湯浅健二の「J」ワンポイント


2013年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第3節(2013年3月16日、土曜日)

 

レッズは、正しい発展ベクトル上をひた走っている・・(トリニータvsレッズ、 2-2)

 

レビュー
 
 いや、良かったですよ、テレビ中継のカメラワーク。「寄り」と「引き」の状況判断が、かなり良かったと思います。どうもありがとうございました。

 もしこのゲームも、例によっての「寄り過ぎカメラワーク」だったらテレビ(ビデオ)観戦をやめようと思っていたんです。だから、それは、とても嬉しい驚きだったね。

 まあ、とはいっても、もう少しだけ「引いて」くれれば、勝負のロングパスが出る直前での、フォワードと相手ディフェンダーの、スペースをめぐるせめぎ合いを、もうちょっと正確に把握し、楽しめただろうけれど・・。

 特に、興梠慎三の、ボールがないところでの動きの量と質は、特筆に魅力的だからね。

 とにかく、この試合でのスカパー中継は、UEFAチャンピオンズリーグとも比較できるレベルのカメラワークではありました。

 あっと・・、そういえば、全般的にはとても高質なカメラークのUEFAチャンピオンズリーグ中継だけれど、どうも、イングランドとドイツでのゲームだけは、中途半端な(寄り過ぎの!)カメラワークが多いと感じていたんだっけ。

 イングランドは、昔から「寄り過ぎ」だったから驚きゃしないけれど、ドイツは違ったはずなのに・・。ということで、ちょっと、イングランドとドイツでのテレビ中継のカメラワークに違和感を覚えている筆者なのでした〜〜っ。

 あっ・・脱線。

 ということで、トリニータ対レッズ。

 立ち上がりにトリニータがブチかました「二発」にゃ驚かされたけれど、その後は、徐々にレッズがペースを盛りかえしていったね。

 ミハイロ・ペトロヴィッチの優れたコーチング(チーム戦術の構築と、心理マネージメントも含めた浸透作業)によって、持てる「個のチカラ」を、組織的に 「も」しっかりと表現できるようになったレッズだから、時間の経過とともに盛り返していったゲーム展開には驚きはないけれど、だからこそ逆に、トリニータ が魅せた、強烈な意志に支えられた頑張りサッカーの方が、目立っていた。

 サスガに田坂和昭。選手たちの意識と意志を、とても効果的に「引き上げている」と感じる。彼もまた、よいコーチ(心理マネージャー)だ。

 ところでレッズの原口元気。

 カメラワークがよかったから、彼のボールがないところでの動きの量と質がアップしていること「も」明確に視認できた。ちょっとハッピー・・

 もちろん、攻守にわたる(ボールがないところでの)ハードワークについては、まだまだ改善の余地はあるけれど、それでも、彼が、確固たる自覚をもちはじめたことは認識できる。

 まあ、守備はまだまだだし、攻撃でのボールがないところでの動きにしても、そのほとんどが『自分がパスを受けるため』というイメージに占拠され「過ぎて」いるとは感じるけれどネ・・。

 もっと、興梠慎三のように、周りのチームメイトに、自分が作りだしたスペースを「使わせる」というイメージ「も」より強くもってもいいんじゃネ〜か。良くなっているんだから・・サ、改善スピードをもっと高める努力も大事なんじゃネ〜か・・

 サッカーは、互いに使い、使われる、組織的なボールゲームなんだよ。その発想があってはじめて、自分の「天賦の才」を、より高い実効レベルで表現できるんだ。

 たしかに、原口元気のドリブル勝負は、とても魅力的だし、実効レベルも高い(とても危険)だけれど、それでも彼は、「あの」ディエゴ・マラドーナじゃないんだから・・

 ディエゴのプレーについては、ネット動画に、いやっというほどストックされているから、それを観つづけるのも良いイメージトレーニングになるだろうね。あっと・・、ディエゴは、世紀の天才だからね、そのプレーは容易には真似できない。

 だから、自分にふさわしい選手、例えば香川真司とかウェイン・ルーニー、ディ・マリアとかペドロ(ロドリゲス)とか、そんなタイプのプレーを、動画で観 つづけるんだよ。そう、効果的なイメージトレーニング。エッ・・!? イメージトレーニングの人選が悪いって!? スミマセンね。

 とにかく、正しいイメージトレーニングを積み重ねることで、徐々に、考えなくても身体が動くようになるはず。ホントだよ・・。この、「視覚から実際の動作への相互作用(影響)プロセス」については、学術的にも証明されているからね。

 ということで、唐突に、レッズ同点ゴールの分析に入っちゃう筆者なのです。

 それは、阿部勇樹の、阿部勇樹による、阿部勇樹のためのゴールではありました。エッ・・あっ・・スミマセン・・

 とにかく、阿部勇樹の素晴らしいインターセプトから、二つのステーション(柏木陽介と宇賀神友弥)を経由して成就した、グラウンド全体を使った「大きなワンツー」ということになった。

 最後の、宇賀神友弥からの「折り返しグラウンダークロス」だけれど、宇賀神は、阿部勇樹まで「見えて」いたんだろうか?

 まあ、原口元気は確実に見えていたよね。でも、その原口元気の背後に出来たスペースへ走り込む(後方で動きをタメていた!?)阿部勇樹まで見えていたんだろうか・・??

 たぶん、原口元気をイメージしたグラウンダークロスだったとは思うけれど、そのことについて、宇賀神友弥に聞いてみたいね。

 ということで、つづいて、レッズが完璧にゲームを牛耳った後半。

 まあ、コメントの必要はないゲーム展開ではありました。突っ込んで書きはじめたら、そのほとんどが「タラレバ」になっちゃうからネ・・あははっ・・

 最後に、ちょっと調子を崩しているように感じられることで心配だったマルシオ・リシャルデス。この試合では、残り10分というタイミングで投入された。

 心配していたけれど、このゲームでは、良い感覚でプレーしていたという印象でした。

 とにかく彼は、もっと、もっと、そう、以前のように、自信をもってフッ切れた勝負をしていけば、まだまだ、向かうところ敵なし・・なんじゃないのか。

 今シーズンのここまでは、どうも、失敗することを怖がっている消極プレーが目立っていた・・なんて感じられていたからね。とにかく、彼にも復活してもらわなきゃいけません。

 マルシオ自身だって、いまのチームが、どんどん良くなっていることを肌で感じているはず。そんなときに、その「勝ち馬」に乗らない手はない。ガンバレ〜、マルシオ〜〜・・

 ということで、この試合でも、レッズが正しい発展ベクトル上にあることを体感できてハッピーだった筆者でした。


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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