湯浅健二の「J」ワンポイント


2012年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第31節(2012年11月7日、水曜日)

 

レッズにとっては、チト後味が悪い結果になっちゃったね・・(フロンターレvsレッズ、4-2)

 

レビュー
 
 何かサ、ミハイロ・ペトロヴィッチも言っていたように、ある意味で不思議なゲームだったよね。

 前節のセレッソ戦もそうだったけれど、要は、良いゲームを展開したレッズが、自ら作り出したチャンスをモノに出来なかったことで(結果を出せなかったことで!)、最後は自滅した雰囲気に支配されちゃったっちゅうことです。だから後味も、チト悪い。

 でも、セレッソ戦と状況が異なっていたのは、相手(フロンターレ)に、立てつづけにゴールを決められて負けちゃったことだよね。まあ、なかには「不思議な」ゴールもあったけれど・・

 だから、記者会見での風間八宏も、スッキリした表情じゃなかった。そして開口一番、「良いゲームじゃなかった・・」だってさ。フムフム・・

 フロンターレが挙げたゴールだけれど、最初の(前半22分の)同点フリーキックと、後半27分にカウンターから(そして、レッズ選手の完璧なアシストによって!!)山瀬功治が叩き込んだ4つ目のダメ押し点は、まさにラッキーゴールだった。

 もちろん、レナトがレッズゴールの左隅に決めた、逆転(前半28分のフロンターレ2点目)フリーキックは見事の一言だったけれどね。

 そうそう・・。前半33分にフロンターレが決めた3点目だけれど、それもまた、「変なコト」が重なって起きた、ある意味「不思議なゴール」だったと言えないこともない。

 まず、レッズの絶対的な主力プレイヤーであるマルシオ・リシャルデスと阿部勇樹が、考えられない失敗をしてフロンターレにボールを奪われちゃったコト。

 そして、攻め上がってくる中村憲剛にボールがわたり、その左サイドスペースへ「開いた」レナトをマークしていなければならなかった坪井慶介が、ボールへ(中村憲剛へ)寄っちゃったコト。これで、レナトが全くフリーになってしまった。

 こうなったら、「あの牛若丸」のことだから、坪井慶介を「引きつけて」から、全くフリーのレナトへ、完璧なタイミングとコースのスルーパスを通しちゃうのも道理。

 そして、慌てて対応した坪井慶介が、レナトの単純な切り返しに振り回されて転んでしまったコトと、切り返したレナトへのカバーリングが遅れたコトも重なった。

 要は、偶発的な気抜けプレーが重なってしまったわけだけれど、普通は堅いレッズ守備の考えられないミスだったから、ちょっと不可思議な印象「も」残ったわけです。

 とはいっても、もちろんそれは「タラレバのハナシ」だよね。言いたかったことは、そんな「変に不思議なツキのなさ」が重なったことで、チト後味が悪い結果になっちゃっちゃということが言いたかったわけです。

 もちろん「そんなネガティブな印象」が残った背景には、レッズが、セレッソ戦につづいて良いサッカーを展開したこともあった。このところ、(自業自得の 負けだったコンサドーレ戦は除いて!)内容と結果が一致しないゲームがつづいている。それは、誰にとっても気分よくないでしょ。フ〜・・

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 ということで、ここからは、絞り込んだテーマをディスカッションしていくことにします。

 それは・・タテへのチャレンジ・・決定的スペースを攻略するタテへの仕掛けコンビネーションや一発タテパス等など・・

 この試合はスリーバックで臨んだフロンターレ。立てつづけにゴールを奪ってリードしたこともあって、守備ブロックをカチッと組織する時間帯がつづいた。

 スリーバックで守備ブロックを固めたわけだからね、最終ラインがファイブバック気味になるのも道理。それだけじゃなく、ワントップの小林悠を除いた前線の4人が、中盤ラインを組織しちゃうんだよ。

