湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2013年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第20節(2013年8月11日、日曜日)
- まず柿谷曜一朗というテーマから・・また次のゲームでは、優れたカメラワークだったからこそ両チームのバランスの取れた「組織と個」の機能性が楽しめた・・(大宮vsC大阪、 0-3)(川崎vsF東京、 2-2)
- レビュー
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- さて、ではまずアルディージャ対セレッソ戦からいきましょうか。
この試合のポイントは、何といっても、セレッソの試合運びが「ツボ」にはまったこと。
逆から見れば、アルディージャが、自分たちが得意とする試合運びへ持っていけずに(相手にリードを奪われてしまったことで!)ドツボにはまってしまったとも言える。
要は、効率のよいゴールでセレッソがリードを奪い、その後は、例によっての堅牢なディフェンスブロックで、アルディージャ攻撃を封じたのに対し、攻め上
がらざるを得なくなったアルディージャが、人数をかけた攻撃を仕掛けていったことで、セレッソの「才能」にカウンターチャンスを与えてしまったということ
です。
セレッソの才能。言わずもがなの柿谷曜一朗。
帰国してからアップした東アジアカップのコラムでは、柿谷曜一朗には「個の勝負を期待する・・」と書いたけれど、もちろん、そのなかにはカウンターチャンスを「しっかりとモノにする」という才能も含まれている。
柿谷曜一朗は、ワントップとして、その才能を開花させているんだよね。
2列目とかチャンスメイカーというのではなく、あくまでもワントップとしてのイメージ描写に基づいて、とことん徹底したプレーをしていることが、彼の才能を引き出しているとも言える。
それもまた、セレッソ監督であるレヴィー・クルピの功績ということだね。
もちろん、攻守にわたるハードワークでも精進していることが大躍進の絶対的なベースであることは言うまでもないけれど、そのハードワークにしても、点取り屋としてのモノだからネ。
日本代表には、前田遼一もいる。最前線からの守備ハードワークによって、2列目チームメイトたちの最終勝負をサポートする前田遼一。
彼が日本代表のトップに入ることによって、「やり方のタイプ」としては、ゼロトップに近づいていく・・とも言えそうだね。
それに対して、マイク・ハーフナーは高さ、豊田陽平は、高さとスピード(そしてピンポイント勝負に対する抜群の忠実性=最終勝負でのボールがないところでの、素晴らしい動きの量と質!)。
この両人ともに、「常に」最前線で(ポストプレーも含めて)勝負するというイメージでしょ。
そんな三人に対して柿谷曜一朗の「ポリヴァレント(多価)性」は、格段に高いと思う。
要は、最前線に張って披露する巧みなボールキープ(ポストプレー)、前後のポジションチェンジを基盤にしたチャンスメイク、最前線での勝負ドリブル(組織プレーに詰まった状況を打開する個人勝負!)、そして「穴」を見つけ、そこに入り込んでいく鋭い感覚・・等など。
最後の、穴を見つけ、そこへ入り込んでいく才能が、本当は特筆なのかもしれない。
この試合でも、先制ゴールシーンでは、(イメージ通りの!?)こぼれ球を蹴り込んだし、追加ゴールシーンでは、シンプリシオが、フリーでボールを持つ「直前のタイミング」で、(シンプリシオの見るチカラを信じて!)タテの決定的スペースへ動き出していた。
そして、それが、スーパーカウンターゴールにつながった。まさに、東アジアカップ韓国戦を彷彿させるゴールだった。
そんな、ワントップ徹底プレーだけではなく、柿谷曜一朗には、「ゼロトップ的」な柔軟プレーも期待できる。
まあ、そうなったときには、日本代表2列目トリオとの「イメージ・シンクロ」が課題になるだろうけれど、数日後のウルグアイ戦では、そんな視点でも観察したら面白いよね。
あっと・・試合。
もう一つ、両チームの、ボールがないところでの守備(=組織ディフェンスでのイメージ力!)という視点でもポイントを抽出しようと思っていたけれど(両
チームともに、リーグ有数の失点の少なさを誇る!)、ゲーム展開が「こんな感じ」になってしまったから、まあ、それは次の機会にしよう・・
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さて、フロンターレ対FC東京。
この試合、まさにガップリ四つのせめぎ合いということになった。決して守り合いというのではなく、あくまでも、積極的な攻めの仕掛け合い。
カメラワークもよかったから、とても、楽しめた。
その「良いカメラワーク」の背景だけれど、両チームのサッカーが、ボールがないところで勝負を決める・・というコンセプトに基づいていることを、カメラマンの方、ディレクターの方が、しっかりと理解して「映像作り」に勤(いそ)しんでくれたということです。
そう、「勝負所での」人とボールの動きが、しっかりとカメラにとらえられていたんだよ。
カメラワークだけれど、たしかに「寄せ」たら、より迫力ある映像は作れる。でも、それが高じたら、ボールがないところでのドラマという楽しみが失われてしまう。
だからこそ、カメラマンの方々には、「寄せ」と「引き」を、しっかりとバランスさせる技量が求められるのです。
タテにパスが出ない場面(よりボール周りのせめぎ合いが注目されるシーン)では、カメラを寄せ、また逆に、後方のボールホルダーと前線のチームメイトが「アイ(イメージ)コンタクト」をするようなシーンでは、タイミングよく(コトが起きる前に!)カメラを引くのです。
この試合でのカメラワークでは、そんな微妙な「寄せと引きのコントロール」が良かったと思うわけです。
あっと・・昨日のグランパス対レッズ、先ほどアップしたアルディージャ対セレッソ戦のカメラワークも良かったとは思いますよ。でも、「寄せと引きの、バランスの取れたコントロール」という視点では、このゲームが印象深かった・・!?
まあ、それは、両チームのサッカーのタイプにも因るということなんでしょうね。
そう、フロンターレも、FC東京にしても、人とボールの動きをベースにした組織サッカーがウリだからね。
この多摩川ダービーは、そんな両チームの特長が、前面に押し出されたエキサイティングマッチだったというわけです。だからこそ、優れたカメラワークにも感謝していた・・
そして、もう一つ大事なことが、両チームともに、そんな組織サッカーと、個人勝負プレーが、とてもハイレベルにバランスしている・・というポイント。
両チームともに、優れた個の才能を有しているでしょ。渡辺千真や石川直宏とか、大久保嘉人やレナトとか・・
そんな個の才能連中が、シンプルな組織プレーと、ココゾッ!・・の勝負プレーを、とても効果的に使い分けているんだよ。
もちろん、そんな「使い分け」がうまく機能するバックボーンに、そんな、組織と個がうまくバランスするような攻撃の「流れ」をコントロールするチャンス&ゲームメイカーの存在があるわけだ。
FC東京では、ルーカス(まあ長谷川アーリアジャスールとの共同作業かな・・)、フロンターレでは、言わずと知れた牛若丸(中村憲剛)。
もちろんそこでは、両チームのダブルボランチによる「コントロール性能」も、とても大きい。FC東京では、米本拓司と高橋秀人。フロンターレでは、山本真希と森谷賢太郎。
わたしは、そんなポイントにも注目し、両チームの機能性を心の底から楽しんでいた。
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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