湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2014年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第11節(2014年5月3日、土曜日)
- マッシモ監督はよい仕事をしている・・またレッズにも、勝者メンタリティーが備わってきている・・(レッズvsFC東京、 1-0)
- レビュー
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- 「このゲームは、たとえ引き分けに終わったとしても、とてもコメントが難しいゲームだったと思う・・」
監督会見の冒頭で、FC東京のマッシモさんが、そんなニュアンスの内容をコメントしていた。まさに、我が意を得たり・・だったね。
それにしても、FC東京は、ものすごく「質実剛健」な進化を魅せつづけている。
今シーズン、彼らをスタジアム観戦したのは、第4節の「FC東京vsフロンターレ」だけだったけれど、そのときから比べれば、たしかに長足の進歩だ。
ということで、内容的には、まさに「動的な均衡マッチ」という形容句がふさわしい好ゲームになった。コメントが難しいのも道理じゃないか。
FC東京は、ホントに、素晴らしく「バランス」したサッカーを展開したと思う。もしかしたら、決定的なチャンスの量と質という視点じゃ、FC東京の方が勝っていたかもしれない。それほど、実効レベルが高いサッカーだった。
とにかく、ディフェンスが素晴らしく「質実剛健」なんだよ。
もちろん、チェイス&チェックから、インターセプトに至るまでの「連動性」のことだけれど、それを観ながら、本当によくトレーニングされたチームだ・・なんて感嘆していた。
前述の「バランス」だけれど、要は、攻め上がっていく人数やポジショニングのバランスがよかったということだよね。また、攻守の切り替えも効果的だったから、次のディフェンスでの組織が乱れることがなかった。
また、マッシモさんは、ある方の質問に対して、こんな興味深いコトも言っていたね。
「いま私が言った、メンタルな部分という表現の意味ですか!? まあ、ここで使ったメンタルの意味は、守備での(ボールがないところでの!)マーキングの内容ということですかね・・」
えっ・・!?
そのときちょっとビックリし、そしてすぐに、「サスガにセリエの強者だ〜・・」なんて思っていた。マッシモ・フィッカデンティ。たしかに優れたプロコーチだ。
メンタル・・。
それこそが意志(集中力)であり、守備においては、ボールがないところでのプレーの量と質に、如実に現れてくる。彼は、メンタルの強さと、意志のプレーを「≒」って考えているんだよ。
いいね・・。
今日は、講談社の矢野透さんと観戦していたんだけれど、FC東京を観る機会が多い矢野透さんが、マッシモさんについて、こんな興味深いコトを言っていた。とても参考になった。曰く・・
・・湯浅さん・・たしかに第4節のフロンターレ戦はひどかったけれど、その後の東京は、目に見えて発展していますよ・・マッシモは、とても優秀なプロコーチだと思いますね・・
・・湯浅さんが言ったバランス感覚も、その発展コンテンツに含まれているけれど、とにかく、マッシモ監督は、若手をどんどん起用するんですよ・・それも、これまで東京の中心選手を外してね・・
・・この試合でも、武藤嘉紀を使ったし、これまでも、高橋秀人を外して三田啓貴を入れたり、「あの」渡辺千真を外したこともありましたよ・・
・・また、試合中でも、調子が悪いと思ったら、前半でも「有名選手」を交替させちゃったりしますからね・・そして、そんな選手起用や交替が、例外なく効果を発揮しちゃうんですよ・・
・・要は、マッシモ監督は、とても鋭い眼力の持ち主ってことじゃないですかね・・
フムフム・・。
マッシモさんは、まさに、実力を正確に評価できる「目」をもっているっちゅうことなんだろうね。それに、東京のプレー内容を観ていれば、彼らが、とても強くモティベートされてプレーしていることを感じる。
たしかに、内容は素晴らしいのに、一発のセットプレーに沈んでしまったりと、「まだ」結果には恵まれていない。
マッシモさんも、そのことを嘆いてはいたけれど、そんなネガティブな事象を、逆に、次の進歩のモティベーションにしてしまうんだよ。曰く・・
・・サッカー内容は、とてもいいし、チャンスも作りだしているけれど、そんな決定機を決め切れない・・それが、このような負けにつながっている・・でもそれは(その悔しい思いは!?)、将来へ向けての糧になる・・とにかく、これから、まだまだやるべきことがある・・
ということで、FC東京の今後に「も」注目していこうと思っている筆者なのでした〜。
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さて、レッズ。
