはいっても、レベルが違うわけだ。

 とにかく、ガンバが、彼ら本来の強さを取り戻しつつある・・という私の見立てに異論を差し挟む方はいないに違いありません。まあ、普通だったら、そんな強い(再活性化された!?)ガンバが降格するはずはないけれど・・でも、そこはサッカーだから・・

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 さて次は、FC東京vsフロンターレ。もう真夜中の1時を過ぎちゃったし、首都高速の大渋滞のなかを愛車のオートバイで移動したこともあって、ちょっと疲れ気味だけれど、それでも頑張る筆者なのであ〜る。

 とにかく、コチラも興味深いエキサイティングマッチだったから、鉄は熱いうちに打て・・と、キーボードに向かう筆者なのですよ。あははっ・・

 エッ!?・・何が、そんなに興味深かったかって!? 

 まず何といっても、パスサッカーを標榜する同士の対決という視点。そのパスだけれど、イメージするところのニュアンスは、ちょっと違う!?

 風間八宏率いるフロンターレは、「手でボールを扱う競技のようなサッカーをする・・」ことを標榜している。要は、ボールを確実にキープし、流れるように パスを回す(ボールを動かす=相手の視線やポジショニングを揺動させる!?)なかで必殺スルーパスをブチかます・・ってな感じかな。

 まあ、それは、守備のイメージを超える仕掛けの流れの演出・・とも表現できますかね。

 例えば、素早く正確な横パスを回すことでボールを動かしている状況を思い浮かべてくださいな。

 そのなかで、次の横パスが出される瞬間に、最前線の選手がタテの決定的スペースへ走り抜ける全力スプリントをスタートするんですよ。

 その「動き出し」は、もちろん横パスを「受ける選手」も分かっている。だから、その横パスを「ダイレクト」で叩くことで、フリーランニングする味方選手が走り込む決定的スペースへ必殺スルーパスを通しちゃう。そんなイメージ。

 要は、ボールホルダー(次のパスレシーバー)と、決定的スペースランニングを敢行する味方選手の勝負イメージが、完璧に「シンクロ」しているっちゅうことです。

 だからこそ風間フロンターレでは、素早いパスとトラップの正確さと、パスレシーバーの相手マークを外す(視線を盗む)スペースランニングのコンビネーションを繰り返しトレーニングする!? 要は、イメージシンクロ・トレーニングということだね。

 とにかく、フロンターレが志向するサッカーでは、ボールの動きのリズムとトラップの正確さが「命」なんだと思うよ。

 単純なタイミングで(相手がしっかりと意識してマークしている状態で)タテへ走り抜けても、相手ディフェンダーに簡単にマークされちゃうよね。でも、相手がイメージできない(予想を超える)タイミングや状況でスルーパス攻撃を仕掛けたら・・。

 ちょっと表現が難しいけれど、とにかくボールホルダー(次のパスレシーバー)と、決定的スペースへ走り抜けるパスレシーバーとが、共通の「イメージ」を描写できてさえいれば、後は、相手マーカーの視線を盗むだけだということです。

 相手マーカーにしても、瞬時に加速する全力スプリントを確実にマークするのは難しいモノなんだよ。まして、後方から走り上がってくる3人目や4人目の相手フリーランナーに決定的スペースへ走り抜けられたら、もうお手上げ。

 だからこそ風間フロンターレは、そんな決定的フリーランニングを最大限に「活用」できる可能性を最高レベルに引き上げようとするんだ。

 最前線で待ち構えるフリーランナーが、タテへ全力スプリントで走り抜けられるタイミングが、多ければ多いほど、スルーパスでウラの決定的スペースを攻略できる可能性も高くなるっちゅうわけさ。

 そんな風に、相手守備ブロックのウラに広がる決定的スペースで、ある程度フリーでボールを持てれば最高だね。それこそ、決定的スペースの攻略。そこからは、コンビネーションでもスルーパスでも、勝負ドリブルでも、何でもブチかましていけちゃう。

 実際にフロンターレのボールの動きをジックリと観察すれば、すぐに分かる。

 彼らが、ボールを素早く正確なリズムで「動かし」ながら、常にタテ(スルー)パスを狙っていることを。だからこそ、走り抜けるパスレシーバーにしても、(場合によってはアイコンタクト無しでも!?)全力スプリントをスタートできちゃう。

 それに対してFC東京の場合は、オーソドックスな「ボールの動き」と言えるね。要は、スペースを攻略していくためのツール。

 だから、サイドゾーンのスペースへボールを動かすこともあるし、アイコンタクトを基盤にした(決定的スペースへの!)爆発スプリントに対してスルーパスを通したり、バックパスからミドルシュートをブチかましたり・・等など、多種多様。

 ちょっと、この二つのパスの「違い」を上手く表現できていないかもしれない。フ〜〜・・

 どちらにしても、パスの目的は、スペースを攻略してシュートを打つことだからね。まあ、フロンターレの方が、その目的を達成するプロセスイメージが、より先鋭化しているっちゅうことかな。

 まあ、彼らのパスサッカーについては、これからもディスカッションしていきますので、今日の所は、こんな感じでご容赦・・

 ちょっと冗長になってしまったけれど、そんな二つのチームがぶつかり合った今回の「多摩川クラシコ」、決定的チャンスの量と質という視点では、完璧に、FC東京が凌駕した。特に前半は、両チームのサッカー内容には天と地ほどの差があった。

 サイドからのクロス攻撃やドリブル突破&シュートは当たり前。それだけじゃなく、突っ掛けた状況からボールを戻してミドルシュートを打たせたり、コンビネーションで相手守備を翻弄してスペースを攻略していったり。

 FC東京の攻撃は、とにかく変化に富んでいた。ランコ・ポポヴィッチも、「負けたチームの監督が言うのはおかしいかも知れないが、とにかく今日は、日本にきてから最高レベルのサッカーを魅せられたと思っている・・」と、胸を張っていた。

 同感・・

 そんな東京が、自分たちのミスからボールを奪われ、そのまま楠神順平に、奇跡的なドリブル突破からシュートを決められてしまうんだよ。ちょっとビックリし、溜息が漏れた。その先制ゴールは後半0分のことだったんだぜ。

 そしてその8分後には、セットプレーから、ジェシにヘディングを決められて追加ゴールまで奪われちゃうんだ。

 この時間帯、度肝を抜かれたんだろうか、FC東京のリズムが乱れたと感じた。そう、ボールの動きがチグハグになったんだよ。要は、パスとキープ&ドリブルの組み合わせがバラバラになったことで、良いカタチで仕掛けられなくなったということなんだろうね。

 でも、10分も経つと、東京がいつものリズムを取り戻していく。そして総攻撃。でも、チャンスは作り出すけれど、実際のゴールは奪えない。前半もそう だったけれど、そこでも、「どうしてゴールにならないの?」っちゅう感じで、ボールがフロンターレゴールを外れていくんだ。フ〜〜・・

 まあ、サッカーでは日常茶飯事の顛末ということになったわけだけれど、FC東京については、これで、天皇杯も含めて2試合もつづけて典型的な神様ドラマを見せられた。

 わたしが、FC東京の疫病神にならないことを祈って止みません。

 ちょっと限界。ということで今日はこんなところで・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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