湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2013年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第26節(2013年9月21日、土曜日)
- 今日は、2ゲームをレポートします・・(マリノスvsエスパルス、 1-0)(レッズvsヴァンフォーレ、 1-1)
- レビュー
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- ・・素晴らしいゲームだった・・選手を誇りに思う・・彼らは、最後の最後まで、諦めずに闘うスピリットを魅せてくれた・・内容的には、我々の方が勝っていたとは思うが、残念ながら、勝ち点をゲットすることは叶わなかった・・
試合後の会見で、アフシン・ゴトビさんが、そう胸を張っていた。
だから、聞いた。
・・ゴトビさんは、もう二年近く日本で仕事をされているわけですよね・・最初の頃のこと、よく覚えているんですが、やろうとしているサッカーは、その頃から、まったくブレていないと思います・・
・・最初の頃は、こんなコトを思っていたんですよ・・そのうちに、現実的なチーム戦術ベクトルへ調整していくんだろうな〜・・何せ、日本の気候条件や社会文化(メンタリティー)等などは、欧米とは違うから・・
・・でも、ゴトビさんのサッカーは、まったくブレなかった・・この試合でも、素晴らしいダイナミックサッカーを魅せていただいたのですが・・そのコトについて、何かコメントをいただけませんか?・・
そんな私の質問に、アフシン・ゴトビさんは、例によって真摯に、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれた。曰く・・
・・あなたは、優しい人なんですね・・わたしは敗軍の将なんですよ(笑)・・
・・まあ、そのことは置いといて・・私は、アジアでは、日本のファンは特別な存在だと思っているのですよ・・本当に、心から応援してくれる素晴らしいファンの方々・・
・・もちろん彼らは、スタジアムには、何らかのエキサイトメント(≒高揚感や感動など!?)を求めにくるでしょ・・だから我々も、ハイテンポで攻撃的なダイナミックサッカーを魅せたいと思うのです・・
・・それこそが、ファンが見たいモノだと確信しているのですよ・・
・・サッカーは、世界でもっともポピュラーなスポーツですよね・・そのことは、サッカーが最高のスポーツの一つだということの証しだとも思っています・・
・・ちょっと哲学的なハナシになってしまうのですが・・わたしは、そのこと(サッカーがポピュラーで最高のスポーツであること)の絶対的なバックボーン
は、まさにそこ(=ハイテンポで攻撃的なダイナミックサッカー!?)にあると思っているわけです・・だからこそ我々は、常に、そのエキサイトメントを希求
しつづけるというわけです・・
いいね・・アフシン・ゴトビさん。
ところでゲーム展開だけれど・・
この試合では、キックオフから、中村俊輔がスーパーミドル先制ゴールをブチかますまでの数分間、マリノスが、完璧にエスパルスを押し込んでいった。
ちょっと、ビックリした。だから樋口さんに聞いたのだけれど、やはり彼は、選手たちに対して、「エスパルスの勢いを受けてはダメ・・」という趣旨の意識付けをしたらしい。
もちろんマリノスも、エスパルスが展開する「スーパーダイナミック攻撃サッカー」を強く意識し、彼らをペースに乗せたらダメだと思っていたんだよ。
そして、中村俊輔のスーパーゴール。
まあ、このゴールについちゃ、他のメディアが、こぞって取りあげるだろうから、ここでは深入りはしないけれど、とにかく、そのシュートを見ながら鳥肌が立ったことだけは記しておきまっせ。
・・蛇足ですが、中村俊輔については、次々回にでも、新連載「The Core Column」で取りあげるつもりです・・次回(来週)は、宇佐美貴史がテーマ・・そして宇佐美が見習うべきイメージリーダーとして中村俊輔に登場してもらう・・さて〜・・あははっ・・
あっと・・試合・・
その先制(決勝)ゴールから、エスパルスが、本来のダイナミック攻撃サッカーをブチかまし始めるんだよ。
そしてエスパルスが、多くの時間、ゲームの流れを牛耳る・・っちゅう展開になっていくんだ。
そんなゲーム展開のなかでエスパルスが作りだした、バーやポストを直撃するなんていう決定的シーンは何度あったかね。その都度、溜息が出た。
それも、「あの」強力なマリノス守備ブロックを相手にしてだからね。とても、とてもインプレッシブな、ダイナミック攻撃サッカーだったよね。
とはいっても、もちろんマリノスも負けてはいない。
たしかに、全体としては、マリノス陣内での「攻守のせめぎ合いシーン」の方が多かったけれど、それでも時間の経過とともに、マリノスも、ガンガンと協力プレスをブチかましながら押し返していく時間帯を増やしていったんだよ。
そして、ものすごい勢いで、互いに協力プレス(大迫力のチェイシング!)をブチかまし合う・・なんていう、ホントに見応え十分の、(次元を超えて!)動的な均衡状態ゲームではありました。
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実は、レッズ対ヴァンフォーレ戦は、三ツ沢へ行く前に、前半だけはライブ放送で観ていたんですよ。そして思った。
ヴァンフォーレ監督の城福浩さんは、ものすごい「徹底サッカー」を仕掛けてきた・・ってね。
とにかく、まず守備ブロックの組織作りが大前提。そして、それをベースに、ボールを奪い返した位置と状態に応じ、一発ロングパス攻撃や組織カウンターなど、臨機応変に仕掛けていく・・っちゅう感じですかネ。