フロンターレ戦、マリノス戦、そしてこのFC東京戦。
以前だったら、うまく結果に結びつけられないことの方が多かった「ゲーム展開のタイプ」ではあったけれど、今シーズンの彼らは、立派に勝利(勝ち点3)につなげている。
そう、粘り勝ち。
たしかに、前への推進パワーのジェネレーターである槙野智章を欠いていることで、レッズの仕掛けプロセスには、我々が期待するほどの勢いが「まだ」感じられない。
それでも、落ち着いた展開からの大きなサイドチェンジ、サイドからの仕掛け&クロス、長い距離の「ラストスルーパス」を素早い動きでチャンスにつなげてし
まう興梠慎三や李忠成の「抜け出しプレー」、はたまた、言わずと知れた原口元気の突破ドリブル&シュートなどなど、たまには、彼らの持ち味の勝負プレーに
舌鼓を打てるシーンもあるよね。
でも、「まだまだ・・」という印象の方が強いんだ。
その要因の一つは、スリーバックの「サイド選手」、サイド(ウイング)バック、そしてサイドハーフという、「タテのサイドゾーントリオ」による、「タテの
ポジションチェンジ」などを活用した、ダイナミックなサイドからの崩しプロセスが、うまく機能しなくなっていることでしょ。
だから、前述したように、槙野智章の欠場が目立つんだよ。
また、左サイドでの、タテのトリオによる「前への推進力」が大幅に減退したことで、逆の右サイドでの「トリオの機能性パワー」もダウンしがちになっていると「も」感じる。
全体的なパス展開はいいし、そこから繰り出す「大きなサイドチェンジ」も効果的。でも、どうしても、最終勝負プロセスでの「推進力」が足りないと感じるんだよ。
無い物ねだり・・じゃないよ。
もっと、勇気をもって、勝負ドリブルという、リスキーなプレーにもチャレンジしていかなければいけないと思うんだよ。原口元気だけじゃなく・・ネ。
そんな「仕掛けの変化」をブチかましていくからこそ、勝負の「組織コンビネーション」も、格段に高い効果を発揮するっちゅうわけだ。
でも、今は、ドリブル勝負が消極的なことで(安全パスばかりが目立つ!?)、勝負のコンビネーションの「勢い」も減退気味になってしまっていると感じるんだよ。
でも、関根貴大という「突貫小僧」が出てきたら・・。
そう、誰もが、レッズの仕掛けダイナミズムが、何倍にも増幅するって感じるんじゃないだろうか。
このゲームでもそうだったよね。
彼にパスがわたり、その前に、相手ディフェンダーが一人しかいない時などは、誰もが、「行け〜〜っ!!」って、声をからして叫んでいたでしょ。もちろん私も、電波メディア・パーソナリティー、河合貴子さんの横で、大声で怒鳴っていたっけ。
この突貫小僧は、レッズの希望の星だよ。
とにかく自信と勇気に満ちあふれているし、「サッカーは意志のボールゲームだ・・」という事実を体現してくれる。そして観ている我々に、大きな希望と期待を抱かせてくれるんだよ。
やっぱり、いいね・・。若く、ガムシャラに前へ進もうとする選手を観ることは。
あっと、レッズ。
この試合での、もう一つのポイントが、1点をリードしてからのサッカー内容。
たしかに相手に攻め込まれはしていたけれど、決して守備ブロックが、(以前のように!?)アタフタすることはなかった。
要は、背後のスペースをフリーな相手に使われたり、決定的な場面でフリーなボールホルダーを作りだされたりすることが、ほとんどなかった・・ということなんだよ。
守備に入った全員が、常に積極的に、『自ら仕事を探しつづけている・・』し、決して「譲り合ったり」することなく、「まずオレが・・」という積極マインドでプレーしているということだね。
だから、安心して観ていられたし、頼もしくもあった。
ミハイロ・ペトロヴィッチ監督とコーチングスタッフは、とてもよい仕事をしていると思う。
このゲームにも、とても魅力的な「学習機会」がテンコ盛りだった。
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最後に「告知」です。
実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。
でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。
そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。
だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。
でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。
ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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