湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2013年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第6節(2013年4月14日、日曜日)
- レッズの完勝だった・・ということで、チョウ・キジェとミハイロ・ペトロヴィッチとの対話・・(レッズvsベルマーレ、 2-0)
- レビュー
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やはりレッズは、ボールを動かすチカラがある・・とにかくベルマーレの選手たちは、この試合を通して、またまた、J1との「差」を体感したはず・・その体
感こそが、次のステップの原動力になる・・それがあるからこそ努力をつづけられるし、発展できる・・そのように、自ら工夫し、向上心をもってチャレンジを
つづけることこそが我々のミッションだと思っている・・
いいネ〜、チョウ・キジェ。
試合後の記者会見で、「行間」も含め、ベルマーレ監督のチョウ・キジェが、そんなニュアンスの内容をコメントしていたっけ。
会見のコンテンツが、そんな、創造性あふれる方向へ発展していくものだから、我慢できなくなった。だから、聞いた。
・・たしかにベルマーレは、まだ良い結果には恵まれていない・・ただ、サッカーの方向性は、まさに大正解だと思う・・このままを維持すれば、かならず結果が出てくるはずだ・・
・・とはいっても、おっしゃるように、J1との差は、厳然と「そこ」にある・・だから、攻守のバランスとか、互いのポジショニングや人数のバランスと呼ばれるモノを、少し「安定方向」へ振っていかなければならないし、チョウさんも、それにトライしていると思う・・
・・ただ、安定方向へ「イメージ調整」しようとした次の瞬間には、チョウさんもご存じのように、選手たちは、想定した以上に、守りのマインドを強めてしまうものだ・・
・・とても難しい心理マネージメントなのだが、そこの部分で、チョウさんは、選手たちに、どんなアプローチ(工夫)をしているのだろうか?・・質問が長くてスミマセン(場内笑)・・
そんな私の質問に対し、チョウ・キジェは、笑みを浮かべながら、例によっての誠実さで、こんな(行間も含めた!)ニュアンスの内容をコメントしてくれた。曰く・・
・・そうです・・だからこそ、成功体感を積み重ねるためにチャレンジをつづけていくことこそが重要な意味をもっていると思うのですよ・・
・・たしかに「J2」では、奪ったボールを、ある程度は前へもっていけた・・ただ「J1」では、それが、ままならない・・だから、その事実を体感するこ
とが大事なんです・・その体感こそが、次の努力と発展の大いなるモティベーションになると思うのですよ・・そう、我々は、リーグ戦を、ものすごく効果的な
「学習機会」だと考えているのです・・
・・とにかく我々は、成功体感を積み重ねていくしかありません・・それが、いまの我々が抱えている課題の本質だと思っています・・チャレンジのないとこ
ろに成功もないし、発展もありませんからね・・(この最後のコメントは完全な脚色だけれど、チョウさんは、常々、この表現を好んでいるから付け加えさせて
もらった・・いいでしょ、チョウさん?)・・
そんな、チョウ・キジェが率いるベルマーレについては、レッズのミハイロ・ペトロヴィッチも、とても高く評価していた。レッズが志向する方向性と共通している・・ってね。フムフム・・
さて、ということでゲームだけれど、もっとも興味深かったグラウンド上の現象は、何といっても、前半と後半で、ゲームの流れがガラリと変わっちゃったことでしょ。
前半は、前述したように、ベルマーレが、守備ブロックを安定させながら、チャンスを見計らって攻め上がっていくという、ちょっと微妙なニュアンスの「バランス」を志向していた。
まあ、要は、ベルマーレの守備ブロックが、とても安定していたということです。守備に入ったら、ファイブバックの前に、中盤カルテットが(とても忠実な汗かきハードワークをつづける!)ミッドフィールドの守備ラインを敷くからね。
ということで、具体的な「ゲームの見え方」だけれど、やはりそれは、地力で上回るレッズが、ゲームのイニシアチブを握って攻め上がり、ベルマーレが、その勢いを効果的に(柔軟&忠実に!)受け止めながらチャンスを狙っていたっちゅうことです。
ベルマーレ選手たちの「意志とイメージ」は、とてもハイレベルだから、レッズも、おいそれとは、ベルマーレ守備ラインの背後に広がる決定的スペースを突いていけない。
それでも、たまに繰り出す柏木陽介の決定的(ロング&スルー)パスは、見応え満点だったね。とても効果的だった。