ヴァンフォーレのワントップは、スピードとパワーに秀でるパトリックがいるからね。
そして、そんな城福さんの思惑がピタリとはまってしまう。一発タテパスによって、パトリックが、2回も、決定的シュートまで行ってしまったんだよ。
要は、ゲームを支配しているように見えて、実は、レッズは、狡猾な「城福浩のワナ」にはまりかけていたということです。いや、ズボッてはまり込んでいたといっても過言じゃないね。
ということで、興味津々で、後半のビデオを観はじめた。そして思った。
・・そうね〜・・前半、パトリックが決定的チャンスまでいってしまった背景には、山田暢久がいたんだよね・・2回とも、明らかなミスというには微妙な状
況ではあったけれど、それでも、山田暢久が絡んだことでパトリックが抜け出してしまったというのは事実だったからね〜・・
要は、ミハイロが、山田暢久に代えて鈴木啓太を投入したということです。もちろん、前半はボランチだった那須大亮がスリーバックの中央に入る。フムフム・・
そしてラッキーなPK。その後は、あまり変化のない一進一退がつづく。
そこでは、前半のような、一発ロングパス&パトリックの突破なんていう、レッズ守備ブロックの不安定さが露呈するシーンも出てこなくなった。
要は、ゲームは、このままの流れで終了するのか・・なんていう雰囲気も漂いはじめていたということです。でも、後半30分を過ぎたあたりから、風雲急を告げはじめるんだ。
そう、失うモノがなくなったヴァンフォーレが、捨て身の仕掛けをブチかましはじめたんだよ。
逆に、対するレッズ守備は、「ほころび」はじめちゃうんだ。
要は、相手ボールホルダー(次のパスレシーバー)に対するマーキングやチェックが「甘く」なりはじめた(十分に間合いを詰め切れていない!)だけじゃなく、ボールがないところでの相手の動きも、しっかりと抑えられなくなっていったんだよ。
そして、ある程度フリーで、決定的スペースへ走り抜けたり、ボールを持つ仲間を、後方から、抜群の勢いでサポートする人数も、どんどん増えていく。
ヴァンフォーレ選手たちは、もう、必死に駆け上がっていくんだ。
それも、ワイドに広く、何人も。3人目や4人目だけじゃなく、チャンスを見計らった5人目や6人目まで、ガンガン飛び出していっちゃう。
でも、ここが重要なポイントなんだけれど、それでもヴァンフォーレは、次の守備でも、しっかりと人数が戻っているんだよ。
もちろん、前半や、後半の半ばまでのように、9人がもどり、相互のポジショニングバランスをしっかりとマネージしながら強固な守備ブロックを形成す
る・・ってなところまで徹底できているわけじゃなかったけれど、それでも、あれだけ攻撃に人数を掛けている割りには、次の守備で「も」、ある程度は人数を
揃えちゃうんだ。
要は、彼らの運動量が大きくふくれ上がった・・っちゅうことなんだろうね。
だから、レッズのカウンターも、ままならない。
とにかく、ロスタイムも含む最後の時間帯は、意志パワーのぶつかり合いということになった。レッズも攻め上がってチャンスを作りだしたけれど、ヴァンフォーレの勢いは、レッズのそれに輪を掛けていた。
セカンドボールの多くはヴァンフォーレに奪われたんじゃないだろうか。そう、同点ゴールシーンも含めてネ。
あの同点ゴールシーンだけれど、結局キーマンは、パトリックということになった。彼のアタマ。そして、その周りのヴァンフォーレ選手たちも、ことごとくフリーになっていた。
あのような危急シーンでは、ボールを見てしまったら足が止まっちゃうよね。だから、ボールと周囲の状況を、同時に、そして効果的に把握しなければいけない。
ボールは、もちろん見ていなければならないけれど、同時に、周りのフリーな相手へも寄せていく。いや、自然と、身体が動き、相手へ寄っていく・・!?
そう、しっかりと状況が「見えて」いれば、自然と、必要なところへ身体が動いていくものなんだよ。だからこそ、同時に、二つや三つの「オブジェクト」まで意識できるようになるためにも、イメージトレーニングを繰り返さなければいけないんだよ。
レッズ選手たちは、同点シーンのビデオ映像を、そこで大事になってくる「複数のオブジェクト」が「同時に」意識できるようになるまで、しっかりと見直さなければいけません。
イメージトレーニングを積めば、危急状況でも、慌てずに、大事な「複数のオブジェクト」を意識できる(イメージできる)ようになるはずです。
思考停止状態になりかけている。ということで、今日は、こんなところです。
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最後に「告知」です。
実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。
でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。
そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。
だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。
でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。
ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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