湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2012年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第9節(ACL代替)(2012年6月27日、水曜日)
- ネルシーニョの術策(ゲーム戦術)の方が優った!?・・(FCTvsRS、 0-1)
- レビュー
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- どうだろうネ〜〜・・、この試合の評価は、チト微妙。
たしかに、FC東京が積極的に攻め上がり、全体的にはゲームを支配していた。とにかく彼らは、例によって、リスクチャレンジにあふれた「自分たちの組織サッカー」を貫いたんだよ。とても創造的で魅力的なパスサッカー。でも勝負という視点では・・
だから聞いた。
「たしかに東京は最後の最後まで諦めず、リスクを負って攻め上がっていった・・それは、それで立派だと思う・・ただ、どうも最終勝負がうまくいかな
い・・しっかりとボールは動くけれど、最終勝負の段階で、レイソル守備ブロックのウラを突いていけない・・それは、梶山陽平、石川直宏、羽生直剛といっ
た、最終勝負プロセスに変化を加えられる主力をケガで欠いていたことが原因だとは思う・・これは監督の性格も反映されているからなんだろうけれど、東京
は、常に自分たちのサッカーを貫こうとする・・それに対して相手は、そのサッカーを抑え込もうと術策を講ずる・・そうなったら、主力を欠いているというネ
ガティブな要素も含めて、たぶん東京のパスサッカーが寸断されちゃうケースが増えると思うのだが・・」
またまた長〜い質問になってしまった。それに対してランコ・ポポヴィッチは、例によって情熱的&真摯(しんし)に、そしてユーモアと笑顔をミックスしながら、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれた。曰く・・
・・たしかに、レイソルは、うまく守っていた・・プレッシャーの質もハイレベルだったしね・・だから我々も、簡単には効果的な最終勝負を仕掛けていけなかった・・まあ、スペースをうまく攻略できなかったとも言える・・
・・もちろん自分たちもミスを冒した・・それでも我々は、そんなミスにめげることなく、最後の最後まで攻撃的サッカーを貫いてゲームのイニシアチブを握った・・でも・・
・・とにかく、主力を欠いていたにもかかわらず最後まで自分たちのサッカーを貫けたことに対しては誇りを感じている・・そこのところを観て欲しい・・確かに結果は出せなかったけれど、我々が「この質」のサッカーをグランド上で表現できていることを評価して欲しいんだ・・
フムフム・・。言いたいことはよく分かるし、多くの部分で「アグリー&レスペクト」だよ。でもサ、多くの主力を欠いているんだから、もうちょっと柔軟にゲーム戦術を工夫してもよかったんじゃないだろうか?
例えば、アバウトでもいいから、たまには(背の高いルーカスやアーリアジャスールを狙った!?)ロング・アーリークロスを放り込むとか、決定的なウラの
スペースを狙った一発ロングパスを積極的に送り込むとか、はたまたサイドチェンジを多用するとか、もっと積極的にミドルシュートをブチかますとか・・さ。
もちろんアーリークロスや一発ロングパスの場合は、パスの受け手と「勝負イメージ」を同期させる必要があるから、それなりのトレーニングを積み重ねなきゃいけないけれどね・・
とはいっても、「あのサッカーを徹底的に追求する・・」という姿勢はとても魅力的だし、日本サッカーにとっても、素敵な刺激になると思う。もちろん、徹底度がアップすれば、それなりに「危険度」も高揚していくだろうしね。
ところで、FC東京が志向する組織的なパスサッカーというテーマに関わることだけれど、ネルシーニョに対しても、こんな質問を投げたんですよ。
「ネルシーニョさんは、落ち着いたゲーム運びが出来た・・とか、バランスが崩れなかったし、ゲームを全体的にコントロールできたといった内容をコメント
された・・それは、ディフェンスがうまく機能していたからに他ならないと思う・・そこで質問ですが・・FC東京のパスサッカーを抑えるために、しっかりと
準備したと思うのですが、その一端を披露していただけませんか?」
大事なテーマだから、簡単に披露できるはずもないけれど、まあ、聞いてみたっていいでしょ。
・・FC東京は、パスを回しながら中央ゾーンへと攻め込んでくる傾向が強い・・もちろんそのことについて分析したし、対処するゲーム戦術を準備した・・
FC東京とはシーズン前にも対戦したわけだけれど(ゼロックスサッカーのこと!?)、彼らは技術が高い・・スペースを与えたら(=マークが甘くなったら)
パスを回されて崩されてしまうだろう・・だから選手とは、そのスタイルのサッカーを効果的に抑えられる守備を確認した・・
フムフム・・。まあ、今日のゲームでは、ネルシーニョの術策が(より効果的に!)功を奏した・・っちゅうことなんだろうね。
あっと・・。もちろんランコ・ポポヴィッチにしても、守備については、しっかりと準備していたと思うよ。だから、レアンドロにしてもワグネルにしても、はたまた酒井宏樹にしても、そう簡単には得意の個人勝負プレーをブチかませなかったわけだからね。
それでも、今日のところは、ネルシーニョの術策が優ったっちゅうことにしておきましょう(あっと・・シーズンが開幕する直前に行われたゼロックスサッカーでもそうだったよね・・そのレポートはこちら)。もちろん、偶然と必然が微妙に交錯するサッカーというボールゲームの為せるワザ・・っちゅう視点も含めてネ。あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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