実際、前半31分には、そのロング(浮き球)スルーパスから、興梠慎三が、「これぞ本物のスーパーゴールッ!!」っちゅう一発を決めたしね。
そう、先制ゴールのことだよ。ホントに素晴らしかった。
ミハイロ・ペトロヴィッチも、「コウロキには、怒っている・・何せ、あんな難しいシュートを決めるのに、後半には、ゴール前5メートルのフリーシュートを外しちゃうんだからね・・」なんて、満面の笑みで語っていたっけ。あははっ・・
あっと・・ゲームの流れだった。
その興梠慎三のスーパー先制ゴールが決まった後も、ゲーム展開が大きく逆流することはなく、両チームともに、明確なチャンスを作り出すようなシーンを演出できなかった。でも後半は・・
そう、ベルマーレが、(チームの共有イメージとして!)、より積極的に攻め上がっていったんだよ。
その攻撃は、決して低次元なモノじゃなかった。
両サイドの、高山薫と古林将太も、例によって積極的に押し上げてチャンスの芽を演出したし、縦横無尽にポジションチェンジを繰り返す前線トリオ(武富孝
介、キリノ、菊池大介)のコンビネーションに、守備的ハーフの2人(永木亮太とハン・グギョン)も、交替で、効果的に絡んでいく。
それらの「部品」が上手く組み合わされて相乗効果を発揮したときは、とても、とても危険なニオイを醸(かも)し出していた。
でも、やっぱり、個のチカラじゃ、レッズの方が上なんだよ。
センターバックトリオ(那須大亮、槙野智章、森脇良太)とダブルボランチ(鈴木啓太と阿部勇樹)、両サイドバック(宇賀神友弥と梅崎司)で形成する守備ブロックは、強力そのもの。
だから、局面での競り合いシーンの多くで、レッズが勝利を収めていたんだ。
もちろん「その守備ブロック」に、柏木陽介と原口元気の攻撃的ハーフも、積極的に絡んでいくんだよ。そりゃ、強いはずだ。
特にスリーバック。ダブルボランチを中心にした中盤守備が、とても上手く、ベルマーレ攻撃の勢いを「抑制」していることで、スリーバックの3人は、まさに「最終ラインの壁」ってな感じの堅牢さを魅せつづけていたっけね。
そして、そんな強力ディフェンスブロックを基盤に、チャンスとなったら(高い位置でボールを奪い返せたら!)、まさに蜂の一刺しという必殺カウンターをブチかましていくんだよ。
そのコントローラーが、柏木陽介であり、後から交替出場してきたマルシオ・リシャルデスだった。
ということで、前半には、まったくといっていいほど流れのなかからチャンスを作り出せなかったレッズだったけれど、ベルマーレの守備ブロックが少し「開き気味になった」後半は、俄然、勢いを増していったんだ。
そこで、ミハイロに聞いた。
・・そのように(前述のように!)、前半と後半では、レッズのチャンスメイクの量と質(内容)に大きな違いが出てきたと思う・・これからも、守備ブロッ
クを固める相手と戦わなければならないわけだから、特にレッズにとって、先制ゴールを奪ってリードすることは喫緊のテーマだと思うのだが・・
そんな質問が、ミハイロ・ペトロヴィッチの「ボタン」を押してしまったようで・・
・・そう、守備的な相手に対抗して、流れのなかからチャンスを作りだすのは、大変な作業なんだよ・・特に前半は、多くのケースで、相手守備ブロックは堅牢を維持するからな・・そんな相手に、こちらから仕掛けていって崩し切るのは難しいんだ・・
・・とにかく(多くのケースで!)前半の相手守備ブロックはしっかりしているものなんだ・・でも、ディフェンスに集中しつづけることには体力を使う・・
だから後半は、相手ディフェンスが「開き気味」になってくるものなんだ・・そこがチャンスっちゅうわけだけれど、それを逃さず、効果的に攻め切ることが求
められる・・
・・もちろん先制ゴールが大事であることは言うまでもない・・そうなったら、相手だって前へ出ていかざるを得ないからな・・
・・余談だが、レッズの場合、チャンスは作りだすけれど、それを決め切れないシーンが多発していると感じるんだ・・先制ゴールは奪ったけれど、追加ゴー
ルを取れずに同点にされちゃうケースもあったよな・・チャンスをしっかりとゴールに結びつける・・それが、もっとも重要な課題なんだよ・・もちろん大量
ゴールを奪えって言っているんじゃない・・とにかく、我々は、ワンチャンスをしっかりとゴールに結びつけることに集中しなけりゃいけないんだ・・
・・アレッ・・ちょっと、喋りすぎたかな!?(場内笑)・・
ということで、話し好きのミハイロ・ペトロヴィッチだったのでした〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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