湯浅健二の「J」ワンポイント


2012年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第9節(2012年5月3日、木曜日)

 

マリノスが魅せた素晴らしい集中力と闘う姿勢にカンパイ!・・(RvsM、1-2)

 

レビュー
 
 見終わってから、直ぐに、マリノスの開幕マッチとなったレイソル戦(アウェー)コラムを読み返していた。そして思った・・

 ・・そうそう、あの試合でのマリノス「も」、まさにフッ切れた勢いで仕掛けつづけていたっけ・・特に、マリノスの超特急(小兵)トリオ、小野裕二、大黒将志、齋藤学が、言わずと知れた中村俊輔の指揮の下、両サイドから、はたまた中央ゾーンから、脇目も振らない勢いで勝負を挑んでいった・・ドリブルでも、パスレシーブの走り込みでも・・

 わたしは、そんな(開幕マッチでの)ダイナミックなマリノスを観ながら、まだ荒削りだけれど、今シーズンのヤツらは大きく進展するに違いない・・なんて思ったモノです。でも・・

 そう、その後は、思ったほど結果が付いてこなかった。まあ、勝負のツボを押さえ切れていないという意味でも、まさに「荒削り」だったんだろうね。それが、前節で初勝利を挙げ、難敵レッズとのアウェーマッチになったこの試合も、(内容的にも!)まさに堂々と勝ち切った。

 ・・前述した超特急の小兵トリオ・・彼らを操るコンダクター中村俊輔・・超強力なセンターバックコンビ(中澤佑二と栗原勇蔵)は言うに及ばす・・抜群の上下動を魅せつづける両サイドバックと守備的ハーフコンビ・・ダイナミックなプレーを披露した熊谷アンドリューは、この試合がデビュー戦だったんだって(!?)・・

 多分マリノスは、そんな主力プレイヤー達による『意志のプレー』を基盤に、ここから、大きくステップアップしていくに違いない。あっと・・復帰したドゥトラや、復調したマルキーニョスも忘れちゃいけない。こりゃ、ホントにマリノスは強くなるぜ。

 ということで、この試合のレッズは、マリノスに「やられて」しまいました。まあ仕方ない・・こんな日もあるさ・・

 同じマリノス相手でも、物理的なモノだけじゃなく、心理・精神的な要素なども含まれる、様々な「フォーム的な状況」が変われば、ゲーム内容だって、まったく違うモノになっちゃうのがサッカーだからネ。だから・・まあ、こんな日もあるさ・・

 ということで、「こんな日・・」という表現の意味合いだけれど、要は、この試合のレッズは、彼ら本来の組織サッカーが影を潜めてしまった・・ということです。人とボールの「動き」を、うまく活性化させられなかった。

 それには、たぶん二つの大きなバックボーンがあったと思う。一つは、強力なマリノス守備ブロックが、徹底的にレッズの「良さを消しに」かかってきたこと。そう、徹底した「ゲーム戦術」を仕掛けてきたということです。

 そして、もう一つが、レッズ攻撃の絶対的なキーマン(リンクマン&チャンスメイカー&ゴールゲッター)である柏木陽介が、何らかのケガを負っていた(!?)こと。

 そのことで、どんどんとレッズの「動き」が減退の一途をたどってしまった。ここで言う「減退」とは、もちろん心理・精神的な部分。要は、チーム全体に、失敗を恐れる雰囲気が支配しはじめてしまったということです。

 ミハイロ・ペトロヴィッチは、ベンチから、仕掛けのタテパスや勝負ドリブルに代表されるリスクチャレンジプレーを要求しつづけていたけれど、そりゃ「あの流れ」では難しい。結局チームは、笛吹けどおどらず・・という失敗を恐れる心理的な悪魔のサイクルにはまり込んでしまった。

 こうなったら、チームの「動き」の勢いを再活性化させるのは至難のワザだよね。それには、超強烈なリーダーシップが必要だしサ。フ〜〜・・

 たしかにレッズは、残り15分という段階になって、守備的ハーフが、より積極的に押し上げるようになったことで(!?)、ようやくチーム全体のチャレンジ姿勢がアップし、槙野智章のスーパーゴールで追い付いたけれど(!)、同点になってからは、逆に、チーム全体の勢いを増幅させたマリノスの仕掛けに押し込まれる場面も見受けられるなど、プレー姿勢が縮こまってしまった。

 そして、中村俊輔の素晴らしく正確なコーナーキックと、マルキーニョスの復活ヘッドに沈んでしまった。

 まあ、ここは、冒頭でリンクを張ったレイソル対マリノス戦コラムで書いたように(その記者会見でネルシーニョが言っていたように・・)グッド・ルーザーとして、マリノスがブチかましてきた、フッ切れた闘う姿勢に敬意を示しましょう。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。