湯浅健二の「J」ワンポイント


2013年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第13節(2013年5月26日、日曜日)

 

レッズは、「本物のブレイクスルー」へ向けて、ひた走っている・・(レイソルvsレッズ、 2-6)

 

レビュー
 
 「昨日のことだけれど、トレーニング後の会見で、このところ失点が多いが・・なんていう質問を受けたんだよ・・だから言ってやった・・レッズのサッカーは、常にリスクと隣り合わせなんだ・・それこそが進化していくための(唯一の!?)リソース(源)なんだよ・・ってね」

 試合後の会見。ミハイロ・ペトロヴィッチが、つづけます。

 ・・レッズには、クラシックなタイプのディフェンダーなんていないんだ・・マキノ、モリワキ、ナス、アベにケイタ、もちろん両サイドバックにしても、誰もが、チャンスがあれば攻撃の最終シーンまで絡んでいくんだよ・・

 ミハイロの、会見場に響きわたる声は、止まることを知らない。

 ・・それこそがレッズのサッカーなんだ・・もちろん、上がったり、下がったりを繰り返したら、そりゃ疲れるよな・・だから、たまには、集中を切らせて守備で失敗することもあるさ・・

 ・・それでもオレ達は、リスクを冒してでも理想を追求しつづけるんだ・・それこそが、いまのレッズの魅力でもあるからな・・リスクのないところに進歩もない・・とにかく、皆さんには、レッズが展開するサッカーの内容を評価して欲しい・・などなど・・

 いいね・・。だから聞いてみることにした。

 ・・そう、監督が言うように、レッズは素晴らしいリスクチャレンジを繰り返している・・だから、大きく進化している・・それに今日は、おっしゃるよう に、センターバックの森脇良太もゴールをブチ込んだしね・・でも逆に、この間のアントラーズ戦でも質問したように、レッズの守備はハイボールに弱いんじゃ ないかとも思う・・そして今日は、まさに、そのヘディングで2ゴールも奪われてしまった・・私は、そのことが不満なんですよ・・

 ・・(心のなかで、フンッ!って舌打ちしながら!?・・あははっ・・)まあ、たしかに今日の失点は、二つともヘディングだったよな・・一つ目の失点場面 で最後に競ったのはマキノだった・・たしかにポジショニングが少しズレてしまい、自分の背後でのヘディングにやられてしまった・・

 ・・さっきも言ったとおり、マキノは、ウチではオフェンスプレイヤーでもあるんだよ・・あれほど上下動を繰り返していたんだから、最高の集中力を維持するのは難しいさ・・まあ、彼にとっては貴重な学習機会だったとも言えるよな・・

 ・・最終ライン選手たちの攻撃参加だが、サンフレッチェ時代は、行け〜っ!!って、大声で叫びまくっていたんだ・・それが、レッズにきたら、そんな必要 はなくなった・・言わなくても、どんどん上がっていっちゃうからな・・いや、逆に、戻れ〜っ!!って叫ばなければならないシーンの方が多くなったよ・・ほ ら、だから、俺の声も、こんなに枯れちゃってさ(笑)・・

 ということで、そんな楽しい雰囲気で、記者会見が進行していったのでした〜。

 このところのレッズコラムを読んでいただいている通り、また皆さんも体感している通り、ここにきて、レッズのサッカーが、大きくジャンプアップしていると思います。

 以前のように、攻めきれず、またチャンスを決め切れない・・なんていう、寸詰まりの(攻めきれない中途半端な!?)ネガティブ雰囲気は、かなり払拭されている。

 それも、これも、選手たちが、思い切ってリスクにチャレンジしているからに他ならない。完璧なイメチェンを果たした鈴木啓太を筆頭にしてね。

 そのモティベーターは、もちろん、ミハイロ・ペトロヴィッチ。レッズは、本当に良いプロコーチを獲得した。

 また、原口元気に代表される「才能系」のプレイヤーも、攻守にわたるハードワークに一生懸命に取り込んでいると感じる。

 ・・前線からのチェイス&チェック・・ボールがないところでの粘り強いマーキング・・攻撃では、もちろん忠実なフリーランニング・・だからこそ、自分自身が「良いカタチ」でボールを持てるだけじゃなく、周りの味方が使えるスペースも作れる・・っちゅうわけさ。

 だからこそ、本当の意味で、彼らの才能プレーが光り輝くんだよ。そりゃ、相手に取り囲まれた状況で、ゴリ押しのドリブル勝負を仕掛けていくことほどバカげたことはないからね。

 そして、そんな、リスクチャレンジあふれる忠実なハードワークが、うまくボールと連動するからこそ、本当の意味でのチャンスを作り出せるし、攻め切り、決め切れる。

 いま、レッズ選手たちは、サッカーをやることが楽しくて仕方ないでしょ。その感覚は、本当によく分かるよ。

 それは、「本物のブレイクスルー」を果たすための千載一遇のチャンスなんだ。

 そう、正しい「レッズの伝統」を確立するためにね。そして、それが確立すれば、確実に「次の世代」へと受け継がれていくはずだよ。

 その意味でも、今のレッズの成長プロセスを観察し、分析することほど楽しい仕事はない・・っちゅうわけさ。


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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