湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2013年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第31節(2013年11月10日、日曜日)
- 立ち上がりの失点で「解放」され、「自分たちのサッカー」で実力の差を魅せつけたけれど・・(ベガルタvsレッズ、 3-3)
- レビュー
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- 最後の時間帯・・特に佐々木勇人が交替出場してからの残り20分・・
そこでベガルタ選手たちがブチかました、まさに「意志の爆発」ってな表現がピタリと当てはまる強烈なハードワークは、素晴らしいの一言だった。
そのダイナミズムを体感したら、この引き分けは、フェアな結果だったと言わざるを得なくなる。
ベガルタ選手たちは、1点ビハインドを全力で追いかけた。そして、最後の最後で追いついた。
そんなドラマを観ながら、ベガルタ選手たちの「意志」は、頂点を突き抜けていたと感じた。
とにかく、守備に入ったときに彼らが魅せつづけたチェイス&チェック、集中(協力)プレスの「勢い」は、尋常ではなかったんだよ。
それに対してレッズ。
最後の時間帯には、「守り切ろう」という選手交代に「奔って」しまった。
もちろん、結果を受けて、その選手交代が間違っていた・・なんてことを言おうとしているわけじゃない。でも・・
そう、あんな展開になったら、交替出場した選手は、ベガルタの「前への勢い」を、それを上回る「意志エネルギー」をブチかますことで、効果的に抑制できなきゃダメなんだよ。
バランスを取るためのポジションに入ったりする前に、とにかく、まず率先してチェイス&チェックを仕掛けてかなければならなかった・・
そこでは、味方とのポジショニングバランスや人数バランスなんて関係ない。まず、率先して、強烈な「勢い」で、相手ボールを追いかけ回さなければならなかったんだ。
そうすれば、周りの味方も、そんな「攻撃的なディフェンスアクション」に合わせるように、しっかりとバランスを取るような(カバーリングも含めた!)ポジションに就くでしょ。
また、その交代選手は、相手ボールホルダーのチェックに入ったら、相手との間合いを取るような「受け」の姿勢じゃなく、積極的に「仕掛けて」いかなければならないんだ。
もちろん「行き過ぎ」たら、かわされて、置き去りにされちゃうけれど、でも「限界」まで、全力のパワーをブチかますように「寄せて」いくんだよ。
そんな、相手をビビらせるような攻撃的な「意志の爆発アクション」が・・ない。
だから、ベガルタの中盤は、余裕をもってサイドへ展開できた。そして「そこ」から決定的チャンスを作り出した。
そして結局、そんな展開からのこぼれ球をブチ込まれてしまった。
あの同点シーンでは、全員がゴール前に戻ってしまったことで後方のバイタルゾーンを(ミドルシュートをブチ込んだ石川直樹を)ケアーする選手は一人もいなかった。
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とはいっても・・
全体的なゲーム展開だけれど、ホームのベガルタが、強烈な意志をもって積極的に攻め上がってきたからこそ、ガチンコの仕掛け合いになった。
そして、だからこそ、レッズの実力が存分に発揮された。
ゲームの途中までは、誰が見ても、内容でも結果でも、レッズの順当勝ち・・という展開だったんだよ。でも・・
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立ち上がりのレッズの失点だけれど・・
そのベガルタの先制ゴールを見ながら、本当にレッズは、ツキにも恵まれている・・と思っていた。これ、ホント・・
何せ、他チームのデイゲームの結果から、リーグのトップが見えていたわけだから・・
それだけじゃなく、リーグの残り試合(目標を失いかけている相手とのゲームばかり!?)のことも考えれば、「それ以上のこと」も視野に入ってきていたかもしれない・・
そう、私は、様々な意味を内包する「心理テンション」が重くのしかかり始めていたに違いない・・と思っていたんだ。
でも、あの失点で、そんな「取らぬ狸の皮算用・・」的なテンションから完全に解放された。
そして、まさに、フッ切れた心理で、「自分たちのサッカー」を展開できるようになった。
前半の逆転劇は、両チームのサッカー内容からすれば、まさに理の当然の流れだったと思う。それだけじゃなく、レッズは、3点目までもイメージした攻撃的なサッカーをつづけた。
そう、彼らは、これまでの「失敗」から、しっかりと学習しているんだよ。
そして、逆転してもなお、解放されたマインドで展開する「自分たちのサッカー」を高みで維持し、ベガルタの二倍近いシュートをブチかましていたんだ。でも・・
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私は、後半も、同じような立派なサッカーで、ベガルタとの実力の差を存分に魅せつけてくれるはずだとばかり思っていた。
たしかに、後半の立ち上がり2分には、リャン・ヨンギのフリーキックから、赤嶺真吾の素晴らしいヘディングで同点にされてしまったけれど、その後もレッズは、立派なサッカーで実力通りに逆転リードを奪ったからね。でも・・
そう、後半も、時間が進むにしたがって、冒頭のような後ろ向きのゲーム展開になっていってしまった・・というわけだ。フ〜〜ッ・・
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まあ、タイトルをつかみ取るのは、とても難しいイバラの道だ・・ということだね。
この試合も含め、そんな「産みの苦しみ」を体感して初めて(もちろんタイトルを取れればのハナシだけれど・・)、真の「勝者メンタリティー」が何であるかを体感できる。
そう、脅威と機会は表裏一体・・なんだよ。
そして最後は・・意志(そして勇気)さえあれば、おのずと道が見えてくる・・
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最後に「告知」です。
実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。
でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。
そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。
だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。
でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。
ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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