湯浅健二の「J」ワンポイント


2014年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第1節(2014年3月1日、土曜日)

 

城福浩の言葉・・流れの中のサッカーと止まったときのサッカー・・(ヴァンフォーレvsアントラーズ、 0-4)

 

レビュー
 
「サッカーには、流れのなかでのプレーと、止まったところからリスタートするプレーがある・・今日のゲームでは、流れのなかでは、ある程度のサッカーができたと思っているが、止まったところからのプレーでは、言い訳できない大失態を演じてしまった・・」

いいね〜、城福浩。さすがに、コメントにも味がある。

そう、この試合でアントラーズがブチ込んだ四つのゴールは、すべてセットプレーからだったんだよ。そりゃ、ヴァンフォーレ守備に、何か「構造的な欠陥」があると思われても仕方ない。

もちろん私は、この失態は、集中力の欠如が、その原因の大きな部分を占めていると思っているから、まったく心配していないけれどネ。

それにしても、先制ゴールはショッキングだったね。何せ、ヴァンフォーレが完璧にゲームを支配していた前半11分に、まさに「唐突」に、アントラーズのダヴィにブチ込まれたわけだから・・。

とはいっても、そこはアントラーズのことだから、「さもありなん・・」と納得はしていた。

だからこそ、ヴァンフォーレ守備には猛省を促したいね。ただ、とはいっても、皆さんご存じのとおり、セットプレーでの失点では、戦術や技術、はたまた意志や集中力といった「サッカー的」なバックボーンとはかけかけ離れた「神様の所業」もあるから・・ね。

まあ、仕方ない。でも4失点は「やられ過ぎ」でしょ、城福さん・・

まあ・・ネ。とはいってもサ、流れのなかでヴァンフォーレが魅せたサッカーが、本当に素晴らしかったことだけは確かな事実だよ。

特に、立ち上がりからヴァンフォーレがブチかましつづけた「ダイナミック・サッカー」にはシャッポを脱がされた。

本当に、素晴らしく力強く、それでいて繊細な「読み」をベースにした組織ディフェンスだった。だからこそ、完璧にゲームを支配できた。

そこでは、一つの局面(その時点でのボールホルダーとパスレシーバー)に対して、常に「複数の守備イメージ」が、見事なハーモニーを魅せつづけたんだ。

そう、そこには、彼らの強烈な意志が、力強く放散されつづけていたんだよ。

「我々は、最高の気持ちを入れてゲームに臨んだ・・我々は(遠くから応援に駆けつけてくれたファンに対して)闘う姿勢を感じてもらわなければならないという決意でグラウンドに立った・・それは、甲府というコミュニティーにとっての(!?)励みになるはずだ・・」

城福浩さんの弁だけれど、立ち上がりに魅せたヴァンフォーレのサッカーからは、ホントに、彼らの強烈な闘う意志(スピリチュアルエネルギー)が放散されていた。

私は、そんな「意志のサッカー」から、城福浩の、プロコーチとしての「本物のストロング・ハンド」を感じていたんだよ。

そんなだから、「あの」アントラーズも、タジタジで引かざるを(リトリートせざるを)得なくなったというわけだ。

でも・・ネ、逆に、だからこそ、アントラーズの守備の強さが目立ちに目立ったこと「も」確かな事実だった。

素晴らしくダイナミックなボール奪取を繰り返したヴァンフォーレだったけれど、そのボール奪取ポイントから仕掛けていく攻撃が、どうしても、アントラーズ守備に、余裕をもって「はね返されて」しまうんだよ。

要は、ヴァンフォーレ攻撃が、スペースを攻略できず、そのことで、どうしてもボールの動きが停滞気味になってしまったということなんだ。

そう、それほど、アントラーズの「老練なディフェンスの強さ」が、際立っていたのですよ。

積極的にボールを奪いにいったヴァンフォーレ守備とは違い、すこし「受け」気味の姿勢で対応したアントラーズ守備陣だったけれど、強い、強い。

そこでは、チェイス&チェックから、次のボール奪取ポイントに対するイメージが連鎖する、ハイレベルな組織ディフェンスが機能しつづけていた。

そんなだから、いくらヴァンフォーレ選手が、ウラのスペースへ走り込んでも、完璧にマークされちゃう。また、チャレンジパスを出しても、完璧なタイミングでインターセプトされちゃう。

さすがにアントラーズ守備だな〜・・。私は、そんな感嘆の声を上げていた。

そして、徐々にアントラーズが押し返し、ゲームが動的に均衡していく。

もちろん、そんな風にゲームフローが「逆流」しはじめたのには、アントラーズの、唐突な先制ゴールというバックボーンもあったよね。

そしてアントラーズが底力を魅せはじめたというわけだ。

しっかりと(素早く、広く、そして創造的に!)人とボールが動くから、やはり彼らの方が、背後の決定的スペースを攻略するための攻撃の「質」という視点じゃ、一日の長があった。

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ちょっとゲームの流れを追いすぎたけれど、最後に、こんなポイントで締めようかな。

それは、アントラーズの世代交代というテーマ。

この試合では、遠藤康を除き(彼は25歳)、残りの選手は皆、二十歳前後か、三十歳前後なんですよ。

要は、中間世代がほとんどいないということだけれど、にもかかわらず、若い選手、例えば攻撃的ハーフの土居聖真(21歳)や豊川雄太(19歳)、また、こ の試合では、抜群のオーバーラップを魅せつづけた右サイドバックの伊東幸敏(20歳)など、本当に素晴らしい「積極プレー」を展開しつづけたんだよ。

そう、ベテランに遠慮することなく・・ね。

だから、そのことについて、トニーニョ・セレーゾ監督に聞いた。

・・一つのチームで、20代から30代の選手をミックスするのは当たり前だよな・・もちろん選手タイプは色々だ・・動き回る選手とか、アタマを使いながらゲームメイクする選手とかね・・

・・もちろん今のアントラーズは、若いだけのチームじゃなく、ベテランもうまく融合していると思うよ・・基本的なパフォーマンスはもちろんのこと、ゲームのペースを調整したり、若手にアドヴァイスしたりと、ベテランの経験は、十分に活きていると思う・・

・・もちろんグラウンドの上だけじゃなく、日常生活でも、ベテランのアドヴァイスには味があるんだよ・・また例えば、シーズンのなかでチームが調子を落としているときにも、彼らのアドヴァイスが重要な役割を果たすことが多いんだ・・

・・経験という蓄積から出てくる有意義な教えということだな・・とにかく、ベテランの味は、シーズンを乗りこえるために、なくてはならないモノなんだよ・・

フムフム・・。

今シーズンは、そんな視点でもアントラーズを追いかけることにしよう。

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 最後に「告知」です。

 実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。

 でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。

 そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。

 だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。

 でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。

 ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

 とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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