 ということで、5人の最終ラインと4人の中盤ラインが、ある程度「高い位置」で守備ブロックを組織するフロンターレなのです。

 もちろん、そのブロックの背後には「太平洋」のような広大な決定的スペースが広がっている。にもかかわらず、レッズは、そこを攻略するような仕掛けを繰り出していかない。

 たった二つのシーンを除いて・・

 それは、柏木陽介がスマートに蹴り込んだ、このゲームの先制ゴールシーン(前半19分)と、オーバーラップした槙野智章がブチ込んだ2点目シーン(後半13分)だった。

 そう、この二つのシーンでは、フロンターレ守備ブロックの背後に広がる決定的スペースを、見事に攻略したんだよ。

 最初は、タイミングよく抜け出した原口元気へ通された、山田暢久からのグラウンダースルーパス。二つ目が、決定的スペースへ全力でオーバーラップしていく槙野智章のアタマを目掛けた、鈴木啓太からのロビング(浮き球)パス。

 そんな、相手ディフェンスの背後スペース(決定的スペース)を突いていくコンビネーションプレーは、パサーとパスレシーバーのイメージと物理的なプロセスが完璧にシンクロしていなければ成就しない。

 難しい。それは分かっている。でもサ・・

 そう、レッズの攻撃からは、フロンターレ守備ブロックが、高い位置で、あれほどカチッと二つのラインを作っているにもかかわらず(=その背後に広大な決定的スペースがあるにもかかわらず!)、「そこ」を攻略しようとする意図が、十分に感じられなかったんだよ。

 だから、観ているこちらはフラストレーションが溜まった。

 パサーが失敗を恐れているんなら、まずパスレシーバーがアクションを起こしていけばいい。そう、勝負のタテパスを呼び込むような、決定的スペースへ抜け出していく爆発フリーランニング。

 そして、パスが出てこなければ、「なんでパスを出さないんだ〜!!」って文句を言えばいい。

 もちろん、原口元気にしても、柏木陽介やマルシオ・リシャルデスにしても、何度かは、そんな決定的な動き出しを魅せたシーンもあった。でも、やっぱり単発。

 彼らは、何度も、何度も繰り返さなければならなかった。

 もちろん逆に、パサー(ボールホルダー)が、ズバッとタテパスを(タテへのコンビネーションをスタートさせる仕掛けのワンのパスや一発勝負のロングパス等など!)をブチかましてもいい。そして、パスレシーバーがアクションを起こさなければ、強烈な文句をブチかます。

 そんなふうに、互いに刺激し合うことで、仕掛けの内容にも、どんどんと変化を演出できるようになってくるはず。そうすれば、相手守備ブロックも、ボール奪取の狙いを定めにくくなる。

 そう、攻撃において最も大事なファクターは、変化なんだよ。

 たしかにレッズは、全体的には良いサッカーを展開し、チャンスも作り出した。でも、チャンスを決め切れなかったコトだけではなく、そのチャンスの内容に「変化の広がり」が感じられなかったことに「も」、ちょっとフラストレーションを溜めていた筆者だったのでした。

 もちろん、そんな勝負のコンビネーションの量と質は、互いの勝負イメージをシンクロさせるトレーニングを積むことでしかアップさせられないわけだけれど・・

 多分「そのこと」もまた、レッズが次の段階へ進化していくプロセスの課題なんだろうね。とにかく、期待しています。

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 さて、リーグの残り試合は「3」ということになった。そしてレッズは、「まだ」3位につけている。

 もう、リーグ優勝は物理的にも不可能になったわけだから、狙うのは、もちろん来年のアジア・チャンピオンズリーグの出場権。そう、リーグ3位以上。

 レッズには、サッカー内容的にも、まだまだ大いなるチャンスが残されていると思う。

 皆さんも、チャンピオンズリーグ枠をめぐる争いに、ライバルの状況(残り試合のエッセンス)などを照らし合わせながら思いを巡らせましょう。

 ホントに楽しみだね、これからのガチンコ勝負が・